あと一センチのお二人

1回目の打ち合わせの終盤
「私たち二人とも好きな映画があって」
新婦さんが言った
「なんて映画なんですか？」
「あと一センチの恋っていう映画で
幼なじみの話なんですけど
私たちにもこういうことあったなって思うと凄く感情移入しちゃって．．．」

何気ない会話だった
それまであまり感情を見せなかったお二人にもかかわらず
新婦さんの話は熱を帯び
新郎さんはどこか照れ臭そうにしている

・・・気になる

普段　
ウェディングパーティーの参考にするのはエンターテイメント性の高いものや
結婚式にまつわる映画ばかりだ
純粋な恋愛映画あまり見ない
まして落ち着いた雰囲気のお二人があんな風になる作品なんだから

その日の帰り道
レンタルビデオショップによって探してみる

あった

パッケージには夕日の街並みに肩を組んで一つのスマホ見ている男女

どこか違和感を覚える

ほかの映画はキスシーンなど恋人を思わせるものが多いが
このパッケージの二人は「恋人」というよりも「親友」の方が似合っている
そのままレジに進み
家でみてみる

幼なじみで何でも話し合える親友のような二人

しかしヒロインの18歳の誕生日に・・・
その日から二人はすれちがってしまう

たった一言
想いを伝えられれば・・・


2時間があっという間に過ぎエンドロール
DVDをだしケースに戻すとき
ふと新婦さんの言葉を思い出す
「私たちにもこういうことあったなって・・・」
記憶の中のパッケージは肩を組んでいる男女がお二人に変わっていく
自然と笑みがこぼれた


映画を見た一週間後
お二人との打ち合わせ
もちろん第一声は「観ました！！」
新婦さんは嬉しそうに
新郎さんは恥ずかしそうに
「観たんですか！！」
打ち合わせはとても盛り上がる


いろんなお二人の話が聞ける

お二人との距離はどんどん近くなる
その距離はついに一センチの壁を越え
プランナーとしての喜びを感じる