目が見えない人も車いすの人も共に楽しむ“ユニバーサル結婚式”のすすめ
ゲストの中に車いすユーザーや耳が聞こえない人・聞こえにくい人、目が見えない人・見えにくい人はいませんか? つえを突いた高齢の祖父母はどうでしょう? セレモニーも演出も料理も、“ゲスト全員が同時に”“一緒に”楽しめる結婚式にするにはどうしたらよいのか。ウエディングプランナーの木許郁子さんにナビゲートしてもらいました。
つえや車いすユーザーがいたら“1日1組”の会場がおすすめ
段差・スペース・テーブル高をチェック!
結婚式は館内移動も多いため、つえだけを使う人にも「車いすをご用意しますか」と相談してみよう。車いす不要の人も「リハビリのため階段を使いたい」「サポートがないと階段移動はつらい」などさまざまなので、つえユーザーがいることはスタッフと共有しスムーズな移動ができるよう態勢を整えたい。移動をせかさないためにも、“1日1組限定”の貸し切り会場が安心。
【段差をチェック】
つえユーザーも車いすユーザーも、段差は避けたい難所。「大階段でフラワーシャワーを♪」というみんなでつくり上げる華やかなセレモニーも、車いすユーザーだけ参加できない、もしくは参加を遠慮してしまう場合も。階段演出をしたいなら、エレベーターで階下に降りて参加できるか要チェック。もちろんバリアフリーの会場であることがベストだけれど、館内に段差があるならスタッフに車いすを持ち上げてもらって移動できるよう依頼を。
【スペースをチェック】
チャペルの両サイドの通路、テーブルに着いたときの両サイドのゆとりなど、車いすがスムーズに移動できるスペースを確保できるかチェック。
【テーブル高をチェック】
車いすのアームがテーブルに当たり、体を寄せることができずに食べにくい場合も。テーブル高の調整も大事。
【その他もチェック】
多目的トイレはあるか、エレベーター内のボタンは車いすユーザーが使いやすい位置に付いているかなども確認したい。
車いすユーザーのテーブルを定員通りにすると、全員が窮屈で動きにくくなる。8人掛けのテーブルなら7人掛けにするなどして、ゆとりを持とう。テーブル高は、車いすのアームが天板の下に入るよう調整が必要。またテーブルの脚と車いすがぶつからないよう、テーブルのデザインや席次も気を付けて
こんな準備をしました
短距離はつえ歩行・長距離は車いす利用のゲストがいたので、会場見学をする際に、つえ歩行と車いす利用の両方の動線を確認しました。(ゆりさん)
会場内の段差がある場所に、スロープを用意するようお願いしました。(岡野 綾さん)
チャペルが2階、披露宴会場が1階で基本的には階段移動でしたが、つえを突く高齢のゲストや妊婦さんには、スタッフ用のエレベーターを使わせていただくことができました。(寺田依李さん)
電動車いすユーザーがいる場合、会場探しはより慎重に
電動タイプの車いすはちょっとの段差でも乗り越えることが難しく、また重量があり男性2人でも持ち上げられないほど。電動車いすユーザーがいる場合は、ユニバーサル結婚式に詳しいプロと一緒に会場探しをするのがおすすめ。
耳が聞こえない人・聞こえにくい人には「見る方法」で情報共有
筆記具、スクリーン、手話通訳などフル活用
耳が聞こえない・聞こえにくいゲストは、「挙式が始まるのでチャペルに移動してください」「新郎新婦が中座します」「ケーキセレモニーをしますので、どうぞ皆さん前へ」などの音声によるアナウンスで行動するのが難しい。よって「見る方法」で情報共有しよう。
【筆記具で情報共有】
スタッフ全員に、筆記具を持って接客をしてもらおう。場所を移動するときや、プログラムが変わるときは、大きなスケッチブックで案内するのもいい。
【スクリーンで情報共有】
披露宴会場では、耳が聞こえない人・聞こえにくい人が見やすい場所にスクリーンを設置。テロップを流して案内する。これは耳が聞こえるゲストにとっても分かりやすいサービスになる。またBGMの歌詞を表示すれば、それぞれのスタイルで音楽を楽しむこともできる。
【手話通訳で情報共有】
手話通訳を手配すれば、スピーチなどの音声もみんなで同時に共有することができる。手話通訳をスクリーンに映し出すのもいい。
集合写真でフォトグラファーが「手でハートを作ってください」と盛り上げても、音声だけの案内では、耳が聞こえない人・聞こえにくい人にはすぐに伝わらないことも。音声と同時に、スケッチブックを掲げて文字でも案内すれば、みんな同時に・一緒に楽しい演出に。耳が聞こえる人にとっても分かりやすい案内になる。
ゲスト一人一人の「困る」を把握しておこう
披露宴中、プログラムが変わる前に照明をチカチカさせることで、耳が聞こえない人・聞こえにくい人に「次に何か始まりますよ」と気付かせることも可能。ただ発達障害などにより、カメラのフラッシュや照明のチカチカが苦手な人もいるので、ゲスト一人一人のことをよく把握しておくことが大事。
目が見えない人・見えにくい人には「言葉」と「触感」で情報共有
司会の案内が手がかりになる
特に目が見えない人・見えにくい人が一人で参列する場合は心細いもの。スタッフや近くのゲストの言葉一つで状況が変わるので、必要に応じて声掛けをしたい。白杖を持った弱視の人がスタスタ歩いていても、真っ白なチャペルの階段は急に見えにくくなることも。状況に応じて見え方が変わることも知っておきたい。
【司会者の実況をより詳しく】
「新婦が取ったケーキは幅10センチ!」「新婦のドレスはアンティーク風の総レースで、カスミソウのブーケがお似合いです」などと司会が詳しく実況することで、目が見えない人・見えにくい人は情報を得る手掛かりに。事前に司会に依頼しておくといい。
【料理を詳しく説明】
シェフの料理説明は、みんなと同時にコースを把握できる。目が見えない人・見えにくい人にサーブするスタッフは、例えば、プレートに複数の料理を盛り付けた前菜などでは「12時にマグロのカルパッチョ、15時にジャガイモのソテー」などと時計で位置説明すると分かりやすい。乾杯酒を注いだら、ゲストの手を添えて「ここです」と案内を。
【席次表やスクリーンの文字は全員が見やすいサイズに】
デザインにこだわりすぎて、座席が分からないようでは意味がない。壮年、老年のゲストが老眼により小さな文字が読み取れないこともしばしば。目が見えにくいゲストもスムーズに席に着けるよう、また映像演出も楽しめるよう、「文字サイズ」に気を付けて。
司会者は実況のプロ。ふたりの衣裳のデザインを案内すれば、席から見えにくかった人にも伝わりやすく喜ばれる
意外と困る、トイレに立つタイミング
知人と参列しているときはいいけれど、目が見えない人・見えにくい人が一人で参列したときはトイレに立つタイミングが分からず、お酒を控えることも。ふたりが中座したタイミングで、「お手洗いは大丈夫ですか?」などとサービススタッフがひと言掛けると、安心して楽しめる。
From 編集部
ゲスト一人一人について会場と情報共有
どんなゲストが参列をするのか、スタッフと事前に共有することが大事。ずっと車いすを利用するのか、つえも併用するのか、耳が聞こえないのは右だけなのか、両方なのか……etc.。当日はふたりが案内することはできないので、スタッフが最良のサービスをしやすいよう準備したい。ただし過剰な気遣いはかえってゲストの負担になることも。イメージできないことがあれば、当事者に聞くのもいい。
木許郁子 ウエディングプランナー
Ars Nova Planning代表取締役。長年、音響や司会として結婚式に携わり、2014年から障害を持つ人のウエディングをサポートするブランドを立ち上げた。サービス介助士の資格を取得し、フリーランスのウエディングプランナーとして活躍中。
構成・文/千谷文子 イラスト/篠塚朋子 取材協力/視覚障がい者ライフサポート機構“viwa”理事長・奈良里紗
※掲載されている情報は2020年1月時点のものです
※記事内のコメントは、2019年11月に「ゼクシィ花嫁1000人委員会」のメンバー74人が回答したアンケートによるものです
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