【徹底解説】結婚したら変わること|税金・制度から法律婚と事実婚の違いまで
「好きな人と一緒に暮らしたい!」という理由で結婚を決める人は多いと思いますが、恋人同士の同棲とは何がどう違うのか、じっくり考えてみたことはありますか?戸籍に夫婦であることが記載されるだけでなく、精神的・経済的に安定したり、税金や社会保険に関する優遇措置があったりと、さまざまな変化がありそうです。今回は事実婚との違いも含めて、「結婚したら変わること」に焦点を当てて解説します。
「好きな人と一緒に暮らしたい!」という理由で結婚を決める人は多いと思いますが、恋人同士の同棲とは何がどう違うのか、じっくり考えてみたことはありますか?戸籍に夫婦であることが記載されるだけでなく、精神的・経済的に安定したり、税金や社会保険に関する優遇措置があったりと、さまざまな変化がありそうです。今回は事実婚との違いも含めて、「結婚したら変わること」に焦点を当てて解説します。
湯原玲奈さん
行政書士/マリッジデザイン株式会社 代表取締役
外国人の在留ビザ相談室、起業に伴う各種許認可申請業務のほか、大田区の法務コンシェルジュ・サービスを手掛ける。最高の夫婦をデザインする「マリッジノート(R)」や、20~30代女性向けの「ライフデザイン・マネジメント研修」などのオリジナルメソッドも提供。著書に『一生幸せなふたりでいるための10のワーク[マリッジノート(R)]』(朝日新聞出版)
結婚すると親の戸籍を離れ、夫婦としての新しい戸籍が作成されます。日本の法律では、婚姻届の提出時に夫婦どちらかの姓を選ばなくてはならず、それに伴い、姓が変わる側はマイナンバーカードや運転免許証、銀行口座の名義変更などが必要になります。
今まで1人暮らしをしていた人や、家族と生活していた人は、結婚を機に「夫婦での生活」に変わります。ふたりで協力し合って家事や育児をこなしたり、親戚付き合いをしたり、マイホーム計画など将来を見据えた人生設計も始まります。
夫婦単位で行動する機会が増え、周囲からお互いをフォーマルなパートナー(夫婦)として見られるようになるのも、恋人時代からの変化です。
また、結婚後はその時々の状況によって呼び名が変わることがあります。例えば病院の待合室で「〇〇さん」と結婚後の姓で呼ばれたり、子どもができると「〇〇ちゃんのママ」と言われることも。お互いを「パパ・ママ」と呼び合うようになる夫婦も少なくありません。
結婚すると税制面で優遇されるのが大きなメリットです。おもな控除は以下の通り。
ちなみに結婚後の年収が58万円(給与収入のみの場合は123万円)を超えると、配偶者控除を受けることができなくなります(※)。配偶者控除・扶養控除とも、適用されるにはいくつか条件があるので、職場や役所に確認しましょう。
※2025年12月1日より
会社員など厚生年金に加入している配偶者の扶養に入ると、病気やけがをした際に3割負担で診療を受けることができます。国民年金については「第3号被保険者」として、自分で年金保険料を支払う必要がなくなります(将来の年金は受け取れます)。
なお、配偶者が自営業だったり、自分自身が失業給付受給中の場合は、パートナーの扶養に入れないため、自分で手続きをして国民健康保険と国民年金の保険料を納める必要があります。
法律婚の場合は、パートナーに万が一のことが起こったら、残された配偶者や子どもが生活に困ることのないよう、遺族年金を受け取ることができます。事実婚の場合も「生計を共にし、事実婚関係であった」ということが証明できれば、遺族年金の受給資格が得られます。
結婚すると相互扶助の義務が生まれるため、「結婚後の財産は夫婦で協力して築いたもの」と見なされます。具体的には不動産や貯蓄など。専業主婦(主夫)の場合でも、相手が得た収入は夫婦の共有財産という考え方をします。
法律婚では、夫婦のどちらかが亡くなった場合、配偶者の法定相続人(遺留分の権利者)として遺産を受け取ることができます。
結婚したら税金は安くなるの?
先述の通り、「配偶者控除」が適用されると、一定の条件の下、納税者本人の所得控除が受けられるので、家計の負担が減ることになります。
共働きだと控除はどうなる?
共働きで配偶者控除が受けられない場合、配偶者の所得金額に応じて「配偶者特別控除」が適用されます。ただし、配偶者の所得が133万円(給与収入のみの場合は201万円)を超えてしまうと、控除が受けられなくなります。
親族の定義は民法で定められていて、結婚によって「3親等以内の姻族」も親族とされています。配偶者の家族については以下がその範囲になります。
<1親等の姻族>
配偶者の父・母
<2親等の姻族>
配偶者の祖父・祖母
配偶者のきょうだい
<3親等の姻族>
配偶者の曽祖父・曾祖母
配偶者のおじ・おば
配偶者のおい・めい
民法752条で「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。とはいえ実際には、やむを得ない事情で別居婚を余儀なくされたり、お互いに独立して生計を営んでいる夫婦もいます。刑法ではないので義務を怠ったところで罰せられることはありませんが、夫婦仲がこじれて離婚訴訟に発展した場合などには、その条文が判断材料になることも。
離婚時の財産分与の割合は、特別な事情がない限り、原則「2分の1ずつ」と民法で決められています。これには婚姻中に築いた財産だけでなく、離婚することによって一方が生活に困窮しそうな場合(収入がない、けがや病気をしているなど)に求めることのできる「扶養的財産分与」というものもあります。
また、夫婦の一方に不貞行為や不法行為があり、それが原因で離婚に至った場合は慰謝料を請求することができます。
「好きな人と家族になれた!」という喜びは、恋人時代とはまた違った気持ち。楽しいことや大変なこと、さまざまな出来事を分かち合いながら、夫婦であることを再認識し、安心感が生まれます。お互いの家族同士がつながったり、周囲から夫婦と認められることも「家族になった」と実感できる瞬間です。
独身時代は自分のことだけ考えていたらよかったけれど、結婚したらお互いへの責任感が生まれます。日々の生活や貯蓄、将来設計など、ふたりの考え方も「家族としてどうするか」にシフトしていきます。「病める時も健やかなる時も…」という言葉通り、ふたりで支え合い、乗り越えていくのが結婚生活だと心得ておきましょう。
結婚するとふたりで過ごす時間が増えるだけでなく、家事や子育てに時間を割かれたり、お互いの家族の行事に参加したりする機会が増えたりします。そうしているうちに「自由な時間が減った」と感じる人が出てくるかもしれません。お金の使い方も含め、お互い不満を抱える前によく話し合うことが必要です。
法律婚と事実婚にはさまざまな違いがあります。代表的なものをまとめると以下の通りです。
| 法律婚 | 事実婚 | |
|---|---|---|
| [1]戸籍の有無 | 新しい戸籍 | 独身のまま |
| [2]税金や保険の違い | 優遇あり | 制限あり |
| [3]相続権の有無 | あり | なし |
| [4]子どもの親権 | 自動的に父・母になる | 自動的に母親の単独親権となる |
次から1つずつ解説します。
現在の日本の法律では、婚姻届を提出し、男女がどちらか一方の姓を選択することで夫婦の新しい戸籍が作られます。
事実婚では戸籍上手続きの必要はなく、お互いが独身のままの状態です。
事実婚を証明することで受けられる社会保険制度はいくつかあります。いずれも法律婚と同様、年収などの条件を満たせば、「社会保険(健康保険)の被扶養者」や「国民年金の第3号被保険者」にもなれます。
一方で、法律上の配偶者とは認められていないので、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を受けることはできません。相続税や贈与税といった税制上の控除についても対象外となります。
相続権を持つのは配偶者や血族である「法定相続人のみ」と民法で定められています。
事実婚の場合は親族ではないため基本的に相続権が認められていませんが、「公正証書遺言」などを残しておけば、相続が可能になることもあります。
法律婚の場合は出生届を提出すると、ふたりが自動的に子どもの父・母になりますが、事実婚の場合、共同親権は認められず、子どもの親権は母親が持つことになります。また、事実婚のパートナーが父親となるには認知の手続きを取る必要があります。
結婚に対する考え方は人によって異なります。法律に守られた婚姻を選ぶ人が圧倒的多数とはいえ、中には「自分自身のアイデンティティーを大事にしたい」「大事にしてきた姓を変えたくない」など、さまざまな理由で事実婚を選ぶ人も。それぞれのメリット・デメリットを熟考した上で、自分たちのスタイルや考え方に合った結婚の形を選んでください。
取材・文/南 慈子 イラスト/田中麻里子 構成/小田真穂(編集部)
※掲載されている情報は2025年11月時点のものです
※各種制度に関しては、将来改正・変更される場合があります