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結婚式の前日に私は娘からこんなことを言われた

「明日は私をちゃんとエスコートして、よろしくってお願いしてよ」と

「考えるだけで恥ずかしいわ、分かった分かった」

娘の顔も見ずに、適当に答えた私だったが
実は、娘とバージンロードを歩く日が明日なんて
まだ信じられなかった

もちろん、心から嬉しい
こんなに幸せなことはない

でも、何となく、ちょっぴり、うん・・やはり、さみしい

明日はどんな顔をして歩こうかとなかなか寝付けずにいた



翌朝はあっという間にやってきて、大忙しだ

新婦の父親はこうも忙しいのか

ゆっくりコーヒーを飲む時間もない

何も考えられないまま時は過ぎ、本番間近となる


「お父さん、緊張してるねー」


娘は主役とも思えないくらいリラックスした笑顔を見せたが
私はその言葉に返事も出来ないくらい何も考えられなかった


そして
チャペルの扉の前に立つ

娘と腕を組み
フルートとバイオリンの音色が流れ始める

その時ふっと、さっきまで何も考えられなかったはずなのに
昨日娘に言われた言葉を、突然思い出した


私は一歩一歩、新郎の元へ娘をエスコートする

小さい時は、迷子になって大変だった
中学時代は、よく親子喧嘩したな
彼氏ができてからは、顔を合わす回数も減ったし


だけど
あんなにやんちゃだった子が
私の知らない間に　こんなに美しい女性になっていて
今、とても幸せそうだ

これも、きっと彼のおかげなんだろう


だったら大丈夫だ




私のエスコートは終わった

そして

「これからも娘をどうかよろしくお願いします」

そう言って、彼と娘の手をぎゅっと握りしめた