[手土産・引出物・内祝いetc.] 結婚にまつわる「のし紙」基礎知識
デパートで「のし紙は付けますか?」と聞かれて、戸惑った経験はありませんか?結婚することになると、贈り物をする機会がグッと増えます。そこでマナーデザイナーの岩下宣子先生に、のし紙の基本を教えてもらいました。分からないまま店員さんにお任せしていた人も、この記事を読めば「きちんとのし紙を選べる人」に。
【part1】“のし”って何?どんな種類がある?
“のし”は、「のしあわび」の略。鮮魚を贈る習慣から始まった作法
のし紙の「のし」は、熨斗鮑(のしあわび)の略称です。のしあわびとは、貝のアワビを薄くむいてたたき、伸ばして干したものです。「長く伸ばす」が命を延ばすことに通じるといわれ、古来より長生不死の妙薬として珍重されてきました。
島国で海産物に恵まれた日本は、昔から鮮魚を贈る習慣がありました。鮮魚以外のものを贈る際にも、肴(鮮魚)と酒(日本酒)を添えていました。この習慣が鎌倉・室町時代あたりに、日持ちのするのしあわびを添えるしきたりに変わっていったといわれています。当時は武士の出陣や凱旋(がいせん)時にも、のしあわびが添えられたそうです。
のしを付けるもの、付けないものの違い
日本では昔から、悲しみ事(弔事)には殺生を嫌って、精進料理を食べる習慣があります。のし(熨斗鮑)=生ものを付けるのは「この贈り物は悲しみ事の贈り物ではない」ということを表していると考えられます。
そのため、手土産・お中元・お歳暮・お礼やお祝い事の贈り物には、のしを付けます。ただし贈り物自体が魚やハムなど生ものである場合は、のしは必要ありません。
【のしを付けない品】
・弔事の贈り物
・お寺へのお礼
・病気見舞い
・生ものの贈り物(ハム・玉子・魚など)
お祝い事に使う“のし紙”は、主に4種類
贈答品にかける”のし紙”は、のしと水引を紙に印刷して簡略化したものです。
お祝い事には、赤白の水引が描かれたのし紙を選びます。水引は、未開封であるという封印の意味や人と人を結び付けるという意味合いがあるといわれています。
日本では奇数吉といって、祝い事の水引は奇数が基本。ただ9は苦に通じるので使わず、結婚には5本の水引を2束=10本のものを使うことが一般的です。
お祝い事で使うのし紙として多く出回っているのは、上の4種類です。それぞれの水引の意味を参考にして、のし紙を選びましょう。
●結びきり(水引10本)
結婚の際に使う最上級ののし紙。5本×2束で、両家の結び付きを表している。結びきりはほどけないことから、二度とあってはいけないことに使う。
●結びきり(水引5本)
赤白5本の結び切りは、快気内祝い(お見舞いのお返し)などに使う。結婚では使わない。
●あわじ結び(あわび結び)
結びきりの「切り」という言葉を避けて、結婚する人にお祝いを贈る際には、あわじ結びや日の出結び(輪結び)などを選ぶ。これから結婚するための「あいさつ」や「顔合わせ食事会」の手土産も、あわじ結びを用いる。
●蝶結び(花結び)
蝶結びは引っ張るとほどけることから、新築祝い、出産祝い、出産の内祝、お中元やお歳暮など「何度あっても良い」お祝いに使う。逆に結婚にまつわることに使うと無礼なので注意を。
※水引の種類は、以下の3種類に分類できます。
○一度限りの事に使う水引・・・結びきり、あわじ結び、輪結び、老いの波
○何度もあってよい事に使う水引・・・蝶結び
○最もカジュアルな水引・・・片わな結び
フルネームが格式の最上級、すでに知り合いなら名字のみに
マナーの基本としては、名字だけ書くのは実は尊大な書き方。フルネームで書く方が相手には「私は大した人物ではないので、下の名前まで書かないと分からないと思います」という意味になり、謙遜した書き方といえます。
結婚式の引出物などは、ご招待した方全員が自分たちを知っているため、よりへりくだってあえて名字だけを書きます。相手が目上の場合は、こちらは名字だけを書くのが相手を敬う姿勢を表す作法になります。
内のしと外のし、のし紙の付け方は2通り
包装紙の上からのし紙をかけるのを「外のし」、のし紙をかけた箱を包装紙でくるむ形式を「内のし」といいます。
表書きが見える外のしは、どうしてその物を贈られたのか分かりやすいので、記念品や内祝い、おわびの品などの場合に用います。
内のしは、のし紙の上から包装するので、手土産などのし紙を汚さずに届けたいときに使います。
【part2】結婚にまつわる贈り物別!
「こんなときにはこんなのし紙」
<1>親あいさつの手土産
【のし紙の種類】
のし付き 赤白のあわじ結び
【表書き】
御挨拶
【名前の表記】
フルネーム
親あいさつは結婚の申し込みという体裁で、相手の親御さんを立てる意味も必要なので、あわじ結びが最も適当です。「あいさつ」なので、マナーとしてフルネームを書きましょう。パッと見て分かりやすいよう、外のしが正解です。
<2>婚約食事会の手土産
【のし紙の種類】
のし付き 赤白のあわじ結び
【表書き】
御挨拶
【名前の表記】
送り手の名字のみ
婚約=これから縁を結ぶということで、結びきりよりもあわじ結びの方が良いでしょう。婚約を取り交わす相手のことは双方知っているので、婚約食事会の手土産には、名字だけを書くのが相手を敬う形になります。このときも外のしでOKです。
婚約記念品を贈るときは、表書きを「壽」に
婚約指輪などの記念品を、婚約食事会の場で渡すときには、のし紙ではなく本物ののしと水引を付ける方が多いです。そのようなときの表書きは「壽」とします。贈る相手がはっきりしているので、名前は書きません。
<3>引出物と引菓子
【のし紙の種類】
のし付き 赤白の結びきり(水引5本×2束)
【表書き】
壽 または 内祝
【名前の表記】
引出物:両家の名字を並列
引菓子:新郎新婦の下の名前を並列
結婚は一生の縁ということで、水引10本の結びきりを用います。表書きは「壽」のほか「内祝」でも良いです。メインの贈り物である引出物に両家の名字を。引菓子は新郎新婦の名前を書きます。いずれも見て分かるよう、外のしにします。
縁起物やプチギフトは「書きのし」か、包装紙でOK
縁起物など、贈り物を奇数の数(3つ)贈る習慣がある地域もあります。3品目の贈り物には「のし」とひらがなで書かれた「書きのし」など略したもので構いません。引出物にきちんと両家の名前を書いたのしを付けていれば、後は一緒の贈り物なので、包装紙だけでも問題ないです。
プチギフトも同様で、包装紙にするか洋風にリボンがけにしてもOKです。
<4>結婚の内祝い
【のし紙の種類】
のし付き 赤白の結びきり(水引5本×2束)
【表書き】
内祝
【名前の表記】
男性はフルネーム
女性は名前のみ並列
結婚祝いを受け取った返礼品が内祝いです。結婚後に贈る前提なので、ふたりの名字は同じです。まず男性の名前をフルネームで書き、女性の名前を添えます。ふたりが夫婦になったことを表します。相手に直接手渡しできるのであれば、外のしでもよいですが、配送するなら内のしにしてもらいましょう。
<5>手伝ってくれたゲストへの返礼品
結婚式の受付や余興など、手伝ってくれたゲストにはお礼の品を渡します。結婚式の手伝いをしてくれるということは、比較的親しい間柄のはずです。気心知れた相手に贈る返礼品なら、のしは必要ありません。お礼のひと言を手書きで添えて、リボンを付ければ十分です。
From 編集部
のし紙のマナーを知って、贈り物上手に
のしは、日本伝統の贈り物の作法。TPOに沿ったのし紙の選び方を心得ておけば、店頭で聞かれてもサッと答えられます。結婚を機に大人のマナーを身に付けて、あなたも贈り物上手に。
岩下宣子さん マナーデザイナー
現代礼法研究所主宰。NPO法人マナー教育サポート協会相談役・理事。企業をはじめ、学校、商工会議所、公共団体などでマナー指導や講演などを行う。「マナーとは相手を思いやること」を信条に、ゼクシィでも悩める花嫁への愛あるアドバイスでおなじみ。マナーに関する著書多数。
構成・文/稲垣幸子 イラスト/moeko
監修/岩下宣子(現代礼法研究所)
※掲載されている情報は2020年7月時点のものです
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