[全文掲載] 花嫁の手紙vol.16～友達のように仲の良い母へ感謝を伝える～

私の拙い言葉で、母にちゃんと思いが伝わったかどうか心配でしたが、母が涙をこらえる表情が私の立つ位置から見え、しっかり伝わっていたようで安心しました。手紙を読む際のBGMは、母が以前ステージで歌ったことがある曲（『心の瞳』／坂本 九）を流しました。事前にこの曲を何度も聞いて、手紙を読む状況をイメージトレーニングしていたので、当日は号泣せずに読めました。

「生い立ちを順に細かく思い出話をするには長すぎるし……」と言いたいことの伝え方やまとめ方に苦労しました。
そこで冒頭に「何から言ったらいいかなぁ」という話し言葉を入れ、この伝えきれない思いを表現しようと工夫しました。私の性格上、手紙に書いていないことをアドリブで話して収拾つかなくなりそうだったので、ポロッと出そうな話し言葉をあえて入れ込んで、自分の気持ちが落ち着くタイミングをつくることにしました。

まずは母と私との最初の出来事“出産”について感謝を伝えたいと思いました。「産んでくれてありがとう」なんて恥ずかしくて普段は絶対言えないと思っていたので、今言わなければと思ったんです。良い面も恥ずかしい面も、母に叱られたこともすべて含めて私です。それらをプラスとして生きていることを包み隠さず伝えようとエピソードを選びました。
また、天国で寂しがると思ったので父との思い出エピソードも入れました（笑）。

手紙を書いたおかげで、１年後、５年後、10年後と読み返して当時の思いを互いに振り返ることができるので、手紙を書いて良かったと思います。結婚式が最初で最後ではなくて、大きな行事のときは手紙で気持ちをつづることを「花嫁の手紙」をきっかけに続けていきたいなと思いました。
私は前日に手紙を書きましたが、準備に追われ前日は１時間程度しか寝られなかったので、もう少し早めに書き始めることをおすすめします。

式次第の結びに、いよいよこの時が来てしまったかと覚悟を決めて、今は他界している夫が清佳を慈しんでいたことや、誕生から今日までを懐かしく思い出しながら聞いておりました。
明るく楽しく笑いながら話し掛けてくれる娘が、親という樹から成長して飛び立つように、喜びもあり、一抹の寂しさもありました。これからは楽しいことも、大変なこともあるかと思いますが、幸多かれと祈りながら娘を抱き締め手紙を受け取りました。