添い遂げる

　あるレストランでの出来事
食事が運ばれてくるのを待っていると
隣のテーブルに老夫婦が座った

共に80歳前後
旦那さんは杖を頼りに歩く
その体をそっと支えるのは小柄な奥さん

旦那さんはビールを飲んでいた
その表情には　味わうという気配は感じられない

どこか　遠くを見つめている

やがて料理が運ばれてきた
旦那さんの前に出された料理を
奥さんが　自分の料理が冷めるのを気にする素振りも見せず
旦那さんが食べやすいようナイフとフォークで細かく切ってあげる

それでも旦那さんは料理に手を付けなかった

すると今度はすっと席を立って旦那さんのそばに歩み寄り
首元にナプキンをかけて
一口ずつ料理を食べさせてあげていた

その自然な動作といったら

奥さんのシルエットが光に包まれ
ぼんやりと輝いていた

きっと　助け合いながら　いい人生を歩んできたに違いない

夫婦になる醍醐味は　添い遂げることだと思う
結婚生活は　いいこともあれば　そうでないことも必ずある
それでも　誰かの命に責任をもって生きていくことは
とても素晴らしいこと

老夫婦がいまだに私の心に残っているのは
二人の姿が　理想的な夫婦に見えたからなのではないかと思っている




歩みだす扉の向こうは






















添い遂げる日への初めの一歩なのかもしれない