産み分けできる?etc. 妊娠&出産のうわさ、ウソorホント?[医師解説]
普段の生活の中で、周囲の人の話やSNSなどから、妊娠出産に関わるさまざまな情報を見たり聞いたりする機会があると思います。いつかは「赤ちゃんを産みたい」と考えている人は、「このうわさ、ウソなの?ホントなの?」と不安になることもあるかもしれません。今回は、そんな妊娠出産に関わるいろいろなうわさやジンクスについて、正しいのか正しくないのか、産婦人科のお医者さんにズバッと回答してもらいました!
妊娠に関するうわさ
1.性交のタイミングや、食べる物で男女産み分けができる?
このうわさは……「ウソ」
性交のタイミングや食べ物で男女の産み分けはできないといっていいでしょう。
非常に多くの花嫁さんが関心を持っていた男女の産み分けに関するうわさ。産み分けの方法として、性交のタイミングや食べる物などが関係しているという話を耳にした方も多いようですが、「性交のタイミングや食べ物で産み分けは基本的にはできない」と産婦人科の高橋医師。
「酸性やアルカリ性の特徴を利用した理論を基にした論文などが報告されています※。報告によると産み分けできるとしても50%の確率で、この報告における方法のみでは、産み分け(とその評価方法)を統計学的に検証することが難しいです。その他の産み分けに関してもエビデンスレベル(科学的根拠の信頼性の度合)の高い報告はありません」(高橋医師)
性交のタイミングや食べ物で産み分けはできないものと考え、赤ちゃんの性別は授かりものと考えて。
※出典:Takahide Mori and Hirohiko Watanabe(2002), Ethical Considerations on Indications for Gender, Journal of Assisted Reproduction and Genetics, Selection in Japan
2.おなかにいる赤ちゃんの性別は、妊婦のおなかの出方や顔つきでわかる?
このうわさは……「ウソ」
赤ちゃんの性別は妊婦のおなかの出方や顔つきからはわかりません。
「おなかが前にせり出しているから男の子」など、妊娠中の食べ物の好み、顔つきなどでおなかの赤ちゃんの性別がわかる、といううわさも多いようですが、これも根拠はないとのこと。
「母親の顔つきやおなかの出方で性別を見分けることができるという根拠はありません。探した限り、エビデンスレベルの高い論文では、根拠となる研究結果もありません」(高橋医師)
生まれてくる赤ちゃんの性別への関心が高いせいか、妊婦に迷信を話してくる人はとても多いようですが、妊婦の外見のみで男女がわかる方法はないと心得ておきましょう。
3.妊娠中食べていた物が、赤ちゃんの好みに影響する?
このうわさは……「ウソ」
影響はありません。
妊娠中食べていた物が子どもの好みに影響するのでは、といううわさも。本当であれば気になるところですが、こちらも関係はないとのこと。
「胎内で多様な食品に触れることで、子どもの味覚の幅が広がり、幼児期に多様な食品を受け入れるようになる可能性が示唆されている研究もありますが(※)、サンプル数が少なくこの報告だけでは断言できません。
妊娠中の母親の食事の質と子どもの食事の質との間の直接的な影響については否定的です。」(高橋医師)
赤ちゃんの味覚への影響はないということなので、もし妊娠しても食事については神経質になり過ぎなくても大丈夫そうですね。
※出典:Amy M. Ashman, Clare E. Collins, Alexis J. Hure, Megan Jensen and Christopher Oldmeadow(2016), Maternal diet during early childhood, but not, Maternal and Child Nutrition pregnancy, predicts diet quality and fruit and vegetable acceptance in offspring
4.親が持っているアレルギーは赤ちゃんに遺伝する?
このうわさは……まだわからない
まだわかっていません。
食物アレルギーやぜんそくなど、アレルギーが赤ちゃんに遺伝しないか今から心配している人もいると思いますが、遺伝に関してはっきりとはわかっていないとのこと。
「親がアレルギーを持っていれば必ずしも子供がアレルギーになるわけではなく、遺伝するかは現時点ではわかっていないとのことです。アレルギーを発症しやすくなる遺伝子はありますが、ある報告では一卵性双生児(完全に遺伝子が同じ) でも、アトピー性皮膚炎の発症は72%の一致(※1)、二卵性双生児だと23%しか一致しないという結果でした(※2)。片方がアレルギーを発症してないのは 『遺伝説』が崩れることになります。いずれにしても現時点でアレルギーは遺伝的な要因と後天的な要因どちらも可能性があり、はっきりとは分かっていません」(高橋医師)
「自分が持っているアレルギーが遺伝するのでは......」と心配していた方も心配しすぎないようにしたいですね。
※1出典:Sicherer SH, Furlong TJ, Maes HH, Desnick RJ, Sampson HA, Gelb BD. PMID: 10887305
※2出典:Larsen FS. Atopic dermatitis: a genetic-epidemiologic study in a population PMID: 8496415
5.妊娠中は食べ物の好みが変わる?
このうわさは……一部「ホント」
好みが変わることもあります。
特につわりの時期は、普段好きではない物をおいしく感じたり、逆に好物が苦手になったりすることがあるとよくうわさに聞きますよね。
「妊娠中、味覚の変化に応じて好みの変化が生じることもあるかもしれません。論文でもそのような報告はあります(※)」(高橋医師)
※出典1:Ezen Choo and Robin Dando(2017), The Impact of Pregnancy on Taste Function, Chemical Senses
※出典2:株式会社日本総合研究所(2017年)妊産婦等への食育推進に関する調査報告書
※出典3:Nicole Ochsenbein-Kolble, Ruth von Mering, Roland Zimmermann, Thomas Hummel(2005), Changes in gustatory function during the course of pregnancy and postpartum, an International Journal of Obstetrics and Gynaecology
6.妊娠中にクラシック音楽等を聴くと赤ちゃんに良い影響がある?
このうわさは……ほぼ「ウソ」
赤ちゃんへ良い影響がある、とは言い切れません。
胎教に効果があるという音楽CDを目にして、良い影響があるなら聴いてみようかなと思う人もいるかもしれません。
「いくつかの研究がありますが、エビデンスレベルの高い報告はなく、良い効果があるかというとグレーです。
妊娠後期の胎児は耳が聞こえているはずという理論に基づいていて、胎児が音を覚えている可能性はあるとする報告はあるものの、母親の精神面には良いかもしれませんが、音楽で良い影響があるかどうかはやはり言い切れません。」(高橋医師)
「赤ちゃんに良い影響がある」とは明言できないということですが、母親がリラックスできる効果はあるかもしれないので、直接的な影響だけにこだわらず、妊娠したら好きな音楽を聴いて穏やかな時間を過ごすといいかもしれませんね。
出産・陣痛に関するうわさ
7.特定の飲食物を食べる、家事をするなど陣痛が起こりやすい行動がある?
このうわさは……「ウソ」
特定の飲食物を食べる、家事をするなどで陣痛が起こりやすくはなりません。
妊婦さんの口コミなどで、焼肉を食べる、特定の炭酸飲料を飲む、拭き掃除をすると陣痛が来やすいといったうわさを耳にしますよね。ジンクスとして流行しており、中には信じられている方もいるようですが、こちらに関しては科学的な根拠はありません。
「特定の食品の陣痛に対する効果を立証した研究はありません。炭水化物についての報告はありましたが(※)、妊娠中は摂取する食事のバランスも重要ですので、その報告・論文だけで陣痛を起こすために炭水化物の摂取をすすめることはできません。運動についても、運動したから陣痛が来るといった研究結果はありませんが、禁忌のない妊婦さんの適度な有酸素運動は、健康維持や増進に寄与することが期待できるとされています」(高橋医師)
SNSなどでは実践している人を見掛けることもありますが、陣痛を起こさせるような行動や飲食物はなく、まずは健康的な生活を第一に考えるのがよいとのことです。
※出典:R Rahmani, Z Khakbazan, P Yavari, M Granmayeh, L Yavari(2012), Effect of Oral Carbohydrate Intake on Labor Progress: Randomized Controlled Trial, Iranian J Publ Health
8.お尻が大きい人は安産の傾向がある?
このうわさは……「ウソ」
そのような傾向はありません。
お尻が大きい人に「安産体形だな」なんて軽口をたたく人もいますよね。お尻の大きさと安産かどうかは本当に関係があるのか気になるところですが、関係はないと高橋医師。
「そのような傾向はありません。『安産』の定義は難しいですが、骨盤の大きさや産道などはお産に関わるかと思います」(高橋医師)
「お尻の大きさ=骨盤の大きさ、産道の広さ」ではなく、お尻が大きい人が安産であるというのは根拠のないうわさとのこと。また、体形についての話は人を不快な気持ちにさせてしまうので、口にしないよう気を付けたいものです。
9.生理痛が重い人は、陣痛が軽く安産の傾向がある?
このうわさは……「ウソ」
直接的な関連性はありません。
生理痛でつらい思いをしているときに「お産は軽いかも」なんていわれた人もいるかもしれません。
「生理痛と陣痛の直接的な関連性を示すデータはありません。痛みに対する耐性という点では繋がるかもしれませんが、直接的ではないでしょう」(高橋医師)
生理痛が重いから安産、ということはないようです。日常生活が難しいほど生理痛がひどい場合は、子宮内膜症などの可能性も考えられるため婦人科に行って相談を。
10.陣痛のつらさや安産/難産は、妊婦の母親から遺伝する?
このうわさは……「ウソ」
遺伝するとはいえません。
陣痛やお産の大変さは母親から遺伝する、といううわさは一見説得力がありますが……
「陣痛の痛みに関与するシグナル伝達系が遺伝する という点では論文として報告はありますが(※)、 一般論化はできず、その他にもエビデンスレベルの高い報告はありませんでした。そのため、遺伝すると言い 切るのは不適切です」(高橋医師)
遺伝するとはいえないようです。ただ、母親には出産の経験者として、お産で大変だったことや準備をしておくべきことを聞いて、出産への心構えをするのはよいかもしれませんね。
※出典:Michael C. Lee, Michael S. Nahorski, James R.F. Hockley, ..., Frank Reimann, Ewan St. John Smith, C. Geoffrey Woods(2020), Human Labor Pain Is Influenced by the Voltage-Gated Potassium Channel KV6.4 Subunit, Cell Reports
SNSやネットは、根拠のないうわさであふれています。もし耳にしたら、一人で抱え込まず主治医にご相談ください。また、なるべく公的機関が運営するサイトを参考にしてください。
webサイトは「日本産科婦人科学会」、妊娠中の内服薬については「成育医療センター」の情報が参考になると思います。またさまざまなオンライン上のサービスもあるようです。ぜひご活用ください。
日本産科婦人科学会
URL:http://www.jsog.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=1
成育医療センター
URL:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
From 編集部
正しい知識を味方に付けて
妊娠出産は個人的かつデリケートな話題である分、うわさや迷信が気になってしまいがち。心配になってSNSやネットで検索すると、さらに不安が高まることも。耳にしたうわさはうのみにせず、情報の出典や発信者に注意し、悩んだら医師に相談を。正しい知識を味方に付けて、心身共に健康に過ごしていきましょう♪
高橋孝幸 医師・産婦人科専門医
医学部を卒業後、市中病院や大学病院などで勤務。現在は医学博士課程に在籍中。患者さんに寄り沿った医療の提供に努めている。
「みんなで知ろうHPVプロジェクト(通 称:みんパピ!)」にて子宮頸がんやHPVワ クチンに関する情報提供についても一般の 方に向けて正確で優しい形の啓発に努めて いる。
取材・文/竹本紗梨 イラスト/ナガミネショウコ 構成/伊藤りつ子(編集部)
※掲載されている情報は2021年10月時点のものです。
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