喪中に結婚式はNG?【延期する・しない】それぞれの心得を解説!
あってほしくないことだけれど、結婚が決まってから、祖父母が亡くなるというケースも。身内に不幸が起きると「喪中に結婚式をしてもいいの?」と気になりますよね。会場を予約済みの場合は、「延期した方がいい?」と悩みます。実は喪中の期間や喪中の結婚式に対する考え方にはいろいろあるんです。マナーの先生の話も参考に、正しい知識を知って、「どうしたらよいか」の判断を。
喪中とは?
喪中=死を悼んで身を慎む期間
喪中は近親者が亡くなったとき、死を悼んで華やかなことを避け、故人をしのぶ期間のこと。
喪中の中でも、亡くなった直後は「忌中」といい、外出を控え、故人のために祈りをささげて弔います。
喪中の期間って?
喪中・忌中の期間に関する考え方はさまざまで、日数に正解はない
「喪中というと『一周忌がくるまで』と考える人が多いのですが、故人との関係別に喪中・忌中の期間を定めた明治時代制定の“服忌令(ぶっきりょう)”を継承した考え方も。それによると、祖父・祖母の場合、喪中は150日(父方)、90日(母方)、忌中は30日(父方)、20日(母方)。法律が廃止されたので、これが正しいというわけでもありませんが、一つの基準として残っています。
服忌令があった時代、忌中は法的に仕事が休め、家にこもって喪に服しました。今、身内の不幸で休めるのは、職場の忌引き休暇がベース。忌中の本来の意味から考えると、忌中を忌引き休暇の日数と考えてもよいわけです。
このように、喪中・忌中の期間に関する考え方はいろいろで、宗派や地域、家によって違うことも。儒教の祖・孔子は『形式よりも心の問題』と説きました。一周忌にとらわれる必要はなく、どれを基準にしてもよいのです」(マナーデザイナー・岩下宣子先生)
ちなみに、喪に服すのは第2親等までだけど、「同居していない祖父・祖母は喪に服さなくていい」「第3親等でも親しい関係の場合は(自分の気持ちとして)喪に服す」など、範囲に関する考え方もいろいろ。
喪中に結婚式を挙げてもいいの?
喪中の結婚式に関してもさまざまな考え方がある
「喪中というだけで年賀状を慎むのだから、結婚式なんて……」と思う人もいるでしょう。
挙式日に関しては以下のような考え方があります。
1.一周忌を過ぎていたらOK
2.一周忌はまだでも、服忌令に基づく喪中の期間を過ぎていたらOK
3.喪中でも、忌中を過ぎていたらOK
4.初七日の法要後ならOK
5.喪中、忌中に関係なく行う
「喪中明けにこだわり、『一周忌後にすべき』という人もいますが、服忌令の喪中期間を過ぎていれば、それも喪中明け。『忌中を過ぎていたらOK』という考え方もスタンダードになりました。その忌中も上記の通り、いろいろな考え方があります。世間体にとらわれず、自分たちは『どのように考えるのがよいか』、両家で相談して決めましょう」(岩下先生)
亡くなった日が会場の予約前なら、両家の喪中・忌中に関する考え方を擦り合わせて、挙式日を決めればよいですが、予約した後だと、「予定通りに行うか」「延期した方がいいか」で迷うことも。その場合は式準備の手間、ゲストの都合、式費用などさまざまな角度から検討を。
結納や婚約食事会、婚姻届提出は喪中でもOK?
どれもおめでたいことだけれど、婚姻届は役所に届け出る行為で、お祝い事ではないので、喪中を気にせず、いつ行っても大丈夫。引っ越しやハネムーンも問題なし。結納や婚約食事会はお祝い事になるので、喪中・忌中が気になるようなら、何を基準にするか相談を。基本的な考え方は結婚式と同じです。
結婚式を延期した方がいいのはどんなとき?
悲しみが深い場合や喪中・忌中の式は避けたい場合
「喪中(忌中)が明けてからにしたいけれど、挙式日が自分たちの基準とする喪中(忌中)の期間を過ぎていない」という場合や、悲しみが深くて、挙式日までに癒えそうになく、式準備もする気にならない場合は延期しましょう。
「喪中は絶対ダメ」「喪中(忌中)に行うなら、親族だけなど少人数で行うべき」など、予定通りに行うことに反対する親族が多く、仕切り直しをした方がいいと判断した場合も延期を。
喪中により延期する場合、注意することは?
先にキャンセル料を確認し、会場やゲストに即連絡を
<会場のキャンセル料>
延期する場合、一度キャンセルして、再度予約することに。キャンセル料は式直前になるほど高くなるので、その額の確認を。
「キャンセル料は相手側と折半というわけにはいきません。一方的な都合で延期するのなら、全額負担するつもりで」(岩下先生)
<ゲストへの連絡>
挙式日を伝えてあったゲストへの連絡が必須。
「招待状を発送済みの場合、手紙で知らせるのが正式ですが、電話、メール、LINEでも。ゲストが有給の申請、交通や美容室の手配をしている可能性もあるので、いち早く確実に伝わる方法をとって。もし、ゲストがそれらを手配済みで、損害が発生する場合は、その費用を負担しましょう。
文書で知らせる場合、『こちらの都合で申し訳ございませんが、取り込み事がございまして延期することになりました』などと書くのがよいでしょう。新たな挙式日が決まったら、改めて招待状を発送し、出欠を取ります」(岩下先生)
<宿泊ホテルやショップへの連絡>
宿泊の予約をしてあるホテルや手配中の外部ショップへの連絡も忘れずに。
<延期日には余裕を持たせて>
延期によって出席できなくなった人がいたら、席次の変更が必要。ゲストの宿泊や交通、美容着付けの手配もやり直しに。料理の内容や司会者が変わったり、予約した衣裳が着られなくなる可能性も。延期する時期はそれらの再準備にかかる時間も考えて。
私たちは結婚式を延期
[故人の想いを考えて、半年延期]
私の場合、亡くなったのが父親。招待状を発送する前でした。延期することにしたものの、母が「あまり延ばすと亡き父が悲しむ」と言うので、半年だけ延期。再予約した日はまだ一周忌を過ぎていませんでしたが、気にしないことに。(Aさん)
[一周忌を過ぎてからに延期]
私の祖母が亡くなったとき、まだ会場は予約していませんでした。当初、その半年後に式を挙げるつもりでしたが、延期して、一周忌を過ぎてから行うことにしました。(あやかさん)
延期しないで結婚式を行った方がいいのはどんなとき?
ふたりやゲストの都合で日取り変更が難しい場合や喪中を気にしない場合
延期しなかった理由で多かったのは「仕事などの都合で、延期すると、いつできるか分からない」、「休みを取ってもらったゲストが多く、日取りを変えるのは迷惑」。
「そう長くないことは分かった上で日程を決めた」「亡くなった側から申し出があった」というケースも多い。
「会場のキャンセルがもったいない」「喪中の結婚式に異を唱える親族がいなかった」「もともと親族中心のささやかな結婚式にするつもりだったから」というケースも。
「一度も祖父・祖母と同居したことがない孫の新郎(新婦)は喪に服さなくていい」という喪中の考え方の一つを取って、予定通りに行うというのもあります。
延期しないで結婚式を行う場合に注意することは?
不幸を知らない人にまで知らせる必要はなく、式の内容も予定通りに
<親族に理解を求めて>
祖父・祖母が亡くなったら、おじやおば、いとこも喪中。もし式に出ることをためらう親族がいたら、「祖父・祖母の席をつくって遺影を置き、料理も用意します。祖父・祖母も祝福してくれると思う」などと伝えて、理解を求めましょう。
<神前式ではおはらいが必要なことも>
神道は死を「けがれ」と考えるなど独特の世界観があり、仏教よりも喪中・忌中を重視。喪中に式を行う場合、事前におはらいを受けないといけないこともあるので、会場に確認を。
<ゲストへの連絡>
身内の不幸を知っているゲストには「式を挙げるの?」と心配される方も。そんなときは自分たちの考え方を伝えて。
「身内の不幸は他の人に関係ないので、知らない人にまで連絡する必要はありません。話したところで相手は反応に困り、余計な気遣いをさせます。相手の立場を考えて行動しましょう」(岩下先生)
<結婚式の内容も予定通りに>
「喪中でも当初考えた通りに行いましょう。『控えめに』と考えてゲスト数を減らす必要もないし、華やかな演出や二次会を行っても構いません。
ゲストはふたりを祝福するために来るのです。祖父・祖母が亡くなったことを説明したら、ゲストは『お悔やみのひと言を言った方がいい?』と悩むので、その必要もなし。ご祝儀も普通に頂いてよいですよ。『辞退します』などと言われたら、ゲストは困りますよね」(岩下先生)
私たちは延期しないで実施
[仕事上の都合を最優先して延期せず]
私の祖父が亡くなったのは挙式5カ月前。父と母が結婚式を挙げたときも、父の祖父が他界したのですが、延期しないで行ったし、彼やお義父さんの勤務が3交代制で日程を変えるのが難しいこともあって、予定通りに。喪中の結婚式という意識もなく、行いました。(ちゃきさん)
[挙式前日でも敢行するつもりだった]
彼の祖父のお迎えがそう遠くないことは想定していて、お義母さんから「たとえ挙式前日に亡くなっても、予定通りにやりましょう」と言われていました。亡くなったのは挙式2カ前。改めて相談しましたが、お言葉に変わりはなく、挙式日も式の内容も予定していた通りに執り行いました。(岡林由佳さん)
[祖父も楽しみにしていたから延期せず]
挙式3カ月に彼の祖父が97歳で大往生。誰よりも結婚式を楽しみにしていたのが彼の祖父だったので、延期せずに行いました。しんみりするような配慮も義祖父が好まないと考え、式の内容も予定通り。ただ、エンディングムービーには彼の祖父の名前も入れ、「ありがとう いつまでも見守っていてね」とひと言。(伊藤愛美さん)
結婚報告はがきを出す時期も喪中だったら?
年賀状と同じで、一周忌が過ぎないと、結婚報告はがきを出してはいけないような気がするけれど……。
「喪中はがきを『亡くなった年の年末に出すもの』と思っている人が多いのですが、服忌令に基づいた概念をとると、祖父の死去した日が7月以前、祖母が死去した日が9月以前だったら、年賀状を出していいのです。
結婚報告はがきも同様。服忌令の喪中期間が明けていたら普通に発送してOK。
『不幸を知らない人には関係ないこと』と考えて、喪中を一切気にせずに出すという考え方もありますよ」(岩下先生)
喪中に出すのが気になる場合、時期が合えば、冒頭に時候のあいさつを入れ、季節の手紙にする方法も。それができるのは以下の4つ。
●寒中見舞い:1月8日~立春(2月4日頃)
●余寒見舞い:立春~2月末(寒い地方は3月上旬)
●暑中見舞い:小夏(7月7日頃)~立秋(8月7日頃)
●残暑見舞い:立秋の翌日~8月末
監修:岩下宣子先生
「喪中の期間にはいろいろな考え方がありますし、喪中に結婚式を挙げるのがいけないわけではありません。挙式日は両家で相談して決めればよく、気持ちの整理がつき、両家の合意があればいつ行っても構いません。これは父・母や兄弟姉妹など他の2親等内親族が亡くなったときも同様です」
[profile]
現代礼法研究所代表。相手の立場に立って考える「思いやりの心」を基本としたマナーの伝道師として活躍。『図解 日本人なら知っておきたい しきたり大全 (講談社の実用BOOK)』など著書多数。
From 編集部
素直な気持ちになって、亡き祖父・祖母の声を聞いてみて
身内が他界したときは、両家で相談するのはもちろんですが、お墓やお仏壇の前で手を合わせて目を閉じ、じっくり考えてみるのも。
「おじいちゃん(おばあちゃん)、喪が明けてからの方がいい?」「悲しいけれど、予定通り結婚式をしていい?」。自分の気持ちに素直になって、祖父・祖母の声を想像してみると、すっきり解決しそう。
構成・文/渡邊博美 イラスト/オザキエミ
※掲載されている情報は2020年2月時点のものです
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