【LGBTQ+カップルの結婚式】トランスジェンダーの彼と挙げました!
揺るぎない誓い、自由な発想から生まれる演出、心尽くしのおもてなし…。カップルの数だけスタイルがある、カラフルなLGBTQ+ウエディングをレポートします!今回はトランスジェンダーの彼と彼女の結婚式です。会場の選び方や工夫したことなど、実体験から生まれたお役立ち情報もお見逃しなく。
揺るぎない誓い、自由な発想から生まれる演出、心尽くしのおもてなし…。カップルの数だけスタイルがある、カラフルなLGBTQ+ウエディングをレポートします!今回はトランスジェンダーの彼と彼女の結婚式です。会場の選び方や工夫したことなど、実体験から生まれたお役立ち情報もお見逃しなく。
今回、紹介するのは…
右:露木逢人さん(33歳)
左:露木聖愛さん(29歳)
元公務員の逢人(あいと)さんは元女性で、セクシュアリティーの悩みを抱え、29歳でホルモン治療を開始。聖愛(せいあ)さんとお付き合いを始め、性別適合手術を受け、戸籍の性別も変更して結婚へ。元鍼灸(しんきゅう)師の聖愛さんとふたり、今はキャンピングカーで全国を巡る旅人夫婦。主に資産を運用して生計を立てている。
海を一望する、1日1組限定のホテルで全員がリラックスモード
父と歩くバージンロードは、逢人さんの結婚式の一番の願いだった
運動が大好きなふたりは、仲間内のスポーツイベントで出会った。気付いたらずっと隣にいて1カ月後には恋人に。男性としか付き合ったことがない聖愛さんは「トランスジェンダーの彼とは結婚できないかもしれないけれど、一緒にいたい」と思ったそう。
当初、聖愛さんの親からは「理解できない」と言われたが、反対するでもなくふたりの関係を見守り続けてくれた。その後、2年間仲良くしている様子から、結婚報告をした際は「おめでとう」と祝福を。逢人さんが結婚のために戸籍の性別を変えたことも大きく、性別不合という状態に理解を深めてくれた。ただ「祖母ら親族はすぐに理解が追いつかないから」という親の願いで、結婚式はトランスジェンダーには触れずに行うことに。
会場は葉山の海を一望するホテル。沖縄が大好きなふたりらしく「南国の旅」をテーマに、パスポート風の式次第など用意。ドレスコードは「男性だから」「女性だから」というジェンダーバイアスを解放して「カジュアルに、明るく、アロハ大歓迎♪」。
迎えた当日。逢人さんは娘とバージンロードを歩くことができなくなった父を思い、父と肩を組んで笑顔で入場した。ほほ笑ましく見守る人、これまでを振り返り涙する人、それぞれの立場で祝福してくれた。誓いの言葉はふたりとも男性の友人から投げ掛けてもらい、あまりにカジュアル過ぎる内容で笑いが巻き起こった。
トランスジェンダーについては触れない結婚式だったので
親には式前に、胸の内を語るメッセージ映像を届けた
“キス…しませーん”とおどけてから、誓いのキス
ゲストからの旅案内をブルーのペンで書いてもらって
七つの海をイメージ
披露宴が始まり、大きな窓のブラインドが上がると海と空の絶景がバーンッと広がって、砂浜には大きく手を振るふたりの姿!「HAVE FUN!(楽しんで)」とビーチに書かれたメッセージ通り、みんなは一気にテンションを上げて旅行気分。
コミカルにデザインしたケーキによるセレモニーは、スイーツ大好きな聖愛さんの一口をビッグスプーンですくって、幸せいっぱいに大笑い。
挙式に登場した結婚証明アイテムは、世界地図に「おすすめの旅先」や「行ってみたい地域」を書いてもらったもので、これを基にゲストインタビューをして、世界の魅力を語り合う時間に。今、このアイテムは旅するふたりのワクワクのガイドになっている。
晴天率が高い日取りを吟味し、夕刻のサンセットに合わせて当日のスケジュールを組んだふたり。お開きが近づくと、空は美しい夕景に染まり、ゲストはカメラとグラスを手にバルコニーへGO!
家族も親族も友人も、みんながリフレッシュした楽しいウエディングになった。前泊していたふたりはお開き後も宿泊。疲れた体をジャグジーで癒やして、愉快な門出を振り返り語り尽くした。
高砂席でふたりがポップにはじける
シーパラダイスなウエディングケーキ
結婚記念と誕生祝いを兼ねてホテルに再訪。
この景色はふたりの原点になっている
プロポーズからすぐに結婚式は考えていなかったけれど、何はともあれ『ゼクシィ』を購入。沖縄ウエディングをイメージしていたが、近場でもリゾート気分たっぷりに結婚式を挙げられることを知って、湘南・葉山エリアを3軒巡りました。海まで遮るものが何もない立地、1日1組貸し切りで自由につくれること、砂浜に文字を書いて登場できることが決め手に。(聖愛さん)
会場見学をした際、プランナーさんに元女性のトランスジェンダーであることを打ち明けました。知っておいてもらった方がプランニングもスムーズにいくと思ったので。実際、打ち合わせではカミングアウトの範囲や悩みを本音で話し合いながら、フランクに丁寧に進めてくださいました。結婚式ではトランスジェンダーを伏せたことから、親にメッセージ映像を贈る提案もしてくださって。また自分自身、まだカミングアウトをしていない時に結婚式に着ていく服装に悩んだことがあったので、ドレスコードも男性・女性を意識しないようなカジュアルスタイルにしました。(逢人さん)
LGBTQ+講座をやっていた経験もあり、ふたりとしてはトランスジェンダーであることを全面に出した結婚式にしたいという思いがありましたが、家族の考えも尊重し、バランスの取れた結婚式になったと思います。とても楽しい時間を過ごし、10年後にまたやりたいなと思うほどです(笑)。(逢人さん&聖愛さん)
【WEDDING DATA】
開催地:神奈川県
会場タイプ:ホテル
準備期間:8カ月
当日のふたりの呼び方:逢人さん&聖愛さん
ゲスト:家族・親族・友人(約80名)
沖縄婚をイメージしていたふたりだったが、首都圏から日帰りもできる近郊リゾートウエディングに切り替え、ゆったり時間を確保して宿泊もした。前日にキッズスペースの準備をしたり、後泊もして結婚式を挙げたその場所に滞在したまま余韻に浸ったり。このようにホテルやレストランが会場なら、記念日のプチ旅行など未来の楽しみも増える!
構成・文/千谷文子
※掲載されている情報は2025年11月時点のものです