
永別の先にある“今”を生きるふたり~連載「1/LOVERS」
結婚したって、しなくたって、何度したって、いい。
一緒に暮らしても、それぞれに住まいがあっても、いい。
家族が増えても、ずっとふたりっきりでも、誰が何と言おうとも。
ふたりの決めた幸せは、全部、いい。
みんなのカラフルな“幸せのカタチ”をシェアしていきましょう。今回は、パートナーとの死別と向き合った先にある、“今”を生きるふたりの話──。
曇りを吹き飛ばしたお守りの言葉
「世界で愛せるのは一人しかいない」
出会う前──。
彼女は同居中の彼を亡くし、時間が止まって、未来はなくなったように感じた。
彼は妻を亡くし、以前にも増して生き急ぐように。「仕事の成果を上げなくては!」「もっと稼がなくては!」と焦る一方で、家族と話しても電車に乗っても吐き気がして、何度も死に方を考えた。
そんなふたりが行き着いたのは、死別を経験した人たちが集うSNS。周囲との会話では共感を得られず、同じ境遇に置かれた人と話したい一心で見つけた場所だった。
さまざまな境遇に耳を傾け、自ら書き込み、反応をもらって「だいぶ救われた」。コミュニティーの中でもふたりの年齢は近く、会うようになってからは深夜に5時間電話した日々も。
次第に彼の歩調もゆっくりに。そしていくつもの共感が、ふたりの心のふたを外してくれた。
彼は彼女の笑顔と心に染みる言葉に惹かれて、彼女は自分のコンプレックスをどんどん長所に変えてくれる彼を敬愛し、ふたりは一緒に暮らすように。
すると今度は、前妻へのモヤモヤが湧いてきた。「この食器に前妻さんとの思い出があるはず」「やっぱり前妻さんは超えられない」と…。
そこでふたりは、元パートナーについてたくさんのおしゃべりを始めた。どんな人だったのか、どのように過ごしてきたのか、その時どう感じたのか。知ることで故人へのモヤモヤはリスペクトに置き換わり、比べなくてもいいと思えるように。
「今では2人の故人は友達のような存在です」とニッコリ。そして、彼のひと言で曇りは全部吹き飛んだ。「世界で愛せるのは一人しかいない」
よく周囲から「なんでそんなに仲がいいの?」と聞かれるのだそう。その理由は、ふたりの中にしっかり存在している。
「死別を経験し、いとしい人が隣にいる毎日は当たり前じゃない。それは奇跡の積み重ね。だから毎日、ありがとうの気持ちがあるんです」
偶然にも、ふたりが出会ったのは3月9日・ありがとうの日。毎年、感謝を込めてお祝いができるよう、この日に婚姻届を提出し、後に結婚式も挙げた。
式当日、ふたりを支えてきた家族は涙を流して喜んでくれた。大切なゲストは大きな拍手を贈り祝福してくれた。「人の繋がりの尊さみたいなものが、じゅわぁ~ときました」と彼は振り返る。
死と真剣に向き合ってきたふたりの生は、今、タフに輝く。そしてもうすぐ、新しい家族が誕生する。
Photo Episode
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次第に日常を取り戻していくふたりは、「今を楽しもう!」と全国のあちらこちらへ旅行に繰り出した
[Photo2]
大好きなテーマパークで結婚1周年を迎えて「ありがとう」のお祝い
[Photo3]
パパになる喜びが胸に押し寄せて、涙が溢れた
YouTubeでふたりのトークを配信中

E.Sさん(28歳)
M.Sさん(25歳)
友人を交えたオンラインゲームが毎晩の楽しみ。旅やグルメも好きで、最近は新しい家族を迎えるために購入したファミリーカーでドライブへ。
構成・文/千谷文子 撮影/保田敬介 D/mashroom design
※掲載されている情報は2025年5月時点のものです
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