寿退社とは?上司への報告時期など円滑な退職のポイントを解説!
2022/9/20 11:00
Index
- #01 寿退社とは
- #02 寿退社のメリットは?
- #03 寿退社のデメリットは?
- #04 円滑に寿退社をするポイント
- #05 寿退社の手続きの流れ
- #06 寿退社後の再就職を考えるなら?
結婚のタイミングで退職する「寿退社」について解説します。寿退社のメリットやデメリットをはじめ、寿退社に向けた具体的な準備や進め方、仕事を辞める際の上司や同僚への伝え方、気を付けるべきことなどについて、NPO法人 日本サービスマナー協会認定マナー講師・村西ともこさんに伺いました。
寿退社とは、結婚を機に会社を辞めること。おめでたいことを表す「寿」とあるように、退職ではあっても、次のステージを祝福する明るいイメージがあります。
寿退社する主な理由としては、家事や子育てなど、家庭に専念することが挙げられます。
退職することで、炊事や洗濯、掃除など、家事全般に時間を割くことができます。家族との時間も持ちやすくなり、妊娠した場合は体調管理がしやすく出産後の育児にも集中できます。
また、婚姻届の提出前に退職する場合、引っ越しの段取りや役所関係の諸手続き、名義や住所変更などにも余裕を持って対応できます。
仕事内容や人間関係など、理由によっては職場に辞意を伝えづらいこともありますが、寿退社の場合は周囲から祝福され、精神的な負担も少ないのではないでしょうか。
こちらは結婚式前に退職する場合のメリット。結婚式の準備は、想像以上にやるべきことが多く、時間もかかります。会場との打ち合わせや披露宴のグッズ準備などに自分のペースで取り組めることは大きなメリット。親族や友人などへの報告や連絡も、余裕を持って行えるはずです。
寿退社のデメリットについても考えてみましょう。
資産状況やパートナーの収入にもよりますが、退職によって収入がなくなり、自由に使えるお金は減ってしまいます。生活レベルを考え、将来を見据えた家計管理が大切です。
また、退職してしまうと健康保険の被保険者に支給される出産一時金や出産手当金の対象とならない可能性もあります。退職時期と出産時期が近くなる場合は、事前に条件をよく確認しておきましょう。
家庭に入り働かない期間が長くなると、再就職にハードルを感じる人が多いようです。職場復帰を考えるのであれば、スキルの維持や資格の更新なども必要でしょう。
一時的なつもりでも、働いて収入を得る人と家庭のことに専念する人、という役割が固定されてしまう可能性があります。家事や育児を一緒にしたいと思っても、言い出しづらいと感じる人もいるようです。役割分担については、あらかじめパートナーと話し合っておきましょう。
スムーズに寿退社するために、留意すべき点をご紹介します。
退職の意向は3カ月前をめどに、直属の上司に伝えます。先に同僚や仕事仲間に知れ渡っていることがないよう、上司の立場に配慮してください。報告の際、決まっていれば結婚式の日取りや形式(招待するゲストの範囲)についても、併せて伝えます。
退職する時期については、迷惑がかからないよう繁忙期を避けることが望ましいです。なお、長期的なプロジェクトに関わっている、専門性の高い職種に就いているなど、引き継ぎに時間がかかりそうな場合は、より早めに報告するなど適宜調整が必要です。
社内:気持ちは次のステップに向いていても、退職日まで気持ちを緩めず、感謝とともに誠実に仕事に取り組みましょう。業務内容を確認し、「最後までしっかり対応してくれた」と評価してもらえるよう、後任者に丁寧な引き継ぎを行ってください。
社外:取引先にもあいさつと後任者の紹介を行います。上司同伴で訪問する場合もあれば、後任者と自分のみ、訪問せずに電話やメールで対応するなど、あいさつの方法は関係性によっても異なりますので、上司に相談して決めましょう。
退職日には、お世話になった方へ個別にあいさつ回りを行います。自分にとっては最終日でも、職場は通常の業務中ですので、タイミングには気を付けてください。業務に支障が出ないよう、休憩中が望ましいです。難しい場合は、仕事の合間など様子を見て声を掛けましょう。
ちょっとしたお礼の品を用意すると好印象ですが、職場の雰囲気や慣例に合わせる配慮も必要でしょう。お礼の品を用意する場合は、個包装された日持ちのするお菓子などが一般的です。上司など立場が上の方から順番に、心を込めて感謝の気持ちを伝えましょう。
私物は忘れずに持ち帰ります。荷物が多い場合は、何日かに分けて整理しましょう。
併せて、会社の備品や資料など、返却物の最終チェックを行います。人事や担当部署に、返却物をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
寿退社に向けた流れを時系列ごとに見ていきましょう。
上司へ退職の意を伝え、退職日や引き継ぎの方針などについて相談します。
退職届(願)を作成、提出します。
業務の引き継ぎスケジュールを立て、引き継ぎ資料の作成や後任者への引き継ぎを行います。
取引先(営業先)へのあいさつ回りや後任者の紹介を行います。
・結婚祝い金、特別休暇などの申請
福利厚生の一環となり、制度の有無は企業によりますので、上司や担当部署に確認してください。就業規則に記載されている場合もあります。
・退職金の申請
「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。こちらも制度や手続きの詳細については、上司や担当部署に確認してください。
・有給の取得
残っている有給休暇は計画的に取りましょう。
身の回りやデスク周辺の整理整頓を行います。持ち帰る私物、返却するものを分け、退職日にバタバタしないようにしておきましょう。
・貸与物を返却
貸与物には、健康保険被保険者証、社員証、入館証、名刺、鍵、制服、業務書類などがあります。
・必要書類の受け取り
退職証明書、離職票、源泉徴収票、健康保険資格喪失証明書などがあります。
これらの書類は、退職日当日ではなく、後日あらためて郵送などで受け取ることが多いです。
・あいさつ回り
お世話になった部署や人にあいさつ回りを行います。
・デスク周りのチェック
忘れていること・モノがないか、デスク周りの最終チェックを行います。
1.健康保険
以下の3通りの選択肢があります。退職後にどの健康保険に加入するかは、各保険の加入の条件や今後の再就職の予定などを考慮して決めましょう。
1.健康保険の任意継続(退職日の翌日から20日以内に手続きが必要)
2.家族の健康保険に加入
3.国民健康保険に切り替える(退職日の翌日から14日以内に手続きが必要)
2.失業保険
働く意思がある場合は、条件を満たせば失業給付金(手当)を受けられます。必要書類を持って、ハローワークで手続きを行います。なお、失業手当をもらっている間はパートナーの扶養に入ることができません。
寿退社の後、再就職を目指す方もいるでしょう。再就職を考える場合、退職後をどんなふうに過ごすべきでしょうか。
将来のビジョンを描く
再就職するなら、どのような仕事をしたいか?自分の夢や将来のビジョンを具体的に描いてみましょう。
資格の勉強
就職に役立つ資格の勉強ですが、働きながらではスケジュールの確保に苦労することも。仕事をしていないときこそ時間を有効に使い、将来への準備を進めましょう。
パートやアルバイトで経験値を増やす
全く仕事をしないブランク期間に不安を感じる方は、比較的取り組みやすいパートやアルバイトで働くのも選択肢の一つです。社会とのつながりを適度に保ち、新しい人間関係を築いたり、世界を広げたりすることで良い刺激にもなるでしょう。
習い事、趣味で視野や興味の範囲を広げる
習い事や趣味を楽しむこともおすすめです。興味が広がることで、将来へのアイデアやヒントが出てくるかもしれません。また、これまでとは異なる立場や考え方の人と出会うことができれば、視野も広がります。
今の時期も大切な時間であると認識し、前向きに楽しむ
人生にはさまざまなステージがあります。環境が変わることで、働いているときには気付かなかったことに気付けたり、心の持ち方が変わったりすることもあります。退職後の生活をポジティブに楽しみ、将来の可能性を広げましょう♪
取材・文/とみこ
※掲載の情報は2022年9月現在のものです。保険や各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
【監修】
村西ともこさん(NPO法人 日本サービスマナー協会)
大手英会話学校での勤務経験を経て、2000年より司会業に携わる。ブライダル、式典、イベントなど、これまでに2000件以上の司会を担当。司会者養成講座では、司会技術の指導とともに、マナー研修を実施。日々の仕事を通して、言葉の影響力、マナーの大切さを実感する。現在、日本サービスマナー協会認定マナー講師として、各種研修を担当する。
公式HP:https://maruc.info/
公式ブログ:https://ameblo.jp/maruc-hababira/
日本サービスマナー協会:https://www.japan-service.org/
寿退社とは
寿退社とは、結婚を機に会社を辞めること。おめでたいことを表す「寿」とあるように、退職ではあっても、次のステージを祝福する明るいイメージがあります。
寿退社する主な理由としては、家事や子育てなど、家庭に専念することが挙げられます。
寿退社のメリットは?
余裕を持って新生活に取り組める
退職することで、炊事や洗濯、掃除など、家事全般に時間を割くことができます。家族との時間も持ちやすくなり、妊娠した場合は体調管理がしやすく出産後の育児にも集中できます。
また、婚姻届の提出前に退職する場合、引っ越しの段取りや役所関係の諸手続き、名義や住所変更などにも余裕を持って対応できます。
会社に退職する理由を伝えやすい
仕事内容や人間関係など、理由によっては職場に辞意を伝えづらいこともありますが、寿退社の場合は周囲から祝福され、精神的な負担も少ないのではないでしょうか。
結婚式の準備に専念できる
こちらは結婚式前に退職する場合のメリット。結婚式の準備は、想像以上にやるべきことが多く、時間もかかります。会場との打ち合わせや披露宴のグッズ準備などに自分のペースで取り組めることは大きなメリット。親族や友人などへの報告や連絡も、余裕を持って行えるはずです。
寿退社のデメリットは?
寿退社のデメリットについても考えてみましょう。
共働きと比べて世帯年収が下がる
資産状況やパートナーの収入にもよりますが、退職によって収入がなくなり、自由に使えるお金は減ってしまいます。生活レベルを考え、将来を見据えた家計管理が大切です。
また、退職してしまうと健康保険の被保険者に支給される出産一時金や出産手当金の対象とならない可能性もあります。退職時期と出産時期が近くなる場合は、事前に条件をよく確認しておきましょう。
仕事でのスキルの維持や望むキャリアアップが難しくなる可能性がある
家庭に入り働かない期間が長くなると、再就職にハードルを感じる人が多いようです。職場復帰を考えるのであれば、スキルの維持や資格の更新なども必要でしょう。
夫婦の役割分担が固定されがち
一時的なつもりでも、働いて収入を得る人と家庭のことに専念する人、という役割が固定されてしまう可能性があります。家事や育児を一緒にしたいと思っても、言い出しづらいと感じる人もいるようです。役割分担については、あらかじめパートナーと話し合っておきましょう。
円滑に寿退社をするポイント
スムーズに寿退社するために、留意すべき点をご紹介します。
退職の意向は3カ月前をめどに、直属の上司に伝える
退職の意向は3カ月前をめどに、直属の上司に伝えます。先に同僚や仕事仲間に知れ渡っていることがないよう、上司の立場に配慮してください。報告の際、決まっていれば結婚式の日取りや形式(招待するゲストの範囲)についても、併せて伝えます。
退職する時期については、迷惑がかからないよう繁忙期を避けることが望ましいです。なお、長期的なプロジェクトに関わっている、専門性の高い職種に就いているなど、引き継ぎに時間がかかりそうな場合は、より早めに報告するなど適宜調整が必要です。
業務の引き継ぎを済ませ、退職日まで責任を持って仕事を全うする
社内:気持ちは次のステップに向いていても、退職日まで気持ちを緩めず、感謝とともに誠実に仕事に取り組みましょう。業務内容を確認し、「最後までしっかり対応してくれた」と評価してもらえるよう、後任者に丁寧な引き継ぎを行ってください。
社外:取引先にもあいさつと後任者の紹介を行います。上司同伴で訪問する場合もあれば、後任者と自分のみ、訪問せずに電話やメールで対応するなど、あいさつの方法は関係性によっても異なりますので、上司に相談して決めましょう。
お世話になった人へのあいさつをしっかり行う
退職日には、お世話になった方へ個別にあいさつ回りを行います。自分にとっては最終日でも、職場は通常の業務中ですので、タイミングには気を付けてください。業務に支障が出ないよう、休憩中が望ましいです。難しい場合は、仕事の合間など様子を見て声を掛けましょう。
ちょっとしたお礼の品を用意すると好印象ですが、職場の雰囲気や慣例に合わせる配慮も必要でしょう。お礼の品を用意する場合は、個包装された日持ちのするお菓子などが一般的です。上司など立場が上の方から順番に、心を込めて感謝の気持ちを伝えましょう。
身の回りの整理整頓
私物は忘れずに持ち帰ります。荷物が多い場合は、何日かに分けて整理しましょう。
併せて、会社の備品や資料など、返却物の最終チェックを行います。人事や担当部署に、返却物をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
寿退社の手続きの流れ
寿退社に向けた流れを時系列ごとに見ていきましょう。
【1】6カ月〜3カ月前
上司へ退職の意を伝え、退職日や引き継ぎの方針などについて相談します。
【2】退職日が決定したら
退職届(願)を作成、提出します。
業務の引き継ぎスケジュールを立て、引き継ぎ資料の作成や後任者への引き継ぎを行います。
【3】2カ月〜2週間前
取引先(営業先)へのあいさつ回りや後任者の紹介を行います。
【4】婚姻届の提出や挙式日に合わせて
・結婚祝い金、特別休暇などの申請
福利厚生の一環となり、制度の有無は企業によりますので、上司や担当部署に確認してください。就業規則に記載されている場合もあります。
・退職金の申請
「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。こちらも制度や手続きの詳細については、上司や担当部署に確認してください。
・有給の取得
残っている有給休暇は計画的に取りましょう。
【5】1週間前〜退職前日
身の回りやデスク周辺の整理整頓を行います。持ち帰る私物、返却するものを分け、退職日にバタバタしないようにしておきましょう。
【6】退職日
・貸与物を返却
貸与物には、健康保険被保険者証、社員証、入館証、名刺、鍵、制服、業務書類などがあります。
・必要書類の受け取り
退職証明書、離職票、源泉徴収票、健康保険資格喪失証明書などがあります。
これらの書類は、退職日当日ではなく、後日あらためて郵送などで受け取ることが多いです。
・あいさつ回り
お世話になった部署や人にあいさつ回りを行います。
・デスク周りのチェック
忘れていること・モノがないか、デスク周りの最終チェックを行います。
【参考】退職後の保険関係について
1.健康保険
以下の3通りの選択肢があります。退職後にどの健康保険に加入するかは、各保険の加入の条件や今後の再就職の予定などを考慮して決めましょう。
1.健康保険の任意継続(退職日の翌日から20日以内に手続きが必要)
2.家族の健康保険に加入
3.国民健康保険に切り替える(退職日の翌日から14日以内に手続きが必要)
2.失業保険
働く意思がある場合は、条件を満たせば失業給付金(手当)を受けられます。必要書類を持って、ハローワークで手続きを行います。なお、失業手当をもらっている間はパートナーの扶養に入ることができません。
寿退社後の再就職を考えるなら?
寿退社の後、再就職を目指す方もいるでしょう。再就職を考える場合、退職後をどんなふうに過ごすべきでしょうか。
将来のビジョンを描く
再就職するなら、どのような仕事をしたいか?自分の夢や将来のビジョンを具体的に描いてみましょう。
資格の勉強
就職に役立つ資格の勉強ですが、働きながらではスケジュールの確保に苦労することも。仕事をしていないときこそ時間を有効に使い、将来への準備を進めましょう。
パートやアルバイトで経験値を増やす
全く仕事をしないブランク期間に不安を感じる方は、比較的取り組みやすいパートやアルバイトで働くのも選択肢の一つです。社会とのつながりを適度に保ち、新しい人間関係を築いたり、世界を広げたりすることで良い刺激にもなるでしょう。
習い事、趣味で視野や興味の範囲を広げる
習い事や趣味を楽しむこともおすすめです。興味が広がることで、将来へのアイデアやヒントが出てくるかもしれません。また、これまでとは異なる立場や考え方の人と出会うことができれば、視野も広がります。
今の時期も大切な時間であると認識し、前向きに楽しむ
人生にはさまざまなステージがあります。環境が変わることで、働いているときには気付かなかったことに気付けたり、心の持ち方が変わったりすることもあります。退職後の生活をポジティブに楽しみ、将来の可能性を広げましょう♪
取材・文/とみこ
※掲載の情報は2022年9月現在のものです。保険や各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
【監修】
村西ともこさん(NPO法人 日本サービスマナー協会)
大手英会話学校での勤務経験を経て、2000年より司会業に携わる。ブライダル、式典、イベントなど、これまでに2000件以上の司会を担当。司会者養成講座では、司会技術の指導とともに、マナー研修を実施。日々の仕事を通して、言葉の影響力、マナーの大切さを実感する。現在、日本サービスマナー協会認定マナー講師として、各種研修を担当する。
公式HP:https://maruc.info/
公式ブログ:https://ameblo.jp/maruc-hababira/
日本サービスマナー協会:https://www.japan-service.org/