乾杯のあいさつは勢いとタイミングが肝心です。会場中がこれから始まる披露宴に期待し、胸を躍らせている瞬間なので、長々と語る必要はありません。
メインはあくまでも「乾杯の音頭を取ること」なので、スピーチ自体は短く簡潔にまとめた方が好印象です。
披露宴の始まりを告げる大事な役目
披露宴の始まりの合図を兼ねた乾杯の発声。主賓に次ぐ立場の人や、盛り上げ上手な友人・同僚などを指名するケースが多いようです。「乾杯!」という掛け声だけではやや味気なく、タイミングが取りづらいので、自己紹介やお祝いの言葉など、簡単なあいさつを添えましょう。
簡潔にまとめるのがポイント
エピソードを挟む場合は
話し終わってから起立の合図を
ふたりへの祝福の言葉からスタート。新郎(または新婦)との間柄などを簡潔に述べる。
文例:
「私、ただ今ご紹介にあずかりました新郎の友人の□□と申します。
はなはだ僭越(せんえつ)ではございますが、ご指名を頂戴しましたので、乾杯の音頭を取らせていただきます」
スピーチを交える場合は、ふたりを持ち上げるようエピソードやはなむけの言葉を。
この部分は必須ではないので、持ち時間などによって省略も可能。
文例:
「○○君(新郎)、△△さん(新婦)、ならびに両家の皆さま、本日は誠におめでとうございます。
新郎の○○君とは中学時代からの長い付き合いで、お互いが生涯の友とも呼べる大切な存在です。本日は、無二の親友の晴れの日を、こうして迎えることができて感無量です」
ゲストに向けて起立を促し、タイミングを計りながら乾杯の言葉で発声を行う。
文例:
「それでは皆さま、乾杯のご唱和をお願いします。
おふたりの前途と、ご両家のますますの繁栄をお祈りしまして、乾杯!」
お祝いの場に
ふさわしい内容であることが大前提
忌み言葉が含まれていないかもチェック
主賓スピーチに続いて、乾杯でも長々とあいさつを聞かされると、さすがに聞く方も疲れてきます。
ここでのあいさつはあくまでも「乾杯の発声を円滑に行うためのつなぎ」と心得ておきましょう。
まさか短いあいさつの中に下ネタや暴露話を絡める人はいないと思いますが、念のために。
ふたりの晴れの門出ですので、余計な受け狙いは考えず、粛々と自分の役割を果たしましょう。
勢いとタイミングが大事なシーンではありますが、あくまでも結婚式であることを忘れずに。
職場や仲間内の打ち上げではないので、丁寧な言葉遣い振る舞いが求められています。
おめでたい結婚式では、縁起が悪い「忌み言葉」を避けるのが常識です。
うっかりスピーチで使わないよう気を付けつつ、原稿を作成しましょう。
【重ね言葉】重ね重ね/重々/次々/たびたび/しばしば/くれぐれも
【再婚を連想】繰り返し/再び/戻る
苦しい、悲しい、忘れる、負ける、衰える、色あせる、病気、亡くなる、涙、泣く、滅びる、しめやかに、悪い
別れる、離れる、終わる、切れる、割れる、破れる、壊れる、捨てる、去る、消える、なくす、流れる、ほどける
名前の読み方や「話してほしくないこと」を本人に確認しておきましょう
新郎新婦の名前を間違えて呼んでしまうと、せっかくの乾杯が台無しに。入念に確認した上で臨みましょう。
中でも名前の読み方については、周囲に聞いて済ませずに必ず本人に確認したいものです。
乾杯あいさつに際し、触れてほしくないことがあれば、事前に聞いておくと安心です。
また所要時間も確認しておけば、あいさつから乾杯の発声に至るまでの構成を考える際に役立ちます。
ゲストの顔触れや、どんな雰囲気の披露宴を目指しているのかを前もって確認し、
場にふさわしいあいさつの言葉や乾杯の発声を考えましょう。
堂々した振る舞いで
「明るく爽やかに」を心掛けましょう
乾杯の発声に求められるものは明るさと簡潔さ。長々と語らず、会場のテンションを高める役割に徹しましょう。
姿勢を正して話しましょう。背筋を伸ばすと堂々と見え、声も出しやすくなります。
全員で行う乾杯なので、新郎新婦やゲスト、親族席など、あらゆる方向を見渡すことが大切です。
明るく爽やかな表情で、テンション高めに乾杯の音頭を取りましょう。
みんなの気持ちを惹き付け、一斉に乾杯へと持ち込むために、大きな声で全員に届くように話しましょう。
できればカンペなしで臨みたいもの。大事なのは勢いとタイミングです。十分に練習して臨みましょう。
新郎新婦との関係性ごとの文例をご紹介!
「○○君とは、3年前から同じ部署で働いておりますが、最近の彼の活躍には目を見張るものがあります。
今年から最年少のグループ長に昇格し、結婚を機にますます頑張ってくれることと期待しております。
それでは皆さま、ご唱和をお願いします。おふたりの末永い幸せとご両家の繁栄をお祈りしまして、乾杯!」
「先ほど、主賓である新郎の上司の●●さまが、職場での活躍ぶりを語ってくださっていましたが、教え子である○○君が学生時代のまま、責任感の強い青年に成長していたことを心より嬉しく思います。
△△さんという良き伴侶を得て、今後のご活躍がますます楽しみです。
それでは恐れ入りますが、皆さまご起立の上、ご唱和をお願いいたします。ご結婚おめでとうございます。乾杯!」
「高校の入学式で出会ってからはや10年、苦楽を共にし、絆を深めてきた○○君が、△△さんという素敵な女性を見つけ、今日の日を迎えたことをとても嬉しく思います。これからは家族ぐるみでのお付き合いを楽しみにしています。
それでは皆さま、ご唱和ください。乾杯!」
「新郎新婦を出会いの瞬間から知っている私としましては、この日が来るのを心待ちにしておりました。
おふたりの新しい門出を祝し、乾杯のご唱和をお願いします。それでは皆さま、乾杯!」
岩下宣子 マナーデザイナー
「現代礼法研究所」主催。NPOマナー教育サポート協会理事長。全日本作法会の故内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学び、マナーデザイナーとして独立。企業、学校、公共団体などで指導や講演会を行うほか、多数の著作を手掛ける。