[結納金は何に使う?] 結婚式・新生活・新婚旅行はOKだけど、実はNGもあり!
結納時に贈られる「結納金」や、それに代わる「支度金」。日頃聞きなれない言葉だけに、どんな意味合いのお金なのかピンとこない人もいるのでは?今回はそんな結納金の使い方について、マナーのプロのアドバイスも交えながら詳しく解説します。
結納時に贈られる「結納金」や、それに代わる「支度金」。日頃聞きなれない言葉だけに、どんな意味合いのお金なのかピンとこない人もいるのでは?今回はそんな結納金の使い方について、マナーのプロのアドバイスも交えながら詳しく解説します。
結納金とは、結納時に男性側が女性側(男性が姓を変える場合は逆)に対し、「結婚準備のために使ってください」という意味を込めて贈るお金のこと。そのため、使い道も結婚に関するものが通例となっています。
結納を行った人への調査(★)では、結納金の金額が100万~150万円未満というケースが最も多く、平均値は95万2000円。ただし実際に贈る際には、50万円・100万円といった切りのよい金額を包むのが普通です。
結納金は御帯料(おんおびりょう)、小袖料(こそでりょう)などの名目で包みますが、これはかつて帯や着物といった現物で贈った名残です。ちなみに男性側に贈る場合は御袴料(おんはかまりょう)として渡します。
★データ出典/「ゼクシィ結婚トレンド調査2024(全国推計値)」。結納実施率は回答者全体の7%
昔は“嫁入り”といって結婚すると相手の戸籍に入るため、結納金は「今までお嬢さまを育てていただきありがとうございます」と、主に男性側が、姓を変えてもらう女性の親に対して贈るものでした。
一方、支度金は「両家でふたりの生活を支え合い、新居の準備のために渡す経済的な援助」という意味合いのもの。今では法律や事情が変わったこともあり、役割上、結納金との明確な差はないようです。(マナーデザイナー/岩下宣子さん)
支度金に関する相場やマナーを知り、結婚準備に役立てましょう。
結納金の使い道を誰が決めるのか、明確なルールはありません。「結婚は家と家との結び付き」という考え方が普通だった頃は、結納金を渡す相手も親でしたが、現代では女性本人(男性が姓を変える場合は男性)が受け取り、使い道も本人の判断にゆだねられるケースがほとんど。何に使うのか、ふたりで相談しながら決めてもいいですね。
今回のアンケート結果によると、結納金・支度金の主な使い道は以下の通り。さらに代表的な使い方についても詳しく紹介します。
| 使い道 | 割合(複数回答) | |
|---|---|---|
| 1位 | 結婚式費用(会場) | 48.2% |
| 2位 | 新生活費用 | 26.4% |
| 3位 | 結婚式費用(会場以外) | 25.5% |
| 4位 | 貯蓄 | 20.9% |
| 5位 | ハネムーン費用 | 18.2% |
| 6位 | 内祝いの購入 | 16.4% |
結納金・支度金の使い道として最も多かったのは、結婚式の費用。中でも半数近くの人は、挙式・披露宴といった会場への支払いのために使っていました。会場以外への支払いとしては、外部のドレスショップ、結婚指輪、ゲストのお車代などが挙げられます。
約4分の1の人たちは、結納金・支度金を新生活費用にも充てています。具体的には敷金・礼金といった賃貸契約の初期費用や引っ越し代、家具・家電の購入費など。特に、一から全てをそろえる必要がある実家暮らしのカップルにとっては、ありがたいことこの上なし!
ハネムーンの旅費なども主な使い道の一つ。通常の旅行とは異なり、結婚の記念イベントともいえる特別な旅行なので、ここも結納・支度金の出番です。
結納金で新居のソファを購入。残ったお金は式費用や貯蓄にも回しました。(Miyuさん)
私の両親が家具と家電を購入してくれたので、支度金はそのまま両親に渡しました。(舞さん)
当初「ナシ婚」でいいと思っていましたが、彼女が結納金を式費用に回そうと言ってくれ、結婚式を挙げるきっかけに!(TKさん)
遠方ゲストのお車代に充てました。またお互い実家暮らしで電化製品を一からそろえる必要があったので、支度金に助けられました。(KYさん)
彼の母から「これで好きなドレスを着てね」と渡されたお金。後悔のないドレス選びができて感謝しています。(snさん)
地域のしきたりや親の考え方などによって、頂いた結納金の一部を「結納返し」としてお返しするケースもあります。実際に今回のアンケートでも、約3割の人が結納返しを行っていました。
例えば関東地方には「半返し」という習わしがあり、結納金が100万円の場合、50万円を相手にお返しします。中には、あらかじめその分を差し引いた額(50万円)を受け取るという合理的なやり取りも。なお品物での結納返しには、腕時計やスーツといったアイテムが多く選ばれています。
結納金・支度金はあくまでも結婚式や新生活のためのお金なので、本来の目的以外に使うのは控えたいところです。例えば奨学金や車・新居のローン返済、結婚式以外の装飾品や日用品の購入などもその一つ。趣味や推し活に使うのもちょっと違いますよね。
将来のための貯蓄に回したいと思う人もいるかもしれませんが、贈った側の意図と異なる使い方をすると、わだかまりを残す恐れも。迷ったら自分の親やパートナーともよく相談し、両家が納得できる使い方を心掛けましょう。
結婚式や新生活準備、ハネムーンといったお金がかかるこの時期に、結納金や支度金はありがたいものですが、贈る相手にとっても決して小さなお金ではありません。そのことを頭に入れ、大事に使うためのポイントを考えてみましょう。
基本的に、結納金・支度金の使い方は受け取る側が決めてもOK。ただし注意すべき点はあるようです。「使い道についてわざわざお伺いを立てる必要はありませんが、報告だけは忘れずに。そのことが感謝の気持ちを表すことにつながるからです」とマナーデザイナーの岩下さん。
中には、贈る側の親から「これで新居の家具や家電をそろえてね」などと具体的に示される場合があります。その場合、相手の思いをくんだ使い方をするのも大切なこと。今後、家族として良好な関係を築いていくための必要なコミュニケーションと心得て。
「ふたりの思い出にもなるので、結納金や支度金で買ったものや使い道は、忘れないうちに記録しておくことをお勧めします」と岩下さん。折に触れて記録を見返せば、感謝の気持ちを新たにすることができるはずです。
贈与税が気になっている人がいるかもしれませんが、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝い物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」は課税の対象にならないとされています。
ただし、気を付けたいのはその金額。一般的に親から贈与された財産が年間110万円までなら基礎控除の範囲内なので問題ありませんが、1000万円など高額過ぎる結納金の場合は贈与税がかかることがあるので注意が必要です。
どのような場合に贈与税が発生するのか、結納金を受け取る前に確認しておくと安心です。
アンケート結果によると、3割の人が「結納金・支度金の使い道について、親と意見が分かれた」と回答。マナーデザイナーの岩下さんいわく、「律儀に相談するから意見されてしまうので、事後承諾でもいいんですよ」とのこと。相手が最初に使い道を指定しない限り、遠慮せずふたりが必要と思うことに使いましょう。
また、パートナーとの意見の相違を経験した人は2割弱でしたが、「ここはコミュニケーションをきちんと図ることが大切です。相談を重ねる過程もふたりが夫婦になっていくための大切なステップ。お互いに歩み寄りつつも意見はしっかりと伝え、ベストな使い道を探ってください」と岩下さん。
結納を行う予定がある人は、相場やマナーをはじめ、基礎知識を頭に入れておきましょう。
目的が「結婚のため」なら、遠慮せず本当に必要なことに使いたい結納金や支度金。時代と共に少しずつ変化しつつありますが、その意味や成り立ちもきちんと理解した上で、親に感謝しながらありがたく使いましょう。
岩下宣子さん
マナーデザイナー
「現代礼法研究所」主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事・相談役。全日本作法会の故内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学び、企業、学校、公共団体などでマナー指導や講演などを行う。「マナーは愛。相手の気持ちになって考えて」と、花嫁さんへ愛あるアドバイスを送る。マナーに関する著書多数。
構成・文/南 慈子 イラスト/山本あゆみ
※記事内のデータ(★)は「ゼクシィ結婚トレンド調査2024(全国推計値)」、それ以外のデータならびにコメントは2025年7月に「ゼクシィ花嫁会」のメンバー79人が回答したアンケートおよび、過去2年以内に結納金や支度金の受け渡し経験のある20代・30代の男女110人を対象に実施したマクロミル調査によるものです
※掲載されている情報は2025年9月時点のものです