結納なしの場合の「支度金」って必要?相場&渡し方のマナーは?
「支度金」とは、結納をしない場合に、新郎側が用意して、新婦側に渡す結婚準備のためのお金のことです。親から支度金の話が出たときにどう対応するのがいいか、ふたりが事前に知っておくべきことや、渡し方やお礼のマナーを紹介します。相手や親と考えを擦り合わせるときの参考にしてください。
支度金とは?
新郎の家から新婦の家に渡す結婚準備金のこと
結婚の支度金は、「新郎の家が、新婦の家に渡す、結婚のための準備金(※)」です。支度金については、結納金のことを先に知っておくと考えやすくなります。もともと結納金は、昔は嫁入りによって、名字が変わるだけでなく、戸籍も夫の家に入る形だったため、「お嬢さまの育成のお礼」として新婦の親に渡す意味合いがあったと思われます。
しかし、現代では結婚によってふたりが新しく戸籍を作ることになりますし、そもそも「家に入る」という考え方がそぐわないものになりました。そこで「お礼」という考え方よりは、結婚にはお金がかかって大変でしょうから、という思いやりを込めた「嫁ぐために必要な準備ができるようにお渡しするお金」という意味合いが大きくなっています。
「支度金」も考え方は基本的に同様のもの。結納を行わなかった場合、結納金代わりであったり、思いやりの気持ちの表れとして、新郎の親が新婦側に渡す「結婚の準備に役立ててもらうためのお金」です。
支度金の場合、結納金と違い、決まったルールはありません。この記事では、支度金についての基本的な考え方や結納を元にした渡し方、お礼の仕方を例としてお伝えしますが、各家の考え方に合わせて、アレンジしてかまいません。また、結納を実施していない既婚男女への支度金についての調査結果も合わせて参考にしてください。
※新郎が新婦の名字になる場合は逆に、新婦家から新郎の家に渡します。
結納をしなかった方に聞きました
【親に結納の実施を相談】
親に結納をするかしないか相談したところ、「結納はしないけれど、せめて支度金を渡そう」となりました。支度金100万円を親から預かり、両家顔合わせ食事会の際に、彼女の親に渡しました。(百獣の王さん)
【顔合わせの後に渡すことに】
顔合わせの後、「結納がないなら支度金を渡したい」と自分の親から申し出があり、後日、彼女に100万円を渡しました。(へっぽこさん)
【嫁入り道具のためのお金を用意】
嫁入り道具を購入してもらうために、支度金50万円を渡しました。(MISさん)
【彼親から振り込みで受け取った】
彼の親が彼に「支援金を渡す」と話したそうで、彼の銀行口座を通じて振り込まれた50万円を受け取りました。(ああさん)
【結婚式前日、新婚旅行代として】
結婚式前日、ホテルに前泊している時に、新婚旅行の足しにしてほしいと言われて10万円を頂きました。(くくさん)
支度金は、必ず用意しないといけないもの?
受け取った花嫁は約2割。必ずしも用意しなくてよい
今回、結婚して2年以内の女性で、結納をしなかった方100人にアンケート調査をした結果、「支度金を受け取った」方は2割強という結果でした。
支度金は必ず用意しなければならないものではありません。彼の親が、子どもの結婚をサポートしてあげたい気持ちで出すお金なので、もし、頂ける場合は、ありがたくその気持ちを頂くとよいでしょう。
支度金を用意するかどうかは、基本的に彼の家が判断することですが、両家の意見の調整はふたりの役目です。まずは彼が自分の親の意向を確認し、その後、彼女を通じて、彼女の親に受け取ってもらえそうか、もしくは支度金の気遣いは不要という考えか、確認するとよいでしょう。両家の親の意向に加え、ふたりの意見も反映させながら調整してください。
結納をしなかった方に聞きました
【辞退された】
新婦側が辞退したため。(TKさん他、同意見の男性4名)
【ふたりで「なし」と決めた】
ふたりで話し合って、支度金なしと決め、双方の両親も理解してくれたから。(R.Eさん他、同意見の男性4名)
【支度金の話がなかった】
新郎家から支度金についての話が、最初から出なかった。(らいるいさん他、同意見の女性32名)
【両家で「なし」と決めた】
両家共に、お金を受け取らないという話でまとまったため。(ciさん他、同意見の女性3名)
支度金の相場は?
平均93万円。最も多かったのは100万円
続いて、結納なしで「支度金」を受け取った方110人に、頂いた支度金の金額についてお聞きしました。平均金額は93万円で、最も多かったのは100万円、次いで50万円でした。
結納金の場合、金額は「男性側の給与の手取り3カ月分」に合わせたキリのいい金額が相場と言われます。もし結納金に近い形で支度金を渡したいと考える場合は、結納金の相場に合わせた金額を用意すればよいでしょう。
一方、支度金は結納金よりはカジュアルなものと捉えるなら、あらかじめお返しがいらないように相場の半額にしたり、「結婚式の衣裳代に」「新居の大型家電代に」など、具体的な使い道を表書きに記して、その用途に合わせた金額を包む方法もあります。いずれにしても、支度金の金額は、相場はあくまで参考程度と捉え、経済状態や気持ちに応じて決めればよいでしょう。
結納をしなかった方に聞きました
【200万円】
結婚1カ月前ほどの時、彼の父から彼を通じてもらいました。彼の父から彼の口座に振り込まれたそうです。(リーノさん)
【100万円】
彼の親から事前にお祝い金を渡したいと連絡があり、顔合わせ食事会の後日、直接100万円を頂きました。(ゆうさん)
【50万円】
結婚式の前に、彼の親が「結婚式の費用に充ててほしい」と、「寿」の表書きのご祝儀袋に入ったお金を直接渡してくれました。(ccレモンさん)
【20万円】
家電代として、夫が親から預かっていたお金を渡されました。(O・Mさん)
【10万円】
私たちが新居に移る際に、家電を買い直すことになり、引っ越しの手伝いに来てくれた彼のご家族が負担してくれる形で頂きました。(タマさん)
知っておきたい!支度金の受け渡しマナー
for新郎/支度金はどんな包みで用意する?
支度金を渡す際は、赤白のあわじ結びの水引と、のしがついたご祝儀袋を使います。名前は、家として贈る場合は名字のみ、新郎が贈る場合はフルネームを書きます。
表書きは「寿」としてもよいのですが、「本当は品物を贈りたいけれど、お好みがわからないのでお金で贈ります」という意味で「〇〇料」と書くと、結婚の準備のお金として「このような使い方をしてね」という意図や思いが伝わります。例えば、結納のときにも使われる「御着物料」「御帯料」「御衣裳料」などは、結婚式の衣裳代にも充てやすくなり、おすすめです。また「御家具料」も、結婚式の実施にかかわらず使える名目ですし、新婚生活のスタートをサポートしたい思いが伝わります。いずれにしても、表書きには目的に合わせた言葉を書き、その際は、書いたものが実際にまかなえる金額を入れるのがマナーです。
ご祝儀・結納品の渡し方がわかる記事
for新郎/支度金はいつ、どうやって渡す?
支度金を渡すタイミングとして一番おすすめなのは顔合わせ食事会のときですが、必ずしもそのタイミングでなくとも大丈夫です。実際、支度金を受け取った方110人への調査結果では、顔合わせ食事会で渡されたケースは15.5%と少なめで、それ以外のタイミングで直接渡された方が50.9%と大多数。
彼の家に遊びに行ったときに頂いた方や、新居に彼の親が来て渡してくれた方、結婚式の少し前に渡されたという方も。渡し方も様々で、彼の親から彼女の親に渡すケースのほか、彼が親から預かったお金を彼女に直接渡すケースも多いようです。また、手渡しではなく、口座振込で受け取ったケースも21.8%と多く見られました。
ここでは、顔合わせ食事会での渡し方の一例をお伝えします。食事会で渡すなら、おすすめは、最初のあいさつが終わって、食事が始まる前にお渡しすること。きちんと感が出て思い出にもなるでしょうし、その後、乾杯するときに、婚約が無事調ったお祝いという雰囲気が出ます。
お金の受け渡しについては、彼が彼女に直接渡してもよいですし、結納の流れをくんで行いたい意向があれば、親同士で渡してもOK。両家やふたりの希望を入れた上で、事前にふたりが決めておくとスムーズです。
結納をしなかった方に聞きました
【顔合わせ時の食事の前に】
彼の家から事前に支度金を用意していると連絡があり、顔合わせ食事会の際、食事の前に、彼の家から30万円を私の家にと頂きました。その後、その場で私たち夫婦が受け取りました。(ボリスさん)
【顔合わせ食事会の席で】
結納をしない旨を伝えたところ、支援金を渡したいということだったので、食事会の際に、100万円を受け取りました。(えむさん)
【彼の親が彼女の自宅を訪問】
彼の親が私の自宅を訪ねて、私の両親へ100万円を渡してくれました。(Mさん)
【彼の親が新居で渡してくれた】
彼の両親が私たちの新居に来て、結婚祝いとして50万円を渡してくれました。新居の家具や家電を買ったり、結婚式費用にしました。(ゆきだるまさん)
【新婦の口座に振り込まれた】
ご両親から支援金を渡したいとの申し出があり、彼の実家に行った際に口座番号を伝えて50万円を振り込んでもらいました。(むーちょさん)
forふたり/支度金の受け渡し、食事会で結納風にする場合のセリフは?
顔合わせ食事会の席で、記念に残る形で支度金を渡したい場合は、結納の際に使われる口上を取り入れるのもよいでしょう。以下は、結納の流れもくんだ、顔合わせ食事会での流れの一例です。
■挨拶と家族紹介
新郎と新婦:「本日は私たちのためにお集まりいただきありがとうございます。改めて婚約の報告と両家の紹介をしたく、顔合わせの食事会を開催いたします。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
「〇〇です。まずは私の父と母を紹介します。父の◎◎と母の◇◇です」
■支度金
・新郎父が新婦父に渡す場合
新郎父:「佐藤家より鈴木家へ、お支度金(※)を贈ります。幾久しくお納めください」または「そちらは私ども佐藤家からの御支度金です。幾久しくお納めください」
・新郎が新婦に渡す場合
新郎:「花子さんへ、お支度金を贈ります。幾久しくお納めください」
※御着物料、家具料など表書きに合わせて変えても
新婦の父、または新婦:「ありがとうございます。幾久しくお受けいたします」
シンプルに行いたい場合は、「どうぞ支度金をお納めください」「ありがとうございます」といったやりとりにしても大丈夫です。
■婚約記念品の贈呈
新郎:「私から花子さんへ、婚約記念品の指輪を贈ります」
新婦:「ありがとうございます。謹んでお受けいたします」
その後、両家で婚約が調ったことを祝って乾杯をするとよいでしょう。
結納と顔合わせの挨拶(あいさつ)がわかる記事
for新婦/支度金を頂いた新婦はどうお返しをするべき?
支度金を受け取った方110人に調査したところ、新郎の家にお返しをした方は16.4%、新郎にお返しをした方は4.5%で、合わせて2割程度でした。
結納金の相場に近い金額を頂いた場合は、結納の返礼マナーを参考にするとよいでしょう。結納の場合のお返しは、関東は半返しといって結納金の半額程度の品物を新郎側に贈るのが基本です。一方、関西の場合は、結納のお返しは基本的にはないのですが、その代わりに後日、結納金の1割程度の金額の品物を新郎の家へのお土産として持参するのが一般的です。
一方、金額が結納金ほど大きくない場合や、先に彼の家からお返しは不要との意向があった場合は、彼の家のご家族が喜ぶものをお聞きして、品物でお返しを。支度金の場合、相場やルールはありませんが、どちらかといえば、お金でお返しをするよりは、相手の家が喜んでくれるものを、彼を通じてヒアリングし、贈るとスマートです。
お返しの際ののし紙は水引は赤白のあわじ結びにし、表書きは「ほんのわずかな」という意味の「松の葉」がおすすめ。また、名前は、家として贈る際は名字のみにし、新婦が個人で贈る際はフルネームにします。
結納をしなかった方に聞きました
【フルーツ】
彼の家族が物欲がない方だったので、もらって困らない物を選定しました。(ゆうさん)
【旅行券やカタログギフト】
結婚式のときに両親への贈呈品としてお返しをしました。中身は結婚式の会場で用意してもらった、記念品や旅行券、カタログギフトなどで、セレクトは彼にしてもらいました。(ccレモン)
【お菓子】
事前に彼の家から、「お返しはいらない」と話があったため、消費ができて、高額にならないようなものが良いと考えお菓子を贈りました。(Sさん)
【空気清浄機】
お祝いを受け取って1カ月ほど経った時に、空気清浄機を贈りました。(wakaさん)
【お肉】
義父は、以前から食に興味があると聞いていたので、ネットで義父の好きそうな食べものを彼に選んでもらい、父の日に到着するようにお肉を贈りました。(タマさん)
婚約イベントのお礼・お返しがわかる記事
その他、支度金の用意・受け渡しで気を付けたいこと
支度金の受け渡しでは、いくつか気を付けるべきことがあります。
■サプライズにしない
新郎側は支度金を渡す場合、事前に新婦側に渡すことを必ず伝えておきましょう。サプライズで渡すとなると相手も戸惑うことがあります。その場で受け取ってもらえないということにならないよう、事前の根回しが大切です。
■親の意見が変わる場合も
当初「支度金はなし」で、と両家で調整しておいたのに、顔合わせ食事会の直前や直後に、新郎の親が「やっぱり支度金を渡したい」と言い出すケースもよくあること。その場合、何かしてあげたいという親の意向をくんで、何に使うお金として頂くか、ふたりで相談をすることをおすすめします。新生活の家具・家電代として頂くのもよい方法です。
■地域性の違いに注意
支度金のやりとりをする場合、結納の地域別のしきたりについても確認を。関東と関西では結納のルールが大きく異なります。支度金の金額が結納金相当の金額なら、どの地域のルールにのっとってお礼を考えればいいか、両家の親によく相談しましょう。
まだある!婚約イベント期の常識&マナー記事
From 編集部
両家の思いやりの気持ちを取り持って
今回の調査では「支度金というものがあると知らなかった」という方も少なくありませんでした。親から「支度金を渡したい」と言われて初めて知るという人もいるようです。
親の申し出に、嬉しさもありつつ、形式ばらずに済ませたい方にとっては、悩ましさもあるかもしれませんが、支度金は、新郎の親からの、ふたりへの思いやりの心が形になったもの。この記事を参考に、受け渡し方や準備など、必要な両家の調整を行ったうえで、親からの愛情に、心からのお礼をふたりから親御さんに伝えてください。
岩下宣子 マナーデザイナー
「現代礼法研究所」主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事・相談役。全日本作法会の故内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学び、企業、学校、公共団体などでマナー指導や講演などを行う。「マナーは愛。相手の気持ちになって考えて」と花嫁さんへ愛あるアドバイスを送る。マナーに関する著書多数。
構成・文/河内千春 イラスト/moeko 監修/岩下宣子(現代礼法研究所)
※記事内のデータとコメントは2024年9月に実施した2年以内に結婚し、結納をしなかった女性100人・男性100人が回答したマクロミル調査と、2024年10月に実施した2年以内に結婚し、結納をしておらず、支度金をいただいた女性110人が回答したマクロミル調査によるものです
※掲載されている情報は2024年11月時点のものです
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