お互いの家に結婚のあいさつを済ませたら、次のステップは、両家が一堂に会する「結納」や「顔合わせ」。当日のスムーズな進行のために、基本的なしきたりやマナーは事前に押さえておきたいところです。その一つが両家の席順。誰がどの位置に座るか、考え方や決まり事を知って、安心して当日を迎えましょう。
お客さまが座る席が「上座」
もてなす側の席が「下座」
具体的な席順を考える前に、まず押さえておきたいのが、「上座」と「下座」。
結納など特別な場面に限らず、さまざまなシチュエーションで大切にされているおもてなしのマナーです。##s##基本的には、出入り口から遠い席を「上座」、出入り口に近い席を「下座」といい、最も居心地が良い席とされる「上座」には、目上の人やお客さまが座ります。一方、人の出入りなどで慌ただしくなりがちな「下座」は、お客さまをもてなす側の人が座る席です##e##。
また、結納などでよく使われるハレの和室には、掛け軸や花などを飾る「床の間」があることも。その場合は、「床の間」に最も近く出入り口から遠い席が「上座」、その反対側が「下座」となります。
「上座」「下座」の考え方は、和室に限らず洋室でも同じ。心配な場合は、お店に確認するのも手ですよ。
部屋の間取りや環境によっては、「上座」「下座」の考え方にも例外があります。例えば、窓の景色がよく見えるという理由から、出入り口に近い席であっても「上座」とすることも。出入り口からの距離よりも、お客さまにとって一番気持ちいい席が「上座」と覚えておいて。
結納の形式や、誰が主体かによっても
席順は異なる
結納には大きく、「正式結納」と「略式結納」があります。本来の「正式結納」とは、両家を仲立ちする「仲人」が使者となり、男性宅と女性宅を行き来して金品の受け渡しを行うもの。しかし、現代では両家が1カ所に集い行われる結納が一般的なため、ここでは仲人のいる場合を「正式結納」、いない場合を「略式結納」としてご紹介します。
どちらの場合でも、席順には明確な決まり事があるので、しっかりと確認しておきましょう。
昔ながらの正式結納では、男性側が女性宅へ出向くことが一般的だったことから、現在でも略式結納・正式結納共に、##s##基本的にはお客さま側である男性側が上座##e##です。婿取りの場合、これとは逆に女性側が上座に着きます。
親と本人が座る位置については、##s##結納自体が家同士の繋がりを重んじる「家」主体か、ふたりの結び付きを重視する「本人」主体かによって異なります##e##。まずは、誰を主体に行うか事前に両家と相談しておくことも大切です。
「家」を主体に行う略式結納では、男性側の父が上座に座り、その隣に母、次に男性本人と並びます。下座側に着く女性側も同じように、父、母、女性本人の順に座るのが基本です。
「本人たち」を主体とした略式結納の場合は、男性本人が上座に座り、父、母と続きます。女性側も同様に、女性本人、父、母の順番に座ります。
仲人がいる正式結納の場合も、「家」が主体か「本人たち」が主体かによって座り方が変わり、仲人以外の席次は略式結納と同じです。進行役を務める仲人は、どちらの場合も下座に座ります。
結納が無事に終わり、会食へと移るタイミングで、仲人の席を上座に移動するのが一般的です。
本人や親以外の身内が出席する場合、「家」が主体なら、父、母、本人の後に、祖父、祖母、きょうだいが座ります。「本人」主体の場合は、本人、父、母、祖父、祖母、きょうだいの順番。きょうだいは年上から順番に座るのが基本です。
また、車椅子を利用する祖父母がいる際は、出入り口に近い席を用意するなど、臨機応変に対応して問題ありません。
特別な決まりはなし
親の意見を聞きつつ
会話が弾む席順に
顔合わせの食事会は、両家の親睦を深めるためのもの。##s##結納と違って儀式ではないので、席次に関する特別なしきたりはありません##e##。ただ、中には順番を気にする親もいるため、事前に意向を聞いておくと安心です。
顔合わせの席は和やかな時間を過ごすことが一番。そのため、会話が弾む席順を心掛ければOKですが、親の意見も取り入れながら決めましょう。
顔合わせ食事会ではふたりが親をお招きするという形で行くことが多いので、一般的には、父、母、本人の順番で座るケースが多いようです。ただし、親同士が当日初めて顔を合わせる場合は、図のように話を盛り上げるためにふたりが父母の間に入ることもあります。
また、男性側よりも女性側の親が年上の場合など、状況によっては女性側が上座でも問題ありません。
片親しか出席できない場合も、基本的には父もしくは母が上座に座ります。特に気にする必要はありませんが、相手側と人数を合わせたいときは、祖父母やきょうだいに出席してもらっても大丈夫。その際は、本来父もしくは母が座る位置に着席を。相手側には前もって伝えておくといいですよ。
親と本人に加えて、祖父母やきょうだいが出席する場合も、その席順は基本的に結納と同じ。ただし、会を円滑に進めるために、母と本人の間に祖父母やきょうだいの席を設けても問題ありません。いずれにしても、事前に両家で相談しておきましょう。
上座、下座がわかりにくい丸テーブルですが、考え方は同じ。出入口から最も遠い座席が上座となり、最も近いところが下座になります。話が弾むよう、両家の父親、母親がそれぞれ隣同士になるような図のような座り方もおすすめです。
当日になって慌てないよう、事前にテーブルの形を確認しておくとスムーズですよ。
親への結婚あいさつを済ませたら、次は両家の親同士が顔を合わせる番。これをもってふたりの婚約が正式に調うことになります。代表的なものは「結納」と「顔合わせ食事会(婚約食事会)」。それぞれの内容を把握した上で、どちらのスタイルで行うのかを決めましょう。
岩下宣子 マナーデザイナー
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。全日本作法会の故内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏の下でマナーや作法を学び、マナーデザイナーとして独立。企業、学校、公共団体などで指導や講演会を行うほか、多数の著作を手掛ける。