本籍はどこでもいいって本当?みんなはどう本籍を決めている?
婚姻届には、今の本籍と、結婚後の新しい本籍を書く欄があります。婚姻届を記入する際、新しい本籍には、どういった地名地番を書けばよいのでしょうか。本籍とはどういうものなのか、どこに置いても構わないのか、結婚したカップルは本籍をどのように決めたのかをお伝えします。
婚姻届には、今の本籍と、結婚後の新しい本籍を書く欄があります。婚姻届を記入する際、新しい本籍には、どういった地名地番を書けばよいのでしょうか。本籍とはどういうものなのか、どこに置いても構わないのか、結婚したカップルは本籍をどのように決めたのかをお伝えします。
「本籍」とは戸籍が登録されている具体的な場所のこと。「住所」が住民票の届け出を行っている場所で、生活の本拠として実際に住んでいる場所であるのに対し、「本籍」は実際に住んでいる場所でなくても構いません。
本籍とは何かを理解するために、「戸籍」のことを知っておきましょう。戸籍とは、人の出生から死亡に至るまでの親族的な身分関係を登録し、公に証明する公簿です。かつては家単位で作られていましたが、今は、一組の夫婦を単位に作られます。この戸籍を登録する具体的な場所が「本籍」なのです。
ちなみに、「本籍」と「本籍地」は混同して使われがちですが、本籍地とは、戸籍を管理している自治体を指します。上の婚姻届の見本で言えば、本籍は「東京都豊島区□□三丁目1番」で、本籍地は「豊島区」となるのです。また、「住所」と「本籍」も別物で、住所は「東京都豊島区□□三丁目1番5号」のように「号」まで用いますが、本籍の場合は、普通、「番」「番地」までの表記となります。
本籍は日本国内の土地台帳に記されている地名地番のある場所であれば、どこでも自由に選べます。後から、本籍を変えることも可能です。
例えば、住民票を置く住所は、公的サービスを受けるのに必要だったり、税金をどこに納めるかにつながってくるため、適当な場所にすることはできず、生活の拠点がある場所に置かなければなりませんが、本籍は、どこに置いても問題がないため、自由に決められるのです。
本籍を置く場所は、住民票の住所と同じ地名地番にしても、違っていてもよいですし、他の人が本籍としている場所でも構いません。観光地やテーマパーク、離島など、有名な場所に置くこともできますし、実際にそうした場所を選んでいる人もいます。
「婚姻届に書くために、自身の本籍を知りたい」「新しい本籍をどちらかの元々の本籍の場所と揃えたい」などのために、本籍を確認したいという方もいるでしょう。
本籍を覚えていない場合、どのように確認すればよいのでしょうか。親に確認する方法もありますが、より正確を期すなら、市区町村の窓口で「戸籍謄本(または戸籍抄本)(※1)」を取得するか、「本籍記載の住民票」を取得すれば確認できます。マイナンバーカードがあれば、コンビニエンスストアのマルチコピー機で取得することもできます(※2)。マイナンバーカードがない場合は、自治体窓口に行くか、郵送での手続きを依頼する方法もあります。
運転免許証をお持ちの方は、少々手間にはなりますが、免許証に入っているICチップに本籍が登録されているので、警察署・免許センターなどに設置されている確認端末や、免許証情報を読み取ることのできるスマートフォンのアプリなどで、本籍を確認することもできます。
※1 戸籍謄本は正式名称を「戸籍全部事項証明書」といい、同じ戸籍内の全員の身分事項が記載されたもの。戸籍抄本は正式名称を「戸籍個人事項証明書」といい、同じ戸籍内の人のうち、特定の個人の身分事項のみが記載されたもの。本籍はどちらの書類でも確認可能。
※2 住所と本籍地の市区町村が異なる場合は事前に本籍地の利用登録申請が必要。
戸籍は一組の夫婦と、未婚の子を基本単位に編成されています。子どもが結婚すると、親の戸籍から除籍され、結婚相手との間で新しい戸籍を作ることになります。この戸籍を置く場所として、新たな本籍を決めることになります。
夫や妻の元々の本籍と同じ地名地番にしてもよいので、その場合は、片方は本籍が変わらないことになります。なお、再婚の人がすでに戸籍の筆頭者となっている場合、その人が本籍をすでに持っているので、ふたりで新たな本籍を決める必要はありません。本籍を持っている人の戸籍に入ることを「入籍」と言います。
出典:2025年7月に過去1年以内に結婚した男女220人が回答したマクロミル調査
婚姻から1年以内の男女220人に、本籍に選んだのはどのような場所かを調査したところ、「夫の元の本籍」を選んだ方が半数以上という結果になりました。「夫の元の本籍」の次に多かったのは、「ふたりの新居の住所」。どこに置いてもいいとはいえ、本籍を、ふたりが実際に住んでいる市区町村や、実家のある市区町村に置いておくことは、手続き上、便利なこともあり、自然な選択といえるかもしれません。一方、元の本籍や新居以外の場所を選んだ人も約1割にのぼりました。
ふたりの思い出の場所にすることも可能と聞いたので、出会った場所である職場の所在地にしました。(せりさん)
私のいとこ夫婦が「ふたりの思い出のある横浜みなとみらいにした」と母から聞いて、当時の住居はいずれ引っ越す予定があったことから、ふたりで遠距離恋愛時代によく行った神戸のメリケンパークを思い出し、そこを本籍にしました。(まっちゃんさん)
本籍は2回目のプロポーズをされた場所にしました!これからも多分なくならない場所だと思います。次の結婚記念日もそこで食事をします。(みいさん)
本籍にこだわりがなく、どこを選んでもよいと聞いたことがあったので、結婚式を挙げたホテルの所在地にしました。歴史あるホテルで、なくなることはないと思うので。(雪乃さん)
結婚して、夫の姓に変わることになったので、代わりにと本籍は私の方にしました。姓が変わることに少し寂しさはありましたが、本籍を私の方にしてもらえたことで、その寂しさが少し小さくなったような感覚で、よかったです。(ほの香さん)
本籍はどこに置いてもいいことから、沖ノ鳥島や南鳥島などの離島に置く人や、皇居に置くといった人もいます。しかし、実は本籍はあまり遠方に置いてしまうと、戸籍謄本が必要になったときに困ることがあります。
戸籍謄本は、パスポートの発給申請や、不動産の名義変更、離婚届の提出などで必要な書類です。また、自身が死亡したとき、遺族が、相続手続きや、生命保険の請求手続きをするために戸籍謄本を取る必要が出てきます。
以前は戸籍謄本は本籍のある自治体に行かないと、取得できませんでした。現在はコンビニエンスストアで取得できるようになりましたが、マイナンバーカードや事前の利用登録申請が必要な上、システム障害で利用できないこともあるリスクも考えておいた方がよいでしょう。
コンビニエンスストアでの取得の他、本籍地の自治体に郵送を依頼することも可能ですし、令和6年以降、戸籍の広域交付制度が開始されたので本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍謄本が請求できるようになりました。しかし、どちらのやり方も申請から手元に届くまでに時間がかかることにご注意ください。本籍を置く場所は、このようなデメリットも考慮したうえで、決めましょう。
本籍は変更することができます。現在の本籍地か、新しく本籍を置くところの自治体窓口に「転籍届」を出せば、変更ができます。
ただし、頻繁な変更はデメリットがあります。後々その人が亡くなってから、遺族が相続手続きのために戸籍謄本を集める際、転籍の回数が多いほど戸籍謄本の請求先が増えて、各自治体の役所に申請が必要となるため、相続人の負担が非常に大きくなるのです。
一方、今後長く住む予定がある町に転居した場合は、本籍を移すことは、手続きの利便性が上がるのでメリットがあります。転勤の多い夫婦の場合、いったんどちらかの実家に本籍を置いて、長く住む町に腰を落ち着けてから本籍を移す、といったケースも見られます。
どちらかの実家に本籍を置く場合、親にもその旨をひと言話しておくとよいでしょう。「うちの住所を本籍にしてほしい」といった親の意向があるケースもあります。また、実家に本籍を置くことで、親に戸籍謄本の取り寄せをお願いすることもあるかも…と考えている場合は、必要なときに頼めるように話をしておくと、後々スムーズです。もっとも、前述のとおり、令和6年より戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の役所でも戸籍謄本などの書類を取得できるようになったため、「よほど急ぎの場合にお願いするね」と伝えておくといいですね。
お互い地元から離れて新居を構えたし、賃貸だからいずれ引っ越すことを見据えて彼の実家にしました。ただ、コンビニでの証明書交付の際、本籍地が遠いので手続きに少し時間がかかりました。(友紀子さん)
夫の名字になるのと夫の地元に住むので、ふたりの新しい本籍は私の元本籍に置きました。ただ、戸籍謄本と課税証明書は、昨年の分は本籍地まで取りに行かないといけなくて、面倒でした。(タケフさん)
嫁入りしたので、夫の本籍に入ることにしましたが、新居に住むことが決まっていたので、そこを本籍にすればよかったです。(あーりんさん)
夫の姓になったので本籍も夫の元の本籍と同じにしましたが、車で3時間かかるところなので、本籍地でしか取れない書類が必要なときは、取りに行くのに遠くて大変です。(kiさん)
結婚を機に新居を購入したので、心機一転の気持ちで新居の所在地を本籍にしました。ただ、転勤や引っ越しの可能性もあるので、実家と同じ本籍にしてもよかったのかなと思うこともあります。(ゴウさん)
ふたりの新しい本籍として、今回の調査では、夫の元の本籍を選んだケースが最多でしたが、理由として「なんとなくそういうものだと思っていたから」という回答も多く見られました。実は、どこに置くこともできる本籍。こだわる人は、新居の住所や思い出の場所など、ふたりの記念になる場所を選んでいるよう。せっかくの機会なので、ふたりでどこにしようか話し合ってみてはいかがでしょうか。
若山大輔さん
行政書士/行政書士法人アインクラッド代表社員
1987年生まれ。2014年に全国初のブライダル行政書士として独立。結婚生活に関する法的・資金的なアドバイスを提供しているほか、オリジナル婚姻届を企画・販売する「婚姻届工房」の代表としても活躍。
構成・文/河内千春 イラスト/田中麻里子
※記事内のコメントは2025年7月に「ゼクシィ花嫁会」メンバー80人が回答したアンケートおよび、2025年7月に行った、1年以内に結婚した既婚男女220人が回答したマクロミル調査によるものです。また、データは同マクロミル調査によるものです
※掲載されている情報は2025年9月時点のものです