プロに聞く!結婚式と出産で「もらえるお金」「出ていくお金」
妊娠がわかって結婚が決まったり、結婚することになった途端に妊娠したり、結婚と妊娠がセットになると、気になるのはお金のこと。「お金が心配だから、結婚式はやめようかな」と考える人もいるかもしれません。そこで、ファイナンシャルプランナー(FP)の武田明日香さんに、結婚式と妊娠、出産に関してもらえるお金と出ていくお金について詳しく教えてもらいました。お金の出入りを理解すれば、結婚式も出産も心配なし!
出産には実はそんなにお金がかからない!
妊娠・出産では「もらえるお金」が充実しています
妊娠から出産までは、健康保険組合や地方自治体などからさまざまなお金を受け取ることができます。
【出産育児一時金】
子ども1人につき50万円。健康保険組合加入者または被扶養者のうち、妊娠85日以上で出産あるいは流産した人が受け取れます。一時金は、出産前に病院へ書類を提出すれば、分娩費や入院費、新生児の検査費用など出産にかかった費用を、健康保険組合が病院に直接支払ってくれるため、本人の支払いは50万円を超えた金額のみとなります。出産費用は病院によって違うので、予算も考えて選びましょう。
【妊婦健診費の助成】
妊娠が確定すると市区町村の役所や保健所に行き、母子手帳を発行してもらいます。その際に、基本14回分の妊婦健診受診票を受け取れます。基本的な妊婦健診はこの券を持参すれば支払いをせず受けることができます。
【出産祝い金】
本人や夫の勤務先によっては出産祝い金をくれることがあります。条件などは勤務先に確認を。
【高額療養費】
出産以外に健康保険適用内の治療を受け、1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた人には、超えた額を補てんしてくれる制度。所得により限度額が異なります。
【医療費控除】
1年間の医療費が10万円を超える場合、確定申告すると払い過ぎた税金が戻ります。夫の被扶養者なら、夫の確定申告でも申請可能。医療機関への交通費なども申告できるので領収書は保管を。
妊娠・出産に関連する出費も確認を
「もらえるお金」がいろいろとあるとはいえ、「出ていくお金」もあります。
【妊娠検査の費用】
約1万~2万円。妊娠の有無を確かめるための検査は保険適用されないため、病院窓口で現金での支払いが必要になります。
【妊婦健診費】
妊婦健診受診票をもらうまでの通院や、助成範囲外の検査、エコー写真や動画の費用など、病院窓口での支払いが生じる場合があります。人によって金額はさまざま。
【病院への予約金】
出産を予定している病院によっては、予約金が必要な場合があります。金額は数万円から10万円以上など病院によってバラバラ。安定期の間に払うことが多いです。
【マタニティーやベビー用品の購入】
妊娠中の服や下着、赤ちゃん用の寝具、下着、哺乳瓶などが必要となります。一時的にしか使用しない物はレンタルするなど、賢く出費を。
【里帰り出産の場合の交通費】
里帰り出産をすると、出産時に夫が駆け付けることになります。出産日はギリギリまでわからないので、飛行機などは事前予約できません。自分の交通費に加え、夫が複数回行き来することも考えて見積もって。
【入院や自宅待機で働けなくなったときの生活費】
切迫流産の危険などで、予定よりも早く仕事を休んだり、突然入院生活になったりすることがあります。出産は予期せぬことがあるので、お財布にも心にも余裕を持って。
【FPからのアドバイス】現在の生活費を見直して、ライフプランを作ろう
子どもが生まれると家計への影響があるので、早いうちに見直しをすることをお勧めします。子どもが何歳になると、自分たちは何歳になっているのか、書き出してライフプラン表を作成しましょう。特に、子どもの大学進学時に自分たちが何歳になっているのかを考えておくことが、教育資金と老後資金を考える上で、大切になってきます。
結婚式は自己資金の範囲内なら妊娠中でも問題なし!
<もらえるお金>
結婚式は、一定数のゲストを招くスタイルならご祝儀をもらえます。ゲスト数が60人の場合
【60人×平均ご祝儀額3万円】+
【自己資金(親からの援助も含む)】=結婚式の予算
となります。
自分たちがいくら自己資金を出せるのか、ゲストを何人呼ぶのかを考えて、結婚式の予算額を決めることが大切です。
<出ていくお金>
結婚は式当日だけではなく、準備段階からだんだん出費が増えていきます。こだわればこだわるほどお金がかかっていくので、以下のリストを見ながらお金をかけるものと節約するものを検討してみましょう。
□会場の予約金(10万円前後/本契約1週間以内)
□衣裳の予約金(店によって異なる/衣裳予約時)
□結婚指輪の購入(10万~30万円前後/式の1カ月前までに)
□エステ、ヘアメイクリハーサル、ネイルなど
□招待状の切手代(封書1通とはがき1通×ゲスト数分)
□前撮りの費用
□引出物など提携店以外で購入した商品の支払い
□結婚式費用(予約金を除いた合計額/式1週間前までに)
□主賓へのお礼や遠方ゲストへのお車代(式当日)
【FPからのアドバイス】結婚式をするなら予算をオーバーしないように
結婚式の準備中はいろいろ見ていくと目移りしてしまい、自分たちの予算以上にお金を使ってしまうことがあります。ただ、今後子どもが生まれることがわかっているのなら予算オーバーしないように心掛けましょう。ふたりでお金をかけたいところと、我慢するところを話し合い、メリハリをつけてお金を使うことがポイントです。
出産後も育児休業給付金があれば大きな目減りは防げる!
会社員で産休や育休を取得する場合は、働けない時期の給与所得を補うお金を受け取ることができます。
<もらえるお金>
【出産手当金】
会社員の場合、勤務先の健康保険窓口に産休開始から2年以内に申請すると、[月額給料÷30日×3分の2]×産休日数分の金額を受け取れます。日数には条件によって異なることがあるので問い合わせを。
【育児休業給付金】
1年以上勤務経験があり復職前提の雇用保険加入者が、育休を取ったときにもらえるお金。育休中に以前の給与の50~67%を子どもが1歳になるまで受け取れます。
また、生まれた子どもへの手当や助成は、親の就労にかかわらず全員受け取れます。
【児童手当】
子ども1人につき1万5000円(3歳未満)。3歳~中学終了までは1万円。所得制限を受ける場合は一律月額5000円。
【医療費助成制度】
子どもの医療費の一部または全部を自治体が助成してくれる制度。年齢制限や所得制限があるため、詳細は市区町村窓口へ。
<出ていくお金>
子育てにはさまざまな出費が。以下を参考にしてみて。
□おむつ
□ミルク
□任意の予防接種代
□衣服
□チャイルドシート
□ベビーベッド
□ベビーカー
□抱っこひも
□ベビーラック …etc.
出産後ハネムーンに出掛ける場合は、旅費も必要。2歳未満の幼児は席を予約しなければ大人の1割でOK(国内線は無料)なので検討してみて。
【FPからのアドバイス】退職した人は再就職活動時に失業保険の申請を
出産を機に退職した人で雇用保険に加入していた人は、再就職活動時に失業保険を受け取ることができます。ただ、通常受給資格は離職後1年間のため、受給資格延長の申請をしておかなければいけません。申請は離職日翌日から30日を過ぎてから1カ月以内と短いため、忘れずに管轄のハローワークで手続きを。申請をすると、最長4年まで延長できるので、子どもが大きくなってから再就職活動を始めても受け取れます。
妊娠→結婚式→出産→育休のお金の出入りをシミュレーション!
妊娠6カ月の時に結婚式をして出産、育児休暇を取得したAさんカップルのお金の出入りをシミュレートしてみました。
【Aさんカップルの状況】
・ふたりの貯蓄額 150万円
・妊娠6カ月で挙式、費用は250万円
・ゲストは60人(ご祝儀平均3万円)
・妻は産後6カ月間育児休暇を取得
・妻の標準報酬月額(給与)は20万円
<結婚式までのお金の出入り>
当初の貯蓄額 150万円
妊娠初期の医療費 -5万円
結婚式会場予約金 -10万円
出産病院予約金 -5万円
結婚指輪の購入 -10万円
結婚式の支払い -240万円(予約金10万円差し引き)
ご祝儀の受け取り +180万円(3万円×60人)
結婚祝い金の受け取り +5万円
<出産までのお金の出入り>
出産準備品の購入 -5万円
出産 0円(50万円以内で出産)
出産祝い金の受け取り +10万円
<産休・育休時のお金の出入り>
出産手当金の受け取り
月額20万円÷30日×2/3=4444円/日×産前産後98日=約43万円
育児休業給付金の受け取り
月額20万円×67%=13万4000円/月×6カ月=80万4000円
子連れハネムーンの支払い -30万円
→残ったお金 163万4000円
妊娠から育休期間までトータルで見ると、貯蓄額が大幅に減ることがないことがわかります。
【FPからのアドバイス】余裕を持って準備すれば妊娠中でも結婚式OK
妊娠中でも予算を決めてお金の管理をしっかりすれば、結婚式を挙げても後々お金に困ることはありません。妊娠中に結婚式をすれば、打ち合わせや準備を落ち着いて行えますし、時間とお金に余裕を持つことができます。またうまくやりくりすれば、ご祝儀を貯蓄に回すことも可能です。ただ、ドレスの選択肢が少なくなってしまうことや、母体に何かあったときにはキャンセル料を支払うことがあるかもしれません。ふたりでよく話し合って、お金の使い方を決めましょう。
From 編集部
お金の出入りを把握して賢いプレママ花嫁に!
子どもが生まれる前からお金のことを考えているあなたは既にママの素質十分。ただ先のことを考え過ぎて結婚式を諦めてしまうのは、ちょっともったいないかもしれません。子どもが生まれた後は子ども優先になってしまいそうだなと思う人は、まだ家族がふたりだけの妊娠期に結婚式をすることも考えてみて。
武田明日香さん ファイナンシャルプランナー
株式会社エフピーウーマン所属ファイナンシャルプランナー。JCDA認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。雑誌やテレビ、WEBなど幅広いメディアを通じて、お金とキャリアの両面から女性が豊かな人生を送るための知識を伝えている。
エフピーウーマン http://www.fpwoman.co.jp/
構成・文/稲垣幸子 イラスト/ミヤタチカ
※掲載されている情報は2017年3月時点のものです
※保険や税制、各種制度に関しては将来改正される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体・契約会社によって異なる場合があります
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