

ヨーロッパ各国の王室の御用達を拝命し、“宝石商の王”と讃えられたジュエリー・ブランド。プラチナを取り入れたダイヤモンド・ジュエリーをいち早く発表するなど、ジュエリーの発展にも大いに貢献した。

カルティエの創業は1847年のこと。創業者であるルイ=フランソワ・カルティエは宝石商アドルフ・ピカールの工房で修業を積み、28歳という若さで師の工房を引き継ぐことになった。それがパリのモントルゲイユ通りの店だった。そして、1853年には、ヌーヴ・デ・プティ・シャン通り5番地に自分の店を構えるに至った。
カルティエはファッションに敏感な王侯貴族の支持を得て、名声を高めていく。当時、ファッション・リーダーとして名を馳せていたフランス皇帝ナポレオン3世の后、ユウジェニー皇后も顧客となり、世界的なジュエラーへと成長を遂げていく。
1899年には創業者ルイ=フランソワの孫であるルイ・カルティエが経営に加わり、ラ・ペ通り13番地に移転。この通りは一流ブティックが軒を連ねる世界的に有名なファッション・ストリートであり、カルティエは以来、本店をずっとここに構えることとなった。

1899年、パリで最も高級な通りとして知られるラ・ペ通り13番地に店を構えた。この店を拠点にカルティエは世界的なジュエリー・ブランドとして発展していく/写真:I. Rey © Cartier 2009

ゴージャスな雰囲気に圧倒されるパリ本店。店内には美しいジュエリーが展示され、世界中の人々が訪れる/写真:T. Maety © Cartier

カルティエの名声を確実なものにしたのがガーランド・スタイルのジュエリーだ。ガーランドとは花と葉を用いた花冠のこと。ルイ16世様式から派生したものだが、ルイ・カルティエが見事に復活させたのだ。これは世界中の王侯貴族から大絶賛を浴びた。
カルティエのガーランド・スタイルに大いに力を与えたのがプラチナだった。カルティエでは早い時期からプラチナに興味を持ち、研究を続けていた。プラチナはそのグレーがかった白の美しさばかりではなく、酸化もにしくい上に、軽さと強度を兼ね備えており、ダイヤモンドの光を際立たせる性質をもっている事から、ダイヤモンド・ジュエリー用の金属としては最適だった。
ルイ・カルティエは世界で初めてジュエリーに本格的にプラチナを用い、繊細で芸術的な作品を次から次へと生み出した。プラチナによってダイヤモンドをより美しく見せるジュエリーを生み出したカルティエは、イギリスのエドワード7世(当時はウェールズ王子)に「王の宝石商であるがゆえに、宝石商の王である」と称賛された。

「スクロール」ティアラは1910年の製作。ベルギー王国のエリザベート王妃が所有していたもので、数あるガーランド・スタイルのティアラの中でも傑作のひとつと讃えられる/写真:Nick Welsh, Cartier Collection © Cartier

「スクロール」ティアラを身に着けたエリザベート王妃/写真: © Collection Cyrille Boulay / Cartier

ダイヤモンドとルビーのティアラ、ネックレス、ブレスレットがセットになったカルティエ製のパリュールを身に着けているグレース公妃/写真: © G. Lukomski. With the kind permission of the Archives of the Prince's Palace of Monaco.

160余年の伝統を誇るカルティエ。伝統を守りつつ、つねに新しいものを生み出していく姿勢は作品に反映され、多くの人々を魅了し続ける/写真:Vincent Wulveryck © Cartier 2009

さまざまなエピソードを持ち、現在はアメリカのスミソニアン博物館に展示されているかの「ホープダイヤモンド」も、1910年にピエール・カルティエの手に渡っている。カルティエではこれに装飾をし直してアメリカ社交界のエヴェリン・ウォルシュ・マクリーンに販売したことでも話題を呼んだ。また、世界で初めてバゲットカットのダイヤモンドを製作したのもこの頃だ。
さらに、リスト・ウオッチの重要性を予感し、次々と新しい腕時計を発表していく。ブラジルの飛行家、アルベルト・サントス・デュモンのリクエストにより作られた「サントス ウオッチ」や、第一次世界大戦の連合軍のタンク(戦車)に乗った連合軍とフランス軍の戦車軍団の栄誉を讃えた「タンク ウオッチ」など、いまも愛される時計はこの時代に生み出された。
1933年にはジャンヌ・トゥーサンがハイ・ジュエリー部門の責任者となり、顧客名簿に名を連ねる世界の王侯貴族のために芸術性にあふれるジュエリーを製作した。そのうちのひとつが「パンテール」。パンテール(パンサー)をモチーフにしたこのシリーズは一世を風靡し、ウインザー公爵夫人が1949年に注文した152.35カラットのカシミールサファイアをプラチナにセットしたパンテールのブローチはあまりにも有名だ。
また、ハリウッド女優からモナコ公妃となったグレース・ケリーがレーニエ大公から贈られたエンゲージメントリングもカルティエのもの。この他にも、多数のジュエリーをカルティエから購入している。
150年以上もの間、女性を魅了するジュエリーを作り続けてきたカルティエ。その高い芸術性と確かな品質は現代にも受け継がれ、多くの人々に愛されている。