
障害にも難病にもひるまない、ふたりの幸せのカタチ~連載『1/LOVERS』
結婚したって、しなくたって、何度したって、いい。
一緒に暮らしても、それぞれに住まいがあっても、いい。
家族が増えても、ずっとふたりっきりでも、誰が何と言おうとも。
ふたりの決めた幸せは、全部、いい。
みんなのカラフルな“幸せのカタチ”をシェアしていきましょう。今回は、障害にも難病にもひるまないふたりの話──。
nonタラレバで行こう!心が健康なら
いくらでも人生はハッピーにできる
亮さんのひと目ぼれで始まった恋は、すぐに結婚へ。人の話にじっと耳を傾ける夫の優しさに、祥子さんも家族も惹かれた。結婚8年目に娘を授かり無事に出産するも、退院直前に妻は脳卒中で倒れてしまう。
昏睡(こんすい)状態の妻を前に頭は真っ白になり、泣き崩れる家族の姿に胸を痛める夫は、妻の耳元に推しのアイドル曲を聴かせ続けた──。
やっと12日後に目覚めるが、左手足には重い麻痺(まひ)が残った。病院の対応をふたりで悔やむと、祥子さんの母は「誰かを恨むより、その手で早く娘を抱けるようになろう」と未来に方向転換!
リハビリに奮闘する妻は、わずか4カ月後には、入院先の東京から名古屋で開催する推しのライブへ繰り出し周囲を驚かせた。けれど今度は持病が悪化、身心が悲鳴を上げて帰省する。夫はあえて距離を取り見守った。次第に妻は治療に前向きになり、大腸を全摘。ようやく心も体も晴れた。
左手は麻痺(まひ)が残り、左足は下肢装具が欠かせず、持病は生涯付き合っていく難病になった。それでも体調は良好で、妻は心躍らせて仕事に復帰。走り出したら止まらない妻に「無理はしないように」と夫は声を掛けた。
もともと妻は靴を100足コレクションするほど、オシャレが大好き!それなのに「装具を着けて履ける靴は限られていて、つまらない。障害があることで選べないのはおかしい!」と、装具着用者も健常者もオシャレに履ける靴ブランド「マナオラナ」(ハワイ語で自信・希望の意)を立ち上げた。
これには夫もワクワク、広告業の経験を生かしブランディングなどサポート。「彼女がこんなイノベーティブな発想もできるなんて。障害者という感覚はなし。次々新しい顔を見せてくれる人です」
「もしあの時……」と後悔する“タラレバ”は時間の無駄、と母から教わり、「障害や病気があっても心が健康なら人生をハッピーにできる」と思えるまでに。それは好奇心旺盛に走る妻と、着かず離れず寄り添う夫が見つけた、ふたりの幸せのカタチ。
Photo Episode
[Photo1]オーストラリアで家族と挙げた結婚式。新婚旅行はオーフィアス島へ。以来、娘を授かるまで、旅行やゴルフなどふたりでアクティブに過ごした
[Photo2]リハビリ入院中も週末は自宅に帰り、「おむつをスムーズに替える方法は?」「右手だけで魚を三枚に下ろすにはどうする?」など試行錯誤。ふたりに悲観はなく、毎日に夢中だった
[Photo3]心のバリアをクリエーティブに解決するNPO活動に、家族揃って参加。インクルーシブな環境で娘の成長を見守る
You Tubeでふたりのトークを配信中

亮さん(48歳)
祥子さん(48歳)
広告代理業の夫は仕事一辺倒。芋焼酎で晩酌が日々の楽しみ。妻は靴ブランドを立ち上げ、推し活・ヨガ・統計学の占い・ドライブなど趣味も多彩。
構成・文/千谷文子 撮影/保田敬介 D/mashroom design
※掲載されている情報は2024年11月時点のものです。
※「障がい」の表記は音声で「さわりがい」と誤読される可能性があり、また障害は個人ではなく社会にあるという考えから「障害」と表記しています。
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