婚姻届の証人がいない…そんなときどうする?代筆はNG?解決策を紹介!
ふたりが法的に夫婦になるための、大切な手続きが婚姻届の提出です。ところで、婚姻届を出す際には証人となってくれる人が2人必要です。証人はどのような人がなれるのか、証人となってくれる人がいない場合は、どうしたらよいのか、婚姻届の証人に関する基本的な決まりや、困り事の解決策を紹介します。
ふたりが法的に夫婦になるための、大切な手続きが婚姻届の提出です。ところで、婚姻届を出す際には証人となってくれる人が2人必要です。証人はどのような人がなれるのか、証人となってくれる人がいない場合は、どうしたらよいのか、婚姻届の証人に関する基本的な決まりや、困り事の解決策を紹介します。
証人欄には氏名、住所、生年月日のほか、本籍の記入も必要。2021年9月からは、婚姻届の押印が不要になりましたが、任意のため、押したい場合は押しても構いません。
証人とは、ふたりがお互いに結婚の意志があることを認め、証明する第三者のこと。民法で、婚姻届を提出する際には、成年の証人2人以上に署名してもらうと定められており、証人の署名がなければ届け出は受理されません。
2人以上の証人が必要になった背景としては、偽装結婚を避けるためや、どちらか一方が結婚したいけれど片方は結婚したくないといった合意が取れていない不本意な婚姻を防ぐためと考えられます。
証人は成年(日本では18歳以上)であれば、誰でもなることができます。親やきょうだいといった親族でなくてもOK。友達や上司・恩師に頼む人もいますし、外国籍の人でもその国の成年であれば証人になれます(※)。また、夫と妻、それぞれから1人ずつ選ばなければいけないものでもありませんから、例えば、証人2人がどちらも妻の関係者であっても構いません。
まとめると、証人になれる条件は、成年であることと、結婚する当人たち以外であること。そしてふたりの結婚を認めてくれる人となります。
※外国籍の人が証人を務めるときは、書類の添付が必要な場合があるので、提出先の自治体の役所に確認を。
過去1年以内に結婚した男女220人が回答したマクロミル調査より
婚姻届を出して1年以内の男女に証人を誰にお願いしたかを聞きました。結果は、いずれかの父母にお願いする人が多く、友人・知人への依頼も4位にランクイン。
父母にお願いした理由としては、「自分の成長を見守ってくれて、結婚を一番喜んでくれたのが親だから」「一般的にそういうものだと思っていた」との声が多く見られました。友人・知人に頼んだ人では「ふたりの共通の知り合いに頼んだ」「親友に頼みたかった」という声が寄せられました。多くのカップルが、ふたりにとって大切な人や、縁を感じる人にそれぞれ頼んでいるようです。
私の父と彼の父に頼みました。なんとなく、こだわりがなければ証人はお互いの父親に頼むのが一般的だと思っていたためです。(ぎょうざちゃんさん)
妻は、自分の姉の証人は父親だったことから、母親に証人をお願いしました。自分も、母は父より証人になることを喜びそうですし、妻も母親が証人になることもあって、母親に頼みました。(やまさん)
証人2人は自分の父母に頼みました。父に頼んだのは、自分の親であり、一番接する時間が長かったから。母に頼んだのは、反抗期だった時期も大切に育ててくれたからです。(ゴウさん)
夫は、今住んでいる場所が実家から離れているため、身近で一番お世話になってる上司に頼むことにしました。私も夫が上司に頼むなら、と仲のいいお友達に頼むことにしました。(Sさん)
夫婦ともに元同級生に頼みました。私の方は、結婚報告したら泣いて喜んでくれた友人で、この子にしか頼めないと思ったから。夫は私が友達に書いてもらうと伝えたら「じゃあ俺はこいつに書いてもらう」と幼稚園から高校まで同じところに通っていた幼馴染に。即決でした。(Mさん)
証人の依頼に関して、悩んだことや困ったことがなかったかを調査したところ、一番多かった悩みは、「書き間違いがあったり、署名してもらうタイミング次第では、婚姻届を出す日が希望日よりも遅れそう」といった手配・期日のお悩みでした。
婚姻届を出したい日が決まっており、かつ、証人として署名を頼みたい人が遠方にお住まいの場合は、間に合うように早めに会う約束を取り付けたり、郵便や宅配便を使うなら早めに送付手配をするようにしましょう。書き間違うことや後から不備が判明する可能性もあります。日程には余裕を持って動き、証人の方に慌ただしい思いをさせないように気を配って。
また、家庭の事情で親に頼みにくいなど「証人を頼める人がいない」というお悩みをお持ちの人も。周囲に結婚を知られたくないため「口が堅い人に頼んだ」という人や、「証人が必要と知らなかったため、近くの知人に頼んだ」といった体験談も寄せられました。
婚姻届はふたりで出しに行けば終わると思っていたが、証人が必要だと知ってから、共通の友人に連絡して証人になってもらいました。お礼に5000円ほどのギフトパンフレットを渡しました。(JWさん)
私の父母が遠方に住んでいるのですが、婚姻届の署名は人生で一度なので、対面で書いてもらいたくて、スケジュールを調整して来てもらいました。(SNさん)
遠方にいる友人にお願いしましたが、失敗する可能性なども含めると婚姻届の提出予定日までに間に合うかとドキドキしました。(Sさん)
夫婦それぞれの友人に1人ずつ、証人になってもらいましたが、普段から付き合いが深いこともあり、特にお礼はしませんでした。今、思い返すと何かお礼をすればよかったです。(あーさん)
あまり人に知られずに静かに婚姻届を出したい気持ちがあったので、口が堅い人に依頼しようと、私の母と友人に証人になってもらいました。(yeさん)
婚姻届は公的書類なので、黒色の消えないペンを使用します。間違えてしまったときは、該当箇所を二重線で消して、証人本人に枠内の余白に正しく記載してもらいましょう。きれいな状態で提出したいなら、念のため、婚姻届の予備も用意しておくと、証人の方も安心できるでしょう。
証人を頼める人がいなかったり、誰にも知られずに婚姻届を出したいなどのケースでは、どのように証人を探せばよいでしょうか。
夫婦の証人がそれぞれ1人ずつ必要というわけではないので、どちらかの知人で2人頼んでも問題ありません。また、知らない人に頼んでも問題はないのですが、本名・住所・本籍・生年月日といった個人情報を書いてもらう必要があるため、了解してくれる人に頼む必要があります。
有料で証人になってくれる証人代行サービスを探して依頼する方法もあります。その際は、弁護士や行政書士などの専門家に依頼することをお勧めします。また、婚姻届を受け付ける窓口の人が証人になってくれる自治体もあります。届け出の際は、夫婦ふたり揃って、本人確認書類と婚姻届を持参して、事情を伝え、市町村役場の人に証人を依頼します。なお、市町村役場の方針によって対応は異なりますから、事前に電話などで可能であるか、問い合わせをしておくとよいでしょう。
証人欄への署名を依頼する際は、「証人になってもらう」「印鑑を押す箇所がある」ということが「お金にまつわる保証人の印象と重なってなんだか頼みづらい」と思われる人もいるのでは。実は、婚姻届の証人になることで、その方が迷惑をこうむることや損をすることはありません。
例外的に、「偽装結婚を手伝う」「片方に結婚する意志がないのに無理やり結婚する目的で証人を依頼されて受ける」というケースでは、後々、証人が罰則の対象になるケースもあります。しかし、一般的に、ふたりに結婚の意志があるとわかっている場合の証人なら「デメリットは基本的にはない」と伝えると頼みやすいでしょう。
婚姻届の証人をお願いする際は、快く署名していただけるように、マナーも守りましょう。
証人に署名してもらう日は、事前に相手のスケジュールを聞いて、調整しておきましょう。証人になってくれる人には、本籍を書く欄もあること、捺印はあってもなくてもどちらでも受理されることなど、必要事項を伝え、日程に余裕を持って依頼します。
上司や恩師はもちろん、知人・友人にお願いする際も「親しき中にも礼儀あり」といわれるように、丁寧に進めましょう。意外と忘れがちなのが、届け出後の報告です。届け出が済んだら、すぐに、報告とお礼の言葉を伝えると、証人を頼まれた人も、嬉しさとともに一安心という気持ちになれることでしょう。
遠方に住む親に証人をお願いしているけれど、婚姻届を早く出したいので、証人から了解を得ていれば代筆してもいいのでは?と思う人もいるかもしれませんが、これは絶対ダメ。住所や本籍は代筆してもよいのですが、署名は必ず本人が書かなければいけません。これを違反すると、刑法159条「有印私文書偽造罪」となり、偽造が判明すると刑事罰が科される可能性があります。署名の代筆は絶対にしないでください。
証人を親に頼むなら、おすすめは両家顔合わせ食事会のときに書いてもらうことです。両家の親が婚姻届の証人としてサインをすることで、婚約の席のおめでたさが一層増しますし、一度に済むので効率も抜群。よい思い出になることでしょう。いずれにしても、証人はふたりの結婚を心から喜んでくれる人に頼みたいもの。ふたりで誰に頼むかを考えてみて、親でも、友人でも、心に浮かぶ人に頼んでみましょう。
若山大輔さん
行政書士/行政書士法人アインクラッド代表社員
1987年生まれ。2014年に全国初のブライダル行政書士として独立。結婚生活に関する法的・資金的なアドバイスを提供しているほか、オリジナル婚姻届を企画・販売する「婚姻届工房」の代表としても活躍。
取材・文/河内千春 イラスト/田中麻里子
※記事内のコメントおよびデータは2025年7月に過去1年以内に結婚した男女220人が回答したマクロミル調査によるものです。
※掲載されている情報は2025年9月時点のものです