家族のひと言にうるうる、ホロリ…。先輩花嫁の結婚式前
あと半年、あと1カ月、いよいよ明日……と結婚式に向かってカウントダウンする準備期間は、家族の胸の内にも「伝えなくては」の想いが湧いてくるよう。花嫁たちは、意外なひと言、本音のひと言、すっかり忘れていた思い出のひと言に触れて、うるうる、ホロリ。なんだかほっこりして元気をもらえる、7家族の話です。
「今日の酒は最高にうまいなぁ」
父/式前夜に家族揃っての居酒屋で
十勝から車で3時間、結婚式を執り行う札幌に出てきた家族たちと合流。すでに新生活を始めていた新婦にとっては、夏の帰省以来、3カ月ぶりの再会だった。式を明日に控え、居酒屋で夕食を取ることに──。1つテーブルを囲んで5人家族が「乾杯!」とビアグラスを鳴らすと、父は嬉しそうにニッコリ、「今日の酒は最高にうまいなぁ」と。新婦は胸がいっぱいになった。
「家族揃っての外食は珍しく、弟や妹も大人になってからは家でもみんなで夕食を囲む日はほとんどありませんでした。私たちきょうだいが、親に対してドライだった部分もあると思います。ビール好きな父は、早い時間に母と晩酌をし、子どもたちがそれぞれに食事をする頃には自分の部屋へ──。そんな感じだったので、勢揃いした食卓が本当に嬉しかったんだと思います。私自身、久しぶりに家族に会えた安心感と嬉しさとせつなさがない交ぜになっていたところに、申し訳なかったな……って気持ちも湧いて。思わずグッときてしまいました」(新婦・S.Aさん)
「明日の今頃は、式も終えてホッとしている頃だわ」
母/式前日に訪問した娘の新居にて
結婚式前日の午後2時頃、「少し行ってもいい?」と母から連絡が。新居に引っ越して半年、実家からはたった1駅だけど、親が来ることはあまりなかった。仕事帰りに立ち寄った母は、「やり残したことはない?」「神前式の立ち居振る舞いは大丈夫なの?」「着物の結いひもはこれにしたんだ」とひと通りチェック。最後に「明日の今頃は、式も終えてホッとしている頃だわ」と、ひと言。自分の結婚式は、母にとっても一大イベントであることに初めて気付いた。
「母は昔から心配性。計画性なく好奇心旺盛に何でもチャレンジする私を、危なっかしく思っていたのかもしれません。“あなた大丈夫?”が口癖で、結婚式の準備も一番に相談に乗ってくれていました。前日にお茶を飲みつつ話しながら、いろいろ期待してくれているんだなぁと感じて……。式を終え、慣れない留め袖をようやくほどいてホッとした母の姿を思い浮かべたら、込み上げてくるものがありました」(新婦・吉野悠花さん)
写真1枚目)家族にとって初めての結婚式。母は親族の席を回ったり、プロフィール映像を懐かしそうに見たり、手紙に涙したり。「結婚式を楽しんでくれたと思います」
「名字が変わるから、ちゃんと書き換えなさい」
母/婚姻届提出前のあいさつに来たふたりに通帳を渡して
新年のあいさつを兼ねて、婚姻届提出前に彼と実家へ。すると「私たちからのお祝い。名字が変わるから、ちゃんと書き換えなさい」と言って、母が通帳を渡してくれた。お年玉や入学祝い、入院したときに頂いた快気祝いなどを、ずっと積み立てていたという。そんなお金は親が使ってしまっているものと思い込んでいた新婦は、ビックリして、グッときて、でも口から出た言葉は「ちゃんととってあったんだー(笑)」。
「新居に帰って、あらためて通帳を開いたら涙が溢れてきました。私が生まれた月に作られた通帳には、毎月少しずつの積み立てと、ときどきの定額貯金。さらに“お見舞い・会社○○さん”“お年玉・おばあちゃん”“入学祝い・○○さん”と、鉛筆でていねいに記録を残していて。実は2歳前に白血病がわかり、3、4歳まで入退院を繰り返していたので、きっと治療費も膨大だったはず……。ありがたい気持ちでいっぱいになり、海外ウエディングの資金にさせてもらいました」(新婦・麻夢さん)
写真1枚目)入院先の無菌室のベッドで、母に遊んでもらっている新婦
写真2枚目)身内だけのハワイ婚。ベールダウンのシーンに新郎号泣、父はガチガチに緊張し、その様子を感じた母娘は思わずクスッとなったそう
「お母さんの若い頃にそっくりで、おばあちゃん涙出てきちゃった……」
祖母/新婦が花嫁衣裳を試着した写真を見て
新郎と衣裳選びをし、色打ち掛けは3着に絞ったものの、決めきれず。着物が好きな祖母に相談をした。写真をメールで送ってすぐ電話。「どれがいい?」と聞くと、「絶対に赤がいいよ。お母さんもそうだったし……お母さんの若い頃にそっくりで、おばあちゃん涙出てきちゃった……」と電話口からすすり泣く声が──。
「お茶もお花も習っている、80すぎのおばあちゃんです。実家から1時間ぐらいのところだったので、小さい頃は月に1回は遊びに行っていました。とっても厳しくて、“姿勢が悪い!”と叱られて、物差しを背中に入れられて(笑)。電話の向こうの祖母の嬉し涙にもらい泣きしたものの、 “えっ!?”って気持ちも。だってお母さんに似てるなんて……。後日、祖母に母の若い頃の写真を見せてもらったんです。そしたら“全然似てないね”ってなって(笑)。“お母さんの方がきれいだわ”ですって!」(新婦・ゆいさん)
写真1枚目)前列に座っているのが祖父母。当日はあまり話せなかったが、後から映像や写真を見て「きれいだね」と喜んでくれた
写真2枚目)祖母が「似ている」「いや似ていない」と揺れた母と記念撮影(そっくりです!)
「いつも、お母さんの笑顔に助けられているんだ」
父/新婦と焼き肉を食べつつ
「今思うと、なぜ父とふたりきりで焼き肉に行ったのか不思議だけれど……」と、挙式半年前を振り返る新婦。向かい合って肉を焼きつつ、ふと結婚生活の話題になると、父から意外な言葉が──。「お父さんは、仕事でつらことがあっても、お母さんの笑顔を見たら忘れちゃう。いつも、お母さんの笑顔に助けられているんだ。だから、家庭では笑顔を絶やさないようにしなさい」と。父が母への思いを口にするのは初めてで、なんだか嬉しくて、泣きそうに。
「母は明るくていい人だけど、でもイラつくほどの天然なんです(笑)。私はあんな天然にはなりたくないけれど、笑顔一つで夫を支えるってすごいなぁと思いました。両親はとっても仲がいいですし、理想の夫婦ですね」(千葉逸美さん)
写真1枚目)いつも陽気な母をセンターにして、撮った写真。「母の言い間違い聞き間違いは、日常茶飯事。ワカメの塩抜き忘れのみそ汁が出てきたり、振り回されっ放し」と新婦
写真2枚目)式当日、リハーサルでうっかりベールアップをしてしまった母のおかげで、緊張がほどけて和やかになった。本番は大成功。「結婚式を挙げてくれてありがとう」と母
「はがぐらぐらしているのをみたかったので、はやくかえってきました」
父/幼稚園の新婦とつづった交換日記の中で
結婚式から1カ月半ほど前、プロフィール映像の写真を探すために実家へ。納戸から古いアルバムを出していると、1冊のノートを発見! なんと幼稚園の新婦と父と母が、1日1ページずつ書いた交換日記だった。新婦が「はがぐらぐらしてる。ぴあののれんしゅうをはやくおわったからすぐにおふろにはいった」と書いた翌日には、父が「はがぐらぐらしてるのをみたかったので、はやくかえってきました。ぬけたはは、やねのうえになげるとげんきにあたらしいはがはえてくるそうです」と、すべて平仮名でつづってあった。「親の愛情ってすごい……」と涙が溢れ、そっと納戸に戻した。
「交換日記をしていたなんて、すっかり忘れていましたが、手にした途端「わぁ」とよみがえって。読書家で真面目な父が、娘が字を覚えたり、文章を書く練習になると思って始めたのかもしれません。普段から口数が少ないのですが、中学、高校の部活の応援には必ず来てくれて、塾の送り迎えもしてくれて。車内でもひと言も話さないけれど、Jポップの応援ソングがいつもかかっていました(笑)」(sanaさん)
写真1枚目)交換日記は、大きな升目の学習ノート
写真2枚目)キリリとした父と、笑顔の母や妹と一緒に。交換日記には「よるごはんのコロッケをつくったよ。3にん(母と新婦と妹)でおりょうりするのはとてもたのしい」と母からのページも
「さっ、最後の4人のご飯、食べよかー!」
母/式前夜の夕食、家族4人で食卓を囲んで
自宅のキッチンにはダイニングテーブルがあり、毎晩7時ごろになると家族が集まって夕食が始まる。挙式前夜、新婦は親への手紙を書いた後で、涙目で、なんだかこわばっているよう。そんな様子を察した母が「さっ、最後の4人のご飯、食べよかー!」と明るく掛け声を掛けてくれたけれど、かえって涙がボロボロ、ボロボロ。「大好きなこの空間で、家族と食べる食事は最後なんだ……」と泣けてきた。そんな新婦には触れないよう、家族3人は明るく話をしていた。
「朝食はバラバラだけど、夕食は父母と3歳下の弟と一緒が、わが家の景色でした。テレビもつけずに、陽気な母と私がおしゃべりを弾ませて、寡黙な父と大人びた弟がそこにいる感じ。母とは、まるで親友のような関係でした。だから私の顔色一つで、いつも察してくれて。大好きなメニューはハンバーグ。母の背中を見ていたので、銀行勤めだった母にならって、私も銀行に就職。料理も好きなんですよ」(岡川由紀さん)
写真1枚目)家族にとって初めての一大イベントだった、結婚式。披露宴では、母をエスコート役に中座をした
from編集部『結婚式前の家族時間』
「お父さんとお母さんはどうして結婚したの?」なんて、普段ははぐらかされてしまうようなことも、結婚式前なら聞けるかも。いつもはしない外食を父とふたりきりでするなど、家族との貴重な時間を楽しんでくださいね。
構成・文/千谷文子 イラスト/石川恭子
*掲載されている情報は2018年5月時点のものです。
*記事内のデータならびにコメントは、2018年4月に「ゼクシィ花嫁1000人委員会」のメンバー84人が回答したアンケートによるものです。
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