結婚後の世帯主は2人それぞれにできる?婚姻届の世帯主欄の書き方も解説
結婚すると、多くの人たちが同居をし、どちらかがが世帯主となって生活するのが一般的です。でも中にはさまざまな理由で、「結婚しても2人がそれぞれ世帯主になりたい」と希望するカップルも。今回は、夫も妻も世帯主になるための条件や手続き、世帯を分けることで受けるメリットやデメリットなどを詳しく説明します。
結婚すると、多くの人たちが同居をし、どちらかがが世帯主となって生活するのが一般的です。でも中にはさまざまな理由で、「結婚しても2人がそれぞれ世帯主になりたい」と希望するカップルも。今回は、夫も妻も世帯主になるための条件や手続き、世帯を分けることで受けるメリットやデメリットなどを詳しく説明します。
婚姻届のふたりの住所欄には「世帯主の氏名」を記入するところがありますが、ここには現在(提出時点)の住民票の情報を書きます。いくつかのパターンが考えられますので、下記より、自分の状況に当てはまるものを参考にしてください。判断できない場合は、記入前に住民票を確認しましょう。
ふたりとも、同じ住所に世帯主となって住民登録している場合は、それぞれ自分の名前を記入します。
あまりないパターンですが、どちらか片方を世帯主にして同棲するカップルも。その場合は、同じ世帯主名(彼を世帯主にしている場合は彼の名前)をそれぞれ記入します。
こちらも結婚前の住民票に記載されている世帯主名を。実家暮らしで父親が世帯主の場合は父親の名前を書きます。1人暮らしをしていて自分自身が世帯主だった場合は、そのまま自分の名前を書きましょう。
「世帯主」とは文字通り世帯の代表者のことで、住民票を作成する際に決めるものです。よく「婚姻届の提出とともに決まる」と誤解されがちですが、婚姻届の提出時に行われるのは戸籍の作成のみ。誰を世帯主にするかは、住民票の手続きの際に決める必要があります。
ちなみに、すでに親の戸籍から離れて戸籍の筆頭者になっている人の姓を選ぶ場合を除き、婚姻届を出すとふたりの戸籍が新たに作られます。新しい戸籍に記載されるのは「世帯主」ではなく、「戸籍の筆頭者」であり、実は全く別物なのです。
住民票に記載される世帯主は「同じ世帯で生計を共にする人たちの代表者」で、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の筆頭者は「婚姻によって夫婦となる家族の代表者」と考えると分かりやすいでしょう。
世帯主の主な役割は、世帯を代表して行政手続きなどを行うこと。そのため、行政からの連絡は、同じ世帯に住む一人一人に行くわけではなく、主に代表者である世帯主宛てに届きます。
世帯主とは世帯の代表者のこと。結婚に際しては、法律上、夫と妻のどちらが世帯主になっても構いません。例えば夫の姓を名乗る場合でも、妻の方が会社勤めで安定した収入があり、住宅手当などの福利厚生が充実しているなら、妻が世帯主になっても構わないのです。
長い目で見たとき、どちらが世帯主になった方がふたりにとって都合が良いのか、じっくり話し合って決めましょう。
結論から言うと、それぞれが世帯主になることは可能です。ただし、その場合は住民票を分けなくてはなりません。同じ住所に住んでいても、お互いが世帯主となって生計を立てるなら、住民票も別になるのです。
一方で、夫婦には協力・扶助義務があります。民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められているため、中には世帯が分かれることを認めない自治体も。検討中の人は、念のため住民票を提出する役所に確認しましょう。
実際に世帯を分けるケースはごく少数。それでも「ふたりがそれぞれ世帯主になりたい」というメリットを考えたとき、真っ先に挙げられるのは自分自身の気持ちの部分ではないでしょうか。
例えば金融口座などを開設する際に世帯主や世帯年収を聞かれても、堂々と自分自身のことだけを伝えればいいし、給付金や選挙の投票用紙もめいめい受け取ることができます。
アイデンティティーを大事にしたい人にとって、「結婚してもお互いが独立した個人であること」を尊重されるのが一番のメリットと言えるでしょう。
デメリットはいくつかありますが、まずは職場からの家族手当がもらえず、社会保険の扶養対象外になります。またふたりとも国民健康保険に加入している場合、保険料は各世帯主が支払う仕組みのため、条件によっては負担額が増えることも。
もう一つ、家族なのに住民票が分かれていると、住民票が必要になったときに2枚取らなくてはならないなど、同一世帯での手続きができないことで、必要な書類の準備や手続きの回数などが増えることがあります。子どもが生まれると、2人いる世帯主のどちらの扶養に入るのかという問題も出てきますよね。
いずれにせよ気持ちや勢いだけで決めず、先々にどんなデメリットが出てくるのかをしっかりと見極め、最初によく相談することが必要です。
「世帯分離」とは、すでに世帯が一緒のふたりのうち、一人がその世帯から分離される手続きのことです。同一世帯の夫婦がそれぞれが世帯主となるためにはこの手続きをします。一般的には親子で同居していたものの、定年退職などで所得が減ってしまった親の住民税を軽減するために行うことが多く、夫婦間での世帯分離はレアケースです。
なお、同居している夫婦には「相互扶助義務」があるため、原則として世帯分離ができない自治体も少なくありません。ただし生計を別にしているという証明ができれば認められるケースもあるので、必ず事前に確認しましょう。
夫婦で世帯分離する際の手続き方法と、必要な書類は以下の通りです。
※手続きの方法や必要なものは居住地の市区町村によって異なるため、詳細は各自治体にご確認ください。
「世帯合併」とは、住居を同じくする2つ以上の世帯を1つにまとめて住民票に登録すること。当初、それぞれが世帯主になっていたものの、さまざまな事情で「やっぱり世帯主を1人に変更したい」という場合や、同棲から結婚へというケースなどが考えられます。
具体的な手続き方法と、必要な書類は以下の通りです。
※手続きの方法や必要なものは居住地の市区町村によって異なるため、詳細は各自治体にご確認ください。
「世帯主は1人じゃなきゃだめなの?」という疑問を持つことは、決して特別なことではありません。どんな結婚生活を送るのか、どんな夫婦になりたいのか、ふたりのありたい姿をイメージしながら、世帯主について考えてみる機会を設けてみてはいかがでしょう。
湯原玲奈さん
行政書士/マリッジデザイン株式会社 代表取締役
「国際結婚・離婚、外国人の在留ビザ申請を得意とする行政書士の活動のほか、パートナーとともに「お金・実家・時間」という3大テーマについて考えるためのオリジナルメソッド「マリッジノート(R)」などの実践的コミュニケーションツールを提供している。著書に『一生幸せなふたりでいるための10のワーク【マリッジノート(R)】』(朝日新聞出版)。
文/南 慈子 イラスト/別府麻衣 構成/小田真穂(編集部)
※掲載の情報は2025年10月現在のものです。各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。