小俣友里さん ジュエリーコーディネーター
難関のジュエリーコーディネーター1級の資格を持ち、ジュエリーリフォーム専門の「ラトレイユ」の代表として活躍。ジュエリーのリフォームや修理はもちろん、オーダーメイドジュエリーも手掛けている。
指輪の装飾技法の一つであるミル打ち(ミルグレイン)。繊細な装飾でクラシカルな趣があることから、このところ注目を浴びており、ミル打ち(ミルグレイン)の結婚指輪が気になるという人も多いようです。この記事では、ミル打ち(ミルグレイン)の結婚指輪の特徴や後悔しない選び方などをジュエリーコーディネーターの小俣友里さんにお伺いしました。
小俣友里さん ジュエリーコーディネーター
難関のジュエリーコーディネーター1級の資格を持ち、ジュエリーリフォーム専門の「ラトレイユ」の代表として活躍。ジュエリーのリフォームや修理はもちろん、オーダーメイドジュエリーも手掛けている。
ミル打ち(ミルグレイン)とは、小さな丸い粒が連続して連なっている装飾(または装飾技法)のことです。
その源流は紀元前7~6世紀ごろの古代エトルリア人の「粒金(グラニュレーション)」技法とされ、中世ヨーロッパで発展し、19~20世紀のエドワーディアンやアールデコの時代に流行しました。金属に打刻された小さな丸い粒は光を受けるとキラキラと輝き、その美しさは現在に至るまで愛されています。
ミル打ち(ミルグレイン)を施す際は、##s##職人がタガネという器具を使い一つ一つ丁寧に粒状の凹凸を打刻します##e##。一つ一つの粒を均等に打刻していくには高い技術と時間が必要とされ、価格もそれなりに高くなります。
現在では、手打ちではなく機械で打刻したり、CADで制作したものもあります。手打ちのミル打ち(ミルグレイン)には温かみと個性が感じられ、機械打ちやCAD制作のミル打ち(ミルグレイン)は均整美があります。
また、##s##ミル打ち(ミルグレイン)の型に地金を流し込み、鋳造する方法##e##もあります。それぞれメリット・デメリットがあり、どれがいいとは一概に言えませんが、どの技法で作られたのかは選ぶ際の参考になるでしょう。
「永遠」「絆」を象徴し、
リングの上品な美しさも魅力
ミル打ち(ミルグレイン)の指輪の魅力は、以下の通りです。
具体的にどういうことか、詳しく見ていきましょう。
「ミルグレイン」はラテン語・フランス語で「千の粒」という意味です。小さな粒が途切れずに連なっている様子は「永遠」や「絆」の象徴と考えられてきました。その意味合いからも、結婚の記念として用意する結婚指輪にはまさにぴったりといえるでしよう。
ミル打ち(ミルグレイン)は私たちが今見ることができるアンティークジュエリーにもよく使われているため、クラシカルな印象を受ける人が多いでしょう。整然と並ぶ小さな粒の装飾は繊細な美しさがあり、ダイヤモンドなどの宝石がなくてもキラキラと輝きます。
ミル打ちは上品で主張しすぎない装飾のため、他の装飾と組み合わせても違和感なく調和するのも大きな魅力です。特に、彫り模様や石留めのデザインと相性が良く、結婚指輪の程よいアクセントにもなります。
結婚指輪は日常的に着用するため、どうしても表面に細かな傷が付いてしまいますが、ミル打ちは表面が凸凹としているため、光が拡散して傷が目に入りにくいという特徴があります。また、もともとアンティークな趣がある装飾ですから、傷も味わいとして楽しめるという面もあるでしょう。
ミルの打ち方によって
デザインの印象もガラリと変わる
結婚指輪でよく見られるデザインは、リングの上下の端に沿ってミル打ち(ミルグレイン)を施すもの。シンプルなストレートリングでもミル打ちがあることでニュアンスが出ます。リングの部分とミル打ちの部分で異なる色の金属を使うと、より華やかな印象に。
ミル打ちをリングのセンターに入れたり、斜めにあしらったりする場合も。粒の大きさによっても雰囲気が異なり、デザインのアクセントになります。
少し大きめのダイヤモンドを飾る場合、石枠部分にミル打ちを施すことも(ミルグレインセッティング)。金属の粒がダイヤモンドを取り巻くことで、ダイヤモンドの輝きがさらに深まる効果があります。レール留めのエタニティリングの両端にミル打ちを施すデザインもあります。
さらに、ミル打ちの粒を連ねてリーフや波紋、レースなどのモチーフを作ることもでき、クラシカルかつ個性的な印象になります。
着け心地やサイズ直し・クリーニングが
可能か購入前に確認を
ミル打ち装飾は、一粒一粒の大きさが均等で、粒が並ぶ間隔や並び方も整っているものが理想です。また、滑らかに仕上げられているかにも注意を払ってください。
ミル打ち装飾が施されている結婚指輪では、手をぎゅっと握った際に、着けている指はもちろん、両隣の指へ違和感があることも。日常使いする指輪ですから、着け心地はしっかり確かめてみてください。
指輪全体にぐるりとミル打ち装飾が施されている指輪では、サイズ直しが難しい場合があります。結婚指輪は年を重ねても着け続けるものです。サイズ直しが必要になることもありますので、サイズ直しができるかどうかも、事前に確認しておいた方がいいでしょう。
ミル打ちは繊細な加工なので、長年の使用で粒がすり減ったり、つぶれたりすることもあります。結婚指輪に使用されるプラチナやゴールドは他の金属を混ぜて耐久性を高めているとはいえ、柔らかい金属です。柔かな金属は粒がすり減りやすいので、磨き直しや修復が可能かどうか、購入時に確認しておくと安心です。
また、粒の隙間には汚れがたまりやすいので、家でのお手入れのほか、定期的に購入店でクリーニングしてもらうと、いつまでも美しさを保つことができます。
繊細でクラシカルな美しさがあるミル打ち(ミルグレイン)の結婚指輪。実際に店頭で見れば、その魅力をより実感できるはずです。結婚指輪を選ぶ際にはミル打ちの指輪も選択肢に加えて、実際に身に着けてその輝きに触れてみてください。
取材・文/粂 美奈子 イラスト/寺澤ゆりえ 構成/金子朱里(編集部)
※掲載されている情報は2025年10月時点のものです

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