結婚式では、さまざまな人があいさつやスピーチを行います。とはいえ、みんなが同じことを話すわけではなく、新郎新婦の紹介や祝辞、謝辞など、スピーチに求められる役割は微妙に異なるもの。まずは基本のポイントを見てみましょう。
代表的なのは主賓あいさつと友人スピーチ
ウエルカムスピーチや親の謝辞なども
結婚式の挨拶(あいさつ)として代表的なのは、主賓あいさつと友人スピーチ、ウエルカムスピーチや親の謝辞などです。
披露宴の冒頭で行う新郎新婦からのごあいさつ。出席に対するお礼と、今までお世話になったことへの感謝を伝えます。
↓詳しくは下記の記事をチェック!
披露宴の締めくくりに、新郎(またはふたり)が行う謝辞。本日のお礼と、「これからも末永くよろしくお願いします」という思いを伝えます。
↓詳しくは下記の記事をチェック!
披露宴の締めくくりに、主に新郎の父親が行う謝辞。本日のお礼と、「これからも新郎新婦をよろしくお願いします」という言葉を親の立場で述べます。
↓詳しくは下記の記事をチェック!
ゲストを代表し、ふたりの人柄に触れながら述べる祝辞。職位の高い上司や恩師に頼むケースが多く、新郎側と新婦側それぞれ1名ずつ立てるのが一般的です。
↓詳しくは下記の記事をチェック!
披露宴開始時に行う「乾杯の発声」。短い祝辞やスピーチを添えると場がさらに盛り上がります。主賓に次ぐ立場の人のほか、仕切り上手な友人に頼むケースも。
↓詳しくは下記の記事をチェック!
親しい友人や同僚によるスピーチ。新郎新婦との懐かしい思い出や楽しいエピソードなどを交え、ふたりの人となりを語ってもらいます。
↓詳しくは下記の記事をチェック!
司会者がゲストのテーブルを回り、マイクを向けて行うスピーチ。あらかじめ用意された質問に答えるスタイルのスピーチなら、ゲストの負担が少ないようです。
お祝いの場にふさわしい内容かを確認
忌み言葉にも気を付けましょう
例えば外見や年齢など、本人たちが気にしていることに触れたり、大切にしている故郷を田舎呼ばわりされたりすると、新郎新婦だけでなく親族もいい気持ちがしないもの。それによって傷付く人がいないかどうかをよく考えましょう。
周囲を不快にさせる下ネタは禁句。「こんな人と付き合っているのか」と、新郎新婦まで同類に見られてしまいます。過去の恋愛話や恥ずかしい失敗談、赤ちゃんがおなかにいることなど、プライベートを暴露的に話すのもタブーです。
自分自身や職場の自慢話は延々と聞かされるとうんざり。他の人が聞いても何のことかさっぱり分からない内輪ネタも、退屈させるだけなので避けましょう。
さまざまな顔触れのゲストが出席する披露宴では節度が必要です。親しい間柄でも、新郎新婦の名前は呼び捨てやニックネームではなく、「○○さん」と敬称を付けるのがマナー。くれぐれもふたりに恥ずかしい思いをさせないように気を付けたいものです。
おめでたい結婚式では、縁起が悪い「忌み言葉」を避けるのが常識です。
うっかりスピーチで使わないよう気を付けつつ、原稿を作成しましょう。
【重ね言葉】重ね重ね/重々/次々/たびたび/しばしば/くれぐれも
【再婚を連想】繰り返し/再び/戻る
苦しい、悲しい、忘れる、負ける、衰える、色あせる、病気、亡くなる、涙、泣く、滅びる、しめやかに、悪い
別れる、離れる、終わる、切れる、割れる、破れる、壊れる、捨てる、去る、消える、なくす、流れる、ほどける
堂々と、ゆっくり話すことを
心掛けましょう
姿勢を正して話しましょう。背筋を伸ばすと堂々として見え、声も出しやすくなります。
一点を見つめるのではなく、なるべく大勢の顔を見て話しましょう。ふたりに呼び掛けるシーンでは、新郎新婦に笑顔を向けましょう。
緊張するのは仕方ありませんが、ずっと硬い表情のままでは声まで暗くなってしまいがち。意識して笑顔を見せるよう心掛けたいものです。
上手にしゃべることを意識しすぎると、肝心な中身が入ってこない恐れが。「伝えたい」という気持ちで、ゆっくり話すのがコツです。
最初に「緊張してしまうので」と、ことわりを入れた上で、書いたものを読む分には問題ありません。とはいえ、ずっと手元を見ながら話すのはNG。時々顔を上げて、新郎新婦やゲストに視線を向けましょう。
基本文例をヒントに
カスタマイズしてみましょう
「ようこそ」の気持ちと共に、式への期待感を高めてもらえるあいさつを
[基本文例]
本日はご多用の中、私たちのためにお集まりいただき、ありがとうございます。
先ほど、皆さまの前で結婚を誓い、晴れて夫婦となりました。
つきましては、日頃お世話になっている皆さまへの感謝の気持ちを込めて、
季節の食材を使ったフルコースをご用意させていただきました。
食事をしながら、久しぶりに顔を合わせる方々と積もる話を楽しんでいただけますと幸いです。本日はよろしくお願いいたします。
披露宴の最初に行うウエルカムスピーチ。ふたりのために集まってくれたゲストに向けて、感謝と歓迎の気持ちを伝えよう。「基本の構成」を押さえたら、場の雰囲気に合わせて、自分らしくアレンジしてみよう。
感謝と決意、変わらぬお付き合いを願うあいさつを
[基本文例]
本日はご多用の中、私どものためにお集まりいただき、ありがとうございました。
皆さまからの祝福や励ましのお言葉に心より感謝いたします。
まだ至らないことの多い私たちではございますが、ふたりで手を取り合って、
明るく温かい家庭を築いていきたいと思っております。
これからもご指導、ご鞭撻(べんたつ)のほど、何卒(なにとぞ)よろしくお願いいたします。
披露宴を締めくくる大事な謝辞。花嫁の手紙とは異なり、基本的にはゲストに向けたものなので、あまり砕け過ぎずにまとめたい。短い言葉の中に「伝えたい想い」を込めた、先輩花婿4人の実例をご紹介!
お世話になった方々への感謝を、親の立場でスピーチ
[基本文例]
本日はご多用の中、大勢の皆さまにご列席賜り、誠にありがとうございました。
両家を代表しまして、お礼のごあいさつをさせていただきます。
先ほどより、新郎新婦に温かい祝福のお言葉を頂戴し、感謝の気持ちでいっぱいです。まだ未熟なふたりですので、今後も皆さまには何かとお世話になることと存じますが、温かく見守っていただけると幸いです。
はなはだ簡単ではございますが、皆さまのご健康とご繁栄をお祈りし、これにてお礼の言葉とさせていただきます。
両家が並んでゲストに感謝の気持ちを伝え、披露宴はいよいよお開きへ…。ここでは締めくくりにふさわしい「親の謝辞」について、一般的な構成の解説と、そのまま使える文例を交えて紹介します。
ふたりの人となりを、お祝いの言葉と共に紹介
[基本文例]
○○君(新郎)、△△さん(新婦)、ならびに両家の皆さま、本日は誠におめでとうございます。私、ただ今まご紹介にあずかりました○○君の勤務先の上司の●●と申します。はなはだ僭越(せんえつ)ではございますが、ひと言ごあいさつさせていただきたいと思います。
(※新郎新婦の人柄について、好感の持てるエピソードを交えながら話す)
いつも朗らかで優しいおふたりですので、きっと温かい家庭を築き、これまで以上に仕事にも励んでくれることと楽しみにしています。
長くなりましたが、おふたりの輝かしい未来をお祈りしまして、私のお祝いの言葉とさせていただきます。どうか末永くお幸せに。
主賓あいさつは、新郎新婦を「とことん褒める」のが鉄則。もちろん美辞麗句だけを並べた言葉だと白々しく感じさせてしまうので、きちんとエピソードを交えて語ることが大切。短すぎず、長すぎず、ふたりやゲストの心に残るスピーチを心掛けましょう。
緊張を解きほぐし、乾杯の発声で場を盛り上げる
[基本文例]
○○さん(新郎)、△△さん(新婦)、ならびに両家の皆さま、本日はまことにおめでとうございます。私、ただ今ご紹介にあずかりました□□と申します。はなはだ僭越(せんえつ)ではございますが、ご指名を頂戴しましたので、乾杯の音頭を取らせていただきます。
それでは皆さま、ご起立の上、ご唱和をお願いいたします。
おふたりの末永いお幸せと、ご両家ならびにご列席の皆さまのご多幸をお祈りしまして、乾杯!
乾杯のあいさつは勢いとタイミングが肝心です。会場中がこれから始まる披露宴に期待し、胸を躍らせている瞬間なので、長々と語る必要はありません。
メインはあくまでも「乾杯の音頭を取ること」なので、スピーチ自体は短く簡潔にまとめた方が好印象です。
ふたりをよく知る友人ならではの「心温まるエピソード」を交えて
[基本文例]
○○さん(新郎)、△△さん(新婦)、ご結婚おめでとうございます。本日はこのようなおめでたい席で、お祝いの言葉を述べる機会を頂き、とても嬉しく思います。
△△さんとは中・高・大学とずっと一緒で、誰よりも長い時間を共に過ごしてきました。
(※新婦の人柄や長所を、心温まるエピソードを交えて語る)
そんな優しい△△さんですから、もちろんクラスメイトからも大人気で、私も出会ったときから一生の友達になれる気がしていました。
○○さん、これからは△△さんをずっとそばで見守り、大事にしてあげてくださいね。
おふたりの末永い幸せを心よりお祈りしています。ありがとうございました。
友人スピーチは、ただ祝福し思い出を語るだけではなく、自分の大事な友人(新郎や新婦)の人となりを、相手側のゲストに紹介するという役目も担っています。心温まるエピソードを盛り込んで、新郎や新婦の素晴らしい一面をアピールしてあげましょう。
岩下宣子 マナーデザイナー
「現代礼法研究所」主宰。マナーデザイナーとして企業をはじめ、学校、商工会議所、公共団体などでマナー指導や講演などを行う。「マナーとは相手を思いやること」を信条に、『ゼクシィ』でも悩める花嫁への愛あるアドバイスでおなじみ。マナーに関する著書多数。