80代で再婚したふたりの幸せのカタチ~『1/LOVERS』
結婚したって、しなくたって、何度したって、いい。
一緒に暮らしても、それぞれに住まいがあっても、いい。
家族が増えても、ずっとふたりっきりでも、誰が何と言おうとも。
ふたりの決めた幸せは、全部、いい。
みんなのカラフルな“幸せのカタチ”をシェアしていきましょう。今回は、80代から再婚ライフを楽しむふたりの話──。
60年ぶりに急接近!
プロポーズは彼女から手紙で
60年前。東京大学文学部に通うふたりは、混声合唱団で出会った。
80人規模の大所帯に女性は少なく、彼にとって彼女は憧れの存在だったが、卒業後はそれぞれに結婚して別々の道へ。彼は世界有数のIT企業に勤務。彼女は高校の名物英語教師となり、75歳まで教壇に立った。
一方で彼女の家庭は火の車。前夫は地域貢献に熱心なあまり、2億4000万円もの借金をしてオーケストラを立ち上げたり、画廊を建てたり。彼女は夜に家庭教師も兼業し、借金返済に追われた。
そして、ふたりが現役を卒業する頃、昔の仲間が合唱団を復活させて再会。しばらくすると、彼女の前夫が他界し、地元の人たちが主催するお別れの会には彼も参列した。
肩を落とす彼女にぶどう酒を差し出し、「召し上がれ」と言葉少なに励ましてくれた。「それが、ジーンときたのよ」
合唱団帰りに食事をする仲になると、 長年、 苦労する母を見てきた次男から 「結婚をしてもらえ」と提案が。
背中を押された彼女は、 便せん5枚の手紙を出した。「若い頃に好意を持ってくれていたと聞いていたし、 彼も前妻を亡くし、 共に1人で食事をする毎日だったから良いことなのでは…」と、プロポーズの言葉をつづった。
手紙を受け取った彼は、 80を過ぎて結婚の意思を伝える、 その勇ましさに胸を打たれたのだそう。 そして再婚を決意した。
「彼女は名前を1回変えているから」と、 彼女の嫁ぎ先の姓を名乗ることに。「僕の名前でもない、彼女の旧姓でもない、なぜか山本に」と笑う横で、「パパの供養になりました」と彼女はほほ笑む。
日常の中でも、前妻や前夫の話をして、昔の人生に一緒に浸る時間がある。「相手の楽しみを奪わない」ことも大切にし、勉強が大好きなふたりは、それぞれに本の世界に没入。時には彼が翻訳版、彼女が英語版で同じ小説を読み始めて競争を楽しむことも。
今、ふたりの幸せは変わらないこと。「何か素晴らしいことが起こるのではなく、何事もないのが幸せです」
Photo Episode
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彼女から彼に、プロポーズの言葉をつづった手紙。ここからふたりの人生は大きく舵(かじ)を切る
[Photo2]
年に数回、国内外を旅行する。トレードマークはおそろいの帽子。再婚を機に彼女はおしゃれになったそう
YouTubeでふたりのトークを配信中

山本ご夫妻
(夫81歳・妻82歳)
夫は週5日外出し、囲碁や日本近代史研究にいそしむ。妻は4人の高3受験生の現役家庭教師。月4回はふたりで合唱やリトミックへ。
構成・文/千谷文子 撮影/保田敬介 D/mashroom design
※掲載されている情報は2025年7月時点のものです。
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