“究極の3分間”心に残る【新郎謝辞】の作り方&文例集
披露宴を締めくくる「新郎謝辞」は、ゲストに感謝を伝えて、これからの決意を告げる大事なスピーチ。ウエディングプランナーの荒井さやかさんに取材し、ゲストの心に残る新郎謝辞の作り方と文例集をご紹介します。
最大のポイントは長さとその人らしい言葉
ゲストを退屈させないために大切なこととは?
新郎のアンケートからは「原稿を読み上げているうちにゲストが飽きているのが伝わってきた」「ネットで見つけた定型文をそのまま読み、二次会で友人に『固かったぞ!』と突っ込まれた」など、スピーチが長すぎたり、マニュアル通りに読んでしまい反省したという声が多く目立ちました。そこでウエディングプランナーの荒井さんに、どのくらいの時間がベストなのか、新郎謝辞で大切なことを教えてもらいました。
【プロのアドバイス】新郎謝辞の長さとポイント
ベストな時間をあえて答えるなら、悩みながらも「2~3分前後が目安」と答えます。というのも、大切なのは「その分数に収めよう」という気持ちを持つことではなく、「ゲストがなぜ退屈してしまうのか?」を考えることだと思っているからです。
新郎様にいつも伝えているのは「できるだけ、ネットなどによく掲載されている定型文じゃなくて、自分の言葉で素直に話してくださいね」ということ。その人らしい言葉を聞いている間は不思議と、ゲストも長く感じないものです。(荒井さん)
究極の3分間はどう作る?
三部構成をベースに考えて
とはいえ、一から文章を組み立てるのが苦手な人も多いはず。ベースのあいさつを押さえつつ自分の思いを付け加えるのが一番スムーズな作り方。新郎謝辞の基本は次の3パートです。
1)出席してくれたことへのお礼と感謝
冒頭でゲストへお礼の言葉を伝えましょう。ここで主賓やスピーチ・余興をしてくれた人などへのお礼を伝えてもよいです。
2)新生活に向けての決意
ゲストが聞きたいのは、ふたりの未来に向けての言葉。どんな家庭を築きたいと思っているか、ふたりでどんな道を歩みたいのか、ゲストの前で決意を述べましょう。
3)今後のお付き合いのお願いと結びの言葉
結婚式にご招待したのは本当に大切な人たち。これからもふたりを見守ってもらい親しいお付き合いを続けたいと伝え、結びの言葉でふたりからの気持ちを伝えてください。
ベースを考えたら、自宅などで実際に読み上げて時間を計ってみてください。ゆっくり読んで2分~3分以内に収まっているのがベストです。
三部構成に+αのアレンジで自分らしさをプラス
最初から文章を考えるのは難しくても、花嫁や家族、ゲストへの思いを込めた一文を付け加えるのならいろいろな言葉が思い浮かびますよね。結婚準備の中で出てきた言葉をノートやスマホなどにメモしておくと、新郎謝辞の下書きになって役立ちます。整った文章じゃなくて大丈夫、率直な思いを謝辞に付け加えましょう。
【プロのアドバイス】どんな内容を付け加えればいい?
ありきたりなあいさつ文ではなく、結婚準備で感じたこと、親に言いたくても言えなかったこと。結婚相手への思いを改めて言葉にしてみたり、今日1日過ごして自分がどう感じたかということを、伝えてみてください。上手にお話しできなくてもいいから、自分の言葉で素直に話すほうが感動します。(荒井さん)
ベースにして考えて! 基本の文例
<フォーマルバージョン>
基本の文例を参考に自分らしくアレンジ。まずは親族や職場の上司を多く招いた披露宴にふさわしいフォーマルバージョンをご紹介します。「しっかりしているな」と感じてもらえるよう、冒頭や締めのあいさつをきちんと入れて、敬語で話しましょう。
1)出席してくれたことへのお礼と感謝
本日はお忙しい中、私たちふたりのためにお集まり頂き、誠にありがとうございました。心のこもった祝福と励ましのお言葉を頂けましたことは、ふたりがこれからの人生を歩んでいく上での、大きな支えとなりました。
2)新生活に向けての決意
出会ってから今日の日を迎えるまでの3年間、仕事が忙しく擦れ違いの日々もありましたし、けんかもしました。そんな時、温かく励まし、助言してくださったのが、皆さま方です。乗り越えて、お互いの絆を深められたのも、皆さま方のおかげと本当に感謝しています。思いやりと感謝の気持ちを忘れずに、お互いに支え合っていける家庭、相手の笑顔を見るだけで幸せになれる家庭を築いていきたいと思います。
3)今後のお付き合いのお願いと結びの言葉
まだまだ未熟な私たちですので、ご迷惑やご心配をお掛けするかもしれませんが、どうぞこれからも、お導きくださいますよう、心からお願い申し上げます。
結びになりましたが、皆さまのご健康ご多幸をお祈りいたし私たちからのあいさつとさせて頂きます。
本日は誠にありがとうございました。
<カジュアルバージョン>
続いては、友人ゲスト中心の披露宴やラフなパーティに合う、カジュアルな新郎謝辞です。ゲストに語り掛けるような口調を入れると、あまり堅苦しくない謝辞に仕上がります。
1)出席してくれたことへのお礼と感謝
本日は僕たちの結婚式にお集まり頂きありがとうございました。皆さまに囲まれて夢のように楽しい結婚式でした。ぜひお礼の気持ちを伝えたいと思います。
2)新生活に向けての決意
結婚式の準備を進める中で、花嫁の〇〇とケンカすることもありました。僕たちの話を聞いてくれた△△君、ありがとう! だけど、結婚式の準備でムービー制作や写真を探す中で、思い出話が始まり、子ども時代のこと、学生時代のこと、社会人になってから……お互いに知らなかったことを話すことで、より思いが深まりました。「娘を頼むぞ」と言ってくれた〇〇さんのお父さん、僕たちはお互いの両親を手本に、明るく笑いに溢れた家庭を築いていきたいと思っています。
3)今後のお付き合いのお願いと結びの言葉
年は大人ですが、まだまだ未熟なふたりです。これからも皆様に助けて頂く場面も多いかと思いますが、今後とも変わらぬお付き合いのほど心からよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました!
【プロのアドバイス】読むときにカンペを持ってもいい?
カンペを見てもいいです。もし見るのであれば「緊張するのでカンペを見ます」と宣言したほうが人間味があって素敵です。言い間違ったり、途中で泣きそうになってもいいのです。素直に、この結婚式を通して感じたことをみなさんに共有していけば、いい時間になること間違いなしです。(荒井さん)
先輩花婿たちのアレンジ文例
「自分らしい謝辞を話せた」という新郎のアンケートからは、次の3種類のコメントが目立ちました。
〇悪天候のときフォローする言葉を伝えた
〇家族やゲストに個別に伝えたいことを取り入れた
〇花嫁への思いや結婚への誓いを最後に話した
先輩花婿たちのアレンジ例を参考に、一番伝えたいことを考えて、語り掛けるような言葉にしてみると+αになるアレンジの文章が思い浮かびやすいです。
天気について話しました
雨が多い地方で結婚式当日も雨。「本日はお足元の悪い中、誠にありがとうございました。私たちにとっては雨は日常の景色で、大切な皆さまと過ごせたことで、今までで一番素敵な雨の日になりました」と付け加えました。
「フランスでは、雨の日の結婚式は幸運をもたらすという言い伝えがあるそうです。これは、神様が新郎新婦の一生分の涙を代わりに流してくれているという意味があり、今日の雨は、私たちにとって大変特別なものとなりました」と冒頭で話しました。
当日の朝は雪混じりの冷たい雨。「本日はお足元の悪い中、私たちの結婚式のためにお集まりいただき、ありがとうございます。先ほどからようやく晴れ間も顔をのぞかせ、空を見ると虹が架かっていました」とあいさつしました。
家族やゲストに呼び掛けました
余興や動画を作ってくれた友人にお礼を言いたかったので「高校時代から、冷静に物事をやり遂げる〇〇を実は尊敬していました」と新郎謝辞にひと言付け加えました。
新婦の祖母が高齢なのに出席してくれたので「遠いところ本当にありがとうございます。新婦の〇〇さんから、手作りのお団子やケーキが大好きだったとよく話に聞いています。これからはふたりで遊びに行きます。ずっと元気でいてください」とあいさつしました。
リングボーイをしてくれたおいっ子に「たくさん練習してくれてありがとう。僕より堂々としていてかっこよかったよ!」と呼び掛けました。
サプライズで映像を作ってくれた新婦の友人グループに「素敵な映像をありがとうございました。大学時代の大切な友人たちと聞いています。これからは夫婦でよろしくお願いします」と伝えました。
彼女や結婚への思いを話しました
家庭環境が複雑だった彼女。親代わりだったというお姉さんに「これからは私が彼女をしっかり支えていきます。笑いがいっぱいの温かい家庭をつくっていくので、いつでも遊びに来てください」と話しました。
父が学生時代に亡くなっているので、母親に向けて「父さんも喜んで見てくれていると思います。女手一つで僕と弟を育ててくれてありがとう。お母さんみたいに優しくて強い親になりたいと思っています」と話し、花嫁の父母にも「これからよろしくお願いします」と伝えました。
おなかに赤ちゃんがいたので、子どもに話し掛けるように「僕たちのところに来てくれてありがとう。家族3人で幸せになろうね」と伝えていなかったゲストにも妊娠報告をしました。
「花嫁の手紙を聞き、大切に育てられた〇〇さんと結婚することの責任をあらためて感じました。これからは私が〇〇さんと支え合い、温かな家庭を築いていきたいと思います」と、そのとき感じた花嫁の手紙への思いを、ひと言追加しました。
新郎謝辞で印象に残った言葉は?
ここ最近のエピソードだと、新郎様が「終わっちゃうの悲しいなぁ」とボソッと発言されたときは、会場中に笑顔があふれ、和やかな雰囲気になりました。そのとき本当に思って感じられたことが言葉になって表れたのだと思いますが、その素直な言葉にすべてが詰まっていて、聞いていていてとても愛おしい気持ちになりました。(荒井さん)
ウエディングプランナーから新郎へメッセージ
最近は泣いてしまう新郎様が多くグッときます。数年前と比べ、結婚式が「新婦のためのもの」という価値観から「ふたりで一緒に価値観を認識しあう場」となっているからか、新郎様も準備に勤しみ、大変な思いをされてこの日を迎えられています。だからこそ、謝辞のときに新郎様もいろんなことを思い出しては、グッとくるのだと思います。
謝辞を言い終えたあと、深くお辞儀をして顔を上げて、拍手を浴びながらゲストのみなさんを見たときに、言葉にできない感動があると思います。ぜひその感動を、充分に味わっていただき、ふたりの宝物にしていただきたいなと思っています。
From 編集部
難しく考えず、素直に感謝を伝えて
一から考えるのが苦手なら、文例をもとにアレンジするのがおすすめ。親、ゲスト、花嫁に感謝の気持ちが伝わればそれで成功! 難しく考えるより、何に一番『ありがとう』を言いたいかを考えてみて。
荒井さやかさん
Coco style WEDDING代表
フリーランスウエディングプランナー
ウエディングプランナーとして、北海道札幌市内の結婚式場に4年半勤務し、2011年に独立。ホテル、専門式場、レストランの他、公園や学校、自宅などさまざまな場所でふたりらしい結婚式を叶えるフリーランスのプランナーとして活躍中。
http://www.ccsw.jp/
構成・文/竹本紗梨 イラスト/moeko
※掲載されている情報は2020年3月時点のものです
※記事内のデータならびにコメントは、2020年1月に「ゼクシィ花嫁1000人委員会」メンバー61人が回答したアンケートおよび、1年以内に結婚式を挙げた20~40代の男性103人が回答したマクロミル調査によるものです
- 式直前1カ月前
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