“縁”を感じられる式スタイル「仏前式」って?どう挙げる?[実例付き]
和婚の挙式スタイルには、神社などでの神前式の他、仏教の教えに倣い、お寺などで行う「仏前式」も。「仏前式、気になるな、知りたいな」。そう考える花嫁のために、仏前式専門プランナーさんによる基本ノウハウとカップル実例をご紹介。「巡り合った“縁”に感謝をする」。そんな仏前式の基本と魅力をたっぷりお届けします。
仏前式を叶えるための「い・ろ・は」
【会場】仏前式はどこで挙げられるの?
仏前式はその名の通り、お寺のご本尊様の前で、その中の最高位の僧侶(住職)である“司婚者(しこんしゃ*宗派によっては式師などの場合も)”によって執り行われる挙式です。縁があったり、なじみのあるお寺で行う人も多いようですが、仏前式を受け入れているお寺なら、基本的には宗派が異なっていても実施は可能。
「宗派がわからなかったり、両家が別々の宗派でも問題ありません。お寺の雰囲気や空間が好きという理由で決めることももちろんOKです。」(お寺婚ウエディングプランナー藤村笑子さん※以下=藤村さん)
手配方法もさまざま
仏前式に対応できるお寺は問い合わせが必要ですが、ホームページなどで確認できる場合もあります。最近のお寺はイベントを行うなど、一般の人にも開かれている所が多いので安心して問い合わせてみましょう。
また、自宅やホテル、会場などに出向いてもらい、仏前式をセットして行うこともできます。いずれの場合も、フリープランナーさんや和婚を取り扱うプランニング会社に依頼、手配してもらうことも可能です。(藤村さん)
【挙式の流れ】仏前式で行われる儀式は?
仏前式は仏様や両家のご先祖様に、そして自分たち自身にも、ふたりの“巡り合わせ”を感謝する式。来世の縁までを誓います。基本的な流れは上記の通りですが、宗派やお寺によっても異なります。中でも仏前式特有のものが「念珠授与」や「お焼香」、「法話」。
例えば「念珠授与」は数珠の玉をお互いの心に見立て、心の結び付きを表したものといったように、儀式の一つ一つには意味があります。
また、「法話」では司婚者が仏教の教えを基にしつつ、今後のふたりの人生の指針となるようなありがたいお話を聞くことができます。一組一組それぞれへの言葉をわかりやすく伝えてもらえるので、心に残ったという方も多いようです。
「宗派によりカラーはありますが、仏前式の流れは他のスタイルより自由であることも特徴。例えば結婚指輪の交換を加えるなどアレンジすることも可能です。ちなみに、和装ではなく洋装での挙式も行えます。」(藤本さん)
シンプルで実はなじみ深さも
仏教の教えは、何にも捉われないシンプルな心ですべての“もの”や“こと”に感謝するということ。私たち日本人にもなじみ深いものですし、みんなで手を合わせたり、お経を唱えたりといったシーンは心洗われるような時間に。
きちんとした儀式の中にも、自由さや和やかさがある仏前式は、おふたりだけでなく参列される方の心に響く挙式スタイルといえます。(藤村さん)
【披露宴の会場】挙式後の披露宴はどこで行うの?
寺院については、挙式を執り行うお寺によって法要などで利用するスペースで披露宴ができる所もあります。この場合は、仕出しの会席料理を手配してもらうことに。親族中心のお食事会のようなケースでは、こういった寺院内の会場を利用するのもよいでしょう。
「ちなみに、お寺では披露宴会場はもちろん、挙式をする本堂なども比較的自由に装花をはじめとする装飾ができますし、ケーキ入刀などの洋風の演出も行えます。また友人なども招き、にぎやかな披露宴を行いたい場合は、お寺以外のホテルや結婚式会場で別途手配するのがおすすめです。」(藤村さん)
手配は都合や好みなどに合わせて
披露宴会場の手配は、お寺や結婚式会場など別々に直接手配することもできますし、挙式と合わせてトータルでフリープランナーさんやプランニング会社に依頼をすることも可能です。(藤村さん)
それではここからは、実際に仏前式で挙式をした3組のカップル実例を見ていきましょう。式のタイプや会場、仏前式を選んだ理由や準備方法、式後の感想などぜひ参考に。
[実例1]お寺の家系で慣れ親しんだ教えの中で誓う
【暁仁さん、飛鳥さんカップル結婚式データ】
挙式日:2021年9月5日
挙式・披露宴:グランドニッコー東京ベイ 舞浜
ゲスト顔触れ・人数:
[挙式]親族20名
[披露宴]友人・知人30名、親族20名
準備期間:9カ月
【挙式】繋がりを実感できる、オリジナルな仏前式をホテルで
【仏前式を選んだ理由は?】
「祖父が僧侶で父は仏教学者ということもあり、幼い頃から仏教の教えに親しんできました。そして、心の結び付き、お互いへの尊敬、ご縁への感謝、私たちが大切にしたいことを叶えるのが仏前式だというのも決め手になりました。」
【手配方法は?】
「もともとホテルでの披露宴を希望していたので、ブライダルフェア参加時に館内で仏前式ができる会場を検討。挙式は父母が仏前式を行ったお寺に確認、ホテルに出向いていただくようにお願いし、式4カ月前と式当日に打ち合わせをしました。披露宴会場とのやりとりや当日の段取りについては、私が間に入る形で両者に共有しました。」(ともに飛鳥さん)
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写真一:「司婚の儀」(飛鳥さんカップルの曹洞宗の仏前式では「誓約文奉読」)では和紙にふたりで筆書きを/写真二:清めの意味も持つ「お焼香」/写真三:「念珠授与」で授かった数珠を手に/写真四:式次第
仏前式を選んで……
印象に残っているのは仏前式ならではの儀式。人との繋がりを象徴する「念珠授与」では、授かった数珠を手にし、夫婦としての実感が高まりました。
また、「誓約文奉読(司婚の儀)」は自分たちで宣誓文を事前に筆書き、式中に読み上げ母印を。緊張感があり、新郎や親族にとっても新鮮だったよう。他の挙式とは一味違う、「自分たちだけの式」という感慨を噛み締めた一瞬一瞬でした。そんなところも仏前式の魅力だと感じています。
【披露宴】華やかな空間でみんなが楽しく主役になれるパーティを
「挙式は親族への感謝の場とした一方、披露宴は友人たちへの感謝を伝える時間に。シャンデリアや3D映像が彩るホテルらしい華やかな空間の中で、自分たちだけでなく、ゲストにも自分ごととして楽しんでもらいたいという思いがあり、『narrative(自分が語り手になる物語)』をコンセプトにしました。
また一人一人の雰囲気に合わせたエスコートキー、キャンバスへのペイント……、あまり負担をかけずに参加してもらえるようなアイテムや演出を用意しました。」(飛鳥さん)
紡いだ「縁」を実感できる時間に
私たちの結婚式がコロナ下で唯一のイベントだったというゲストも多く、ずっと泣いている人も。結婚式を挙げることで、改めて「縁」の素晴らしさを感じました。
ホテル内の神殿で仏前式を行った飛鳥さん。検討した他会場でも、仏前式の受け入れがOKだった所が意外に多かったそうです。もし仏前式をホテルや結婚式会場で行うことを考えている場合は、会場決定前に確認しておくと安心ですね。
また、もともと仏教に縁がありつつも、それだけでなく、仏教の教え、そして仏前式の意味合いそのものに共感し、執り行ったというふたり。あらゆる「縁」に感謝する仏前式の教えを素敵だと思う人は、多いのではないでしょうか?挙式を選ぶ際には、スタイルだけでなく、本質的な儀式の意味にも目を向けることで、より深い誓いを立てることができそうですね。
[実例2]家族に縁のある仏前で、しっかりと感謝を伝える式に
【彰さん、桜さんカップル結婚式データ】
挙式日:2021年4月10日
挙式:真宗大谷派東本願寺大谷祖廟(おおたにそびょう)
披露宴1部:料亭左阿彌(さあみ)
披露宴2部:ホテルグランヴィア京都
ゲスト顔触れ・人数:
[挙式]親族11名
[披露宴1部]親族11名
[披露宴2部]友人30名
準備期間:6カ月
【挙式】花嫁家の宗派の寺院で。司婚者の言葉に感激、心からの感謝と誓い
【仏前式を選んだ理由は?】
「父の実家が寺院であり、私も幼稚園から浄土真宗系の学校に通っていて、仏教の教えや文化は身近にありました。ただ仏前式で挙げたいという強い思いはなかったものの、神前式やキリスト教式を行うことには違和感がありました。決め手となったのは、父母のすすめ。気持ちをくんで仏前式で挙式をすることが、親への感謝の形になると思いました。」
【手配方法は?】
「実家寺院の宗派の本山での挙式を叶えたく、直接問い合わせをしました。打ち合わせは事前に1回、当日に1回の計2回。基本は自分で段取りましたが、ヘアメイクさんを依頼した手配会社の方が介添えとして付き添ってくださったので、当日は安心して過ごせました。」(ともに桜さん)
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写真一、二:司婚者からのお酒を新郎新婦で酌み交わす「誓杯」。続いて「親族固めの杯」を行うことも/写真三:「お焼香」/写真四:和やかな雰囲気の式。「司婚の儀」では思わず笑みも
仏前式を選んで……
仏前式はメジャーではないせいか、型にはまった印象ではなく、想像以上に和やかでした。というのも「法話」がとても素敵だったから。
「相手に向き合うときは片目で向き合いましょう。もう一方の目は常に自分に向けて」など、仏教をベースにしつつもかみ砕いたお話が、司婚者さんの優しい語り口も相まって心に染み入りました。他にも「親族固めの杯」など、両家の繋がりを意図した儀式は、形式的というよりも温かい印象でした。
【披露宴】ゲストで会場を分けて、二部制で決意と感謝の気持ちを伝えて
「挙式に参列した親族とそのまま料亭へ移動し、両家水入らずの食事会を行いました。特別な演出は用意しませんでしたが、ふたりの言葉で結婚への決意を述べました。私自身は父と母から贈られた振り袖を最後に着用。両家みんなで和装姿に揃えられたのもいい思い出です。
2部は友人を招いた1.5次会感覚のパーティ。みんなへ直接気持ちを伝えたくて、その時だけ両家母にも参加してもらい、私たち自ら迎賓を行いました。」(桜さん)
ふたりからのおもてなし演出も
ゲストに負担をかけずに自分たちでできることを探した結果、ふたりとも経験があったピアノ連弾を行うことに。「こんなおもてなし見たことない!」とおもしろがってもらえたのがうれしかったです。
挙式は行わず、写真だけ残せばいいかなと思ったこともあったという桜さん。しかし、「それでは自分たちだけが楽しいで終わってしまう。やはりきちんと家族やお世話になった人に感謝を伝える機会を用意したい」と考え、仏前式と2回に分けた披露宴を準備したそう。そういった意味でも、両家の繋がりを感じられるこの式スタイルはふたりにぴったり。
素晴らしかったと語ってくれた「法話」。司婚者による法話は式ごとのオリジナルであり、仏教の教えをふたりに贈る人生の知恵としてわかりやすく話してくださるありがたいもの。このような機会は他のスタイルではなかなか得難いもので、これもまた仏前式の魅力の一つですね。
[実例3]実はアレンジ自由な仏前式。その魅力を大切な人たちに伝える式に
【満瑛さん、亜須美さんカップル結婚式データ】
挙式日:2022年5月14日
挙式:浄元寺
披露宴:ホテルグランヒルズ静岡
ゲスト顔触れ・人数:
[挙式]友人・知人70名、親族20名、仕事関係10名
[披露宴]友人・知人20名、親族20名、仕事関係160名
準備期間:おおよそ1年
【挙式】基本の流れに、ふたりらしさ溢れるオリジナルアレンジも
【仏前式を選んだ理由は?】
「新郎は僧侶で、仏教を親しみやすいものとして認知してもらう活動もしています。『仏教の魅力が伝わるような仏前式をしたい』。彼の思いに共感し、選択しました。」
【手配方法は?】
「挙式の手配は新郎自身が段取りましたが、衣裳や着付けなどは、仏前式に力を入れたいという衣裳店さんとご縁があり、お願いしました。また、披露宴会場となるホテルへの移動バスの手配などは会場に依頼。式次第やお寺のお守りなど、ゲストの記念となるアイテムを用意したのもこだわりです。」(ともに亜須美さん)
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写真一:オリジナルで取り入れた「散華の儀」。花びらを模した紙片を僧侶がまき、場を清め、仏様を迎え入れた/写真二:「念珠授与」(亜須美さんカップルの曹洞宗での仏前式では式師から授かる「寿珠授与」)/写真三:散華の儀で使用した紙片はかわいいイラスト入り/写真四:入場や読経などでは太鼓の力強い音色を取り入れるアレンジを/写真五:ゲストには般若心経入りのお守りも
仏前式を選んで……
当日は、一つ一つの儀式に意味があることに感動しました。例えば「散華の儀」は花びらをまいて場を清め、仏様を迎えるというもの。かわいいイラストが描かれたオリジナルの紙片が舞い散る様子は、とても華やかでした。
特に心に響いたのは、お坊さんたちとゲストによる読経。太鼓で取ったアップテンポなリズムと読経の声が重なり合う様子は、とても神秘的でそのかっこよさに驚きました。
【披露宴】多数招いたゲストとの触れ合いを重視。ゆったりと過ごせる時に
「友人や知人の他、全国各地からお坊さんを招き、約200名と大人数でした。集まってくれた皆さんとできるだけ触れ合いたくて、プログラムは詰め込みすぎないようにし、写真を撮影したり話をしたりする時間を大切にしました。
演出では、シンガーソングライターでもあるお坊さんの歌の映像上映なども。会場を満たす、ゲストからの温かい祝福も心に残っています。」(亜須美さん)
装花も衣裳も仏前式仕様で
私の希望で会場を華やかな雰囲気にしたくて、ビビッドカラーの装花をボリュームたっぷりにあしらったのもポイントです。花に負けないような色鮮やかな色打ち掛けやカラードレスも着られて、大満足でした。
ご先祖様に結婚を報告する「仏前式」。お経や仏像、建築……仏教はその教えにとどまらず、長い歴史の中で培われた文化にも魅力があります。自身が僧侶というだけでなく、イラスト入りの御朱印を手掛けるなどデザイナーとしても活躍する新郎ならではの、仏教の興味深さ、かっこよさを存分に取り入れた挙式を実現。式を担ったお坊さんをはじめ、皆さんが和やかな表情で臨まれていたのがとても印象的でした。
仏前式は儀式一つ一つの意味もありますが、思わず心を動かされるようなお経やお坊さんの所作の美しさなど。そんな面にも注目したいものです。
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From 編集部
思った以上に自由で和やか、そしてご縁へ思いをはせられる仏前式
私たちの日々の暮らしにもその教えが息づく仏教。だからこそ、仏前式における意味合いも、皆さんが結婚式を挙げる思いにフィットするのではないかと思います。基本的な知識と実例を通して、そんな仏前式の魅力を感じていただけたのではないでしょうか。「仏前式、いいかも!」、そんな感想を持っていただけたら幸いです。ぜひご縁を結ぶ、仏前式を叶えるために動いてみませんか?
藤村笑子 お寺婚ウエディングプランナー
事務・接客・アロマデザインなどの経験を積む。年齢、性別、国籍、結婚してからの経過年数などを超え、仏前式の素晴らしさを広めたいとお寺婚ウエディングプランナーとして、フリーで活動を開始。後に曽祖父が住職であったことを知る。現在「お寺で自由度の高い挙式を叶える」ために、主に山口県周南市近郊を中心として活動中。
取材・文/小松ななえ D/mashroom design 構成/松隈草子(編集部)
※掲載されている情報は2022年8月時点のものです
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