別居婚のメリットは？手続きはどうする？体験者に聞く、夫婦円満のコツ
「籍を入れても別々に暮らして、それぞれの時間を大切にする」「さまざまな事情で住居を別々にする」…。法律婚として結婚しても、別々に暮らす「別居婚」というスタイルがあります。今回は「別居婚」という結婚形態についてメリットやデメリットなどを専門家の方に教えていただきました。さらに、「別居婚」で婚姻届を書く際の注意点もご紹介します。
別居婚とは？
「別居婚」とは、法的に結婚していても別々の生活拠点で暮らす結婚の形のこと。互いの仕事の都合や生活スタイルを尊重しながら、夫婦関係を続けたいと考える人たちに選ばれることがあります。
民法752条では、夫婦は「同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。しかし、この同居義務は「必ずしも同じ屋根の下で生活しなくてはいけない」というわけではなく、互いに納得して「別居婚」を選択している場合は、この同居義務に反すると見なされることはありません。
別居婚を選んだカップルはどう過ごしている？
大好きなパートナーと一緒に住むと、一緒にいられる時間が長い、さまざまな瞬間や感情を共有しやすいなど、多くの良い点があります。一方で、「仕事の都合」、「家族の介護や事業サポート」、「互いの時間を優先したい」、「いつまでも新鮮な気持ちを保ちたい」など、さまざまな理由で別居婚を選択しているカップルも少なくありません。
そうしたカップルは、どのような住まいの形を選び、距離を保ちながら愛を育んでいるのでしょうか。住まいの場所は異なっていても、小まめにやりとりをしてふたりが選択した「別居婚」を維持させているようです。
私たちの別居婚スタイル
互いが1人暮らし
お互いのやりたい仕事を尊重した結果、数年間別居することにしました。私は岐阜、彼は東京で暮らしています。生活費が多くかかりますが、やりたい仕事ができており、別の場所にもう一つ家がある感覚が良いです。毎日LINEでやりとりしていて、夜は電話しています。（tomoさん）
私は1人暮らし、パートナーは実家暮らし
ふたりがいつまでも良好な関係でいたい、互いのプライベートを尊重したいと考え、別居婚を選択しました。離れて暮らしてはいますが、車で40分くらいの距離なので、週に何回か私の家に来たり、レストランで外食して会うようにしています。自分のペースで生活できるし、自分の時間を大切にしたいならやってみるべきだと思います。（maさん）
私は実家暮らし、パートナーは1人暮らし
実家の祖母が認知症で母一人では負担がかかるため、彼の転勤が決まるまでは別居婚を選択。月に6回程度、休みを合わせて会うようにしています。一緒に住んでいない分、新鮮な気持ちを維持でき、お互いのひとりの時間が取れます。ただ、別居婚も不安・不便・けんかは付き物で同居婚している人と変わりませんよ。（amamさん）
別居婚のメリットは？
それぞれが別々の生活拠点で暮らす「別居婚」には、法律面、精神面でいくつかのメリットが挙げられます。
- 【法律婚の権利は維持される】
法律上の夫婦と見なされるので、相続権や配偶者控除、社会保険の扶養、子どもの親権など「法律婚」と同じ形で維持されます。 - 【民法752条「同居義務違反」にならない】
前述した通り、互いが合意して別居している場合は正当な理由があると見なされ、同居義務違反になりません。 - 【パートナーとの関係性で新鮮さを保つことができる】
会う時間が限られていることで、日常のマンネリを防ぎ、いつまでも新鮮さを保てると答える人もいます。また、家事の分担など共同生活をすることで起こりがちな、互いの衝突も少なくなるといわれることもあります。 - 【個人の時間と空間が確保できる】
プライベートな時間や空間が確保しやすいので、互いの時間と空間を尊重できます。
夫婦それぞれの生活スタイルが守られる、自由さが保てるのが「別居婚」のメリットですね。これによってお互いに不満を持ちづらいので、良好な関係を築くことができます。（原口未緒さん）
別居婚のデメリットは？
自由な時間や空間を確保しつつも、夫婦としての権利を守られる「別居婚」ですが、デメリットについても押さえておきましょう。
- 【民法752条「同居義務違反」との関係に注意を】
前述した通り、双方の合意があれば「同居義務」の違反にはなりませんが、後からどちらか一方が同居を求めた場合、合意が無効とされる可能性もあるため注意が必要です。 - 【財産分与請求が通らない可能性が】
「別居婚」の場合は共同で財産を築いていると認められない可能性があり、離婚時に財産分与の請求が通らない可能性があります。 - 【生活費がかさむ】
ふたりが別々に住むことで、家賃・光熱費・生活用品などの費用が二重にかかり、同居よりも生活費が増えることがあります 。 - 【コミュニケ―ション不足に陥りやすい】
物理的に離れているため、擦れ違いが生じたり、同じ経験を共有しにくくなるため、夫婦関係が希薄になる可能性もあります。 - 【周囲から理解を得られにくい可能性も】
さまざまな結婚の形があるといっても、まだまだ親や友人など、周囲の人に「別居婚」を説明する際に、理解を得られにくい可能性があります。
別居婚は自由な暮らしができる一方で、生活費の増加やコミュニケーション不足、財産分与などの法的なトラブルリスクもあります。お互いの理解とルール作りが、安心して続けるための鍵になります。（原口未緒さん）
別居婚の手続きはどうする？
いざ、ふたりが「別居婚」を選んだとき、婚姻届の記入方法や関連する手続きに迷うことがあるかもしれません。原口さんに記入方法や関連手続きについて教えていただきました。
別居婚の婚姻届の書き方
別居婚だからといって、婚姻届に特別な書き方が必要になるわけではありません。住所欄には、提出時点での住民票上の住所をそのまま記入するので、提出後に同居を始める場合でも、別居を続ける場合でも、書き方は同じです。
ここでは、婚姻届を記入する際に「これってどう書けばいいの？」と迷いがちなポイントをまとめました。なお、結婚と同時に住民票を移すケースを「同居婚の書き方例」としてご紹介しています。
婚姻届記入時に迷いがちなポイント
- 住所
同居婚：夫になる人と妻になる人の住所が同じになります。
別居婚：婚姻届を提出する時点でのそれぞれの住所を記入します。夫と妻の住所が異なっていても問題ありません。 - 世帯主の氏名
同居婚：一般的に夫になる人が新しい世帯主となります。
別居婚：婚姻届を提出する時点の、それぞれの世帯主の氏名を記入します。
1人暮らしの場合は自分自身が世帯主となり、実家暮らしの場合は、親など住民票に記載されている世帯主の名前を記入します。夫と妻で世帯主が違っても問題ありません。 - 婚姻後の夫婦の新しい本籍
同居・別居にかかわらず、本籍地は夫婦で一つに統一する必要があります。本籍地は現在の住所地でなくても、日本国内の好きな場所を選ぶことができます。ただし、遠方にすると戸籍謄本などの取り寄せが不便になることがあるため、慎重に決めましょう。 - 同居を始めたとき
同居婚：婚姻届を提出した日や、同居を開始した日を記入します。
別居婚：同居を始めていないため、この欄は空欄のままで構いません。
住民票の扱いはどうなる？
住民票はそれぞれが居住している場所に置くのが原則のため、「別居婚」の場合、住民票はそれぞれ別のままとなります。住所が変わらない場合は、住民票を移す必要はなく、手続きは不要です。
子どもが生まれたらどうなる？
「別居婚」で子どもが生まれた場合、生まれた子どもは夫婦の「嫡出子（婚姻中の夫婦の間に生まれた子ども）」となり、出生届を提出することで、夫婦の戸籍に入ります。子どもの住民票は、父母どちらかの住所を選ぶことができますが、予防接種、保育園入園などは子どもの住民票上の住所地が基準となることに留意してください。
以下には、別居婚を選択したときに知っておきたい「手続き」をチェックリストにまとめました。こちらも確認しておきましょう。
「別居婚」の手続きチェックリスト
- 婚姻届の書き方
□住所は別居（別住所）のままでOK。詳細は前述の通り - 住民票の扱い
□それぞれ現住所のままで問題ない（住民票上は別世帯となる）
□行政サービスや扶養関係は制度を受ける場所へ個別に確認を - 子どもが生まれたら
□出生届を14日以内に提出
□子どもは自動的に夫婦の戸籍へ入る
□健康保険・児童手当などは忘れず手続きを - 子どもの扶養
□父母どちらの扶養に入れるかを選ぶ（勤務先や収入状況を考慮）
□年末調整・確定申告時に扶養控除の扱いを確認 - 子どもの生活費
□養育にかかる費用や養育の分担方法を話し合っておく
□教育費・医療費など将来に向けた負担割合も相談しておくと安心
夫婦で円滑な別居婚を続けていくためには、「別居婚継続の意思確認」や「生活費分担の見直し」、「将来計画の再確認」などを定期的に見直していくのをおすすめします。互いの認識を揃えて人生設計を擦り合わせることで、安心感を持って別居婚を続けていくことができます。（原口未緒さん）
別居婚体験者に聞いた
夫婦円満のコツ
別居婚は、「仕事の都合」や「個人の自由」を優先しやすいですが、一方で物理的な距離やいつも顔を合わせていられない…という点がコミュニケーションの壁になりやすいのも事実です。実際に別居婚を選んだカップルは、この壁をどのように乗り越え、夫婦円満を保っているのでしょうか？別居婚カップルならではのコミュニケーションの取り方も参考にしてくださいね。
私たちの夫婦円満のコツ
常に相手のことを思いやる！会える時は全力で楽しむ！
出会った時から遠距離で、結婚後も仕事の関係で別々の地域に住んでいます。自分の時間が自由に取れること、また月に1～2回会う時には毎回旅行気分で会えるのが良いところです。今の時代はいろんなツールがあるし意外となんとかなるので、別居婚になったとしてもあまり心配しなくても大丈夫です！（七海さん）
小まめに連絡を取り、定期的に直接会うのが大事
彼の急な転勤と私の仕事を優先し、別居婚を選択。毎日電話やLINEで連絡を取り、2カ月に一度は彼が私の住んでいる県に来てくれていました。結婚していてもお互いに自由があり、相談相手がいる安心感はメリットでした。一方で、顔を見て話せないことで真意が伝わらずけんかや擦れ違いになることもあったのはデメリットです。関係維持には密なコミュニケーションと、短時間でも直接会う機会を持つことが大切だと思います。（あーやさん）
週に一度会った時にコミュニケーションをたっぷり取る
彼の体調不良を機に、私は子どもとマンションに、彼は隣の市の実家で別居婚をしています。家事負担が減り、自分のための時間が増えて生活が充実しています。週に一度会ったときには、たっぷりとコミュニケーションを取っています。日常の不便さや子どもにとって父親が毎日家にいないという寂しさはあるものの、たまに会うことで良好な関係を続けられるため、夫婦は必ずしも一緒に住む必要はないと感じています。（ろいさん）
From編集部
別居婚を円満に続けていくコツを知って、HAPPYな日々を送ってね
別居婚は「ふたりらしい距離感」を大切にできる新しい結婚の形。そんな関係を続けるには、コミュニケーション方法やお金の使い方、子育てを含む将来設計なども、前もって話し合っておくと安心です。大切なのは、離れて暮らしていてもお互いの生活や気持ちを尊重すること。形式にとらわれず、ふたりに合ったスタイルを選んでHAPPYな人生を一緒に描いていってくださいね。
構成・文／RIE☆ イラスト／moeko Ｄ／mashroom design
※記事内のデータおよびコメントは2025年9月に「ゼクシィ花嫁会」のメンバー73人が回答したアンケートならびに、現在「別居婚」の人もしくは、過去「別居婚」を経験した人もしくは、これから「別居婚」を検討・予定している人いずれかの条件に当てはまる女性110人が回答したマクロミル調査によるものです
※掲載されている情報は2025年11月時点のものです
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