ワンオペとは。家事・育児や仕事がワンオペになる問題点と解決策

職場の人員体制や家庭での家事労働について、SNSでも話題に上がる「ワンオペ」。夫婦のいずれか1人が家事や育児全般を担い疲れ果ててしまったり、仕事が特定の1人にのしかかりオーバーワークで体調を崩してしまったりと、課題が多い問題です。ワンオペがなぜよくないのか、またどうしたら解決できるのかについて、日本サービスマナー協会認定講師の江頭美鈴さんに詳しいお話を伺いました。

ワンオペとは



ワンオペとは

ワンオペとは、「ワンオペレーション」の略語で、意味としては何かを1人でこなすことです。何か労働に対して、常日頃からほぼ1人で携わっている状態を指します。

仕事では、業務がわかる人が自分以外におらず休みが取りづらい、深夜営業のシフトが1人で接客からバックヤード業務まで対応するために休憩もできない、などの状況を指して使います。

また家庭においては、パートナーの帰宅が遅いために家事と育児に追われて休む間もなかったり、育児を任せられる親が近くにいなかったりすると、家庭内でワンオペになりがちです。特に目が離せない子育てでは「ワンオペ育児」の難しさに悩む人も多いでしょう。


家事や育児がワンオペになる問題点と解決策



家事や育児がワンオペになる問題点と解決策

まず、家庭内のワンオペについて考えていきましょう。ここでは、家事や育児がワンオペになっている場合の問題点と解決策を解説します。

【問題点】孤独感やストレスがたまりやすい


片方が社会で仕事をし、もう一方が家事と育児を専業している場合は、家事と育児を任された方に多くの負担がかかります。

育児では24時間子どもと向き合うために、家にいても体力も精神面も休まらず、社会との繋がりが感じられないケースでは孤独感にさいなまれることも多いでしょう。自分だけの落ち着いた時間が取れない、好きに使える時間がないためにストレスもたまります。

【解決策】定期的に子どもを預けて自分の時間をつくる
美容室やカフェに行くなど、どんなに短い時間であっても自分らしくいられる時間をつくり、息抜きをすることが大切です。配偶者や親族に子どもを見てもらう、行政や民間の託児サービスを利用することに罪悪感を持つ必要はありません。

また、心を許せる人に不安を聞いてもらったり、空き時間でリフレッシュできる趣味を楽しんだり、ストレスをため込まないようにしましょう。

【問題点】体調面でのリスクが高い


新生児育児や病児育児で睡眠不足が続いたり、多忙により栄養バランスの良い食事を取れなかったりすると、疲労が蓄積し体調を崩す可能性があります。共働き家庭の場合は、仕事の効率やクオリティーにも影響を及ぼすかもしれません。

また、自分が病気になった時に育児を任せられる人がいないことへの不安もあるでしょう。

【解決策】夫婦で協力体制をつくるための話し合いをする
出産後は夫婦共に育児休暇を取得し、家事・育児を協力し合う体制を整えましょう。

特に共働きの場合、育休期間が終了しても仕事量を考慮しつつふたりで家事・育児をシェアしていく必要があります。片方だけに負担がかからないように、小さなことでもしっかりと話し合うことが大切です。

【問題点】家庭内のコミュニケーション不足が生まれる


家事・育児をパートナーと共有できていない場合、やり方や勝手がわからないことで一方がさらに参加しづらくなります。

お互いに対する不信感や遠慮からコミュニケーション不足が起こり、家族の連帯感が損なわれることも考えられます。

【解決策】家事・育児に巻き込みながらコミュニケーションを取る
常日頃からのワンオペではコミュニケーションが希薄になりがちです。家事に関してのクオリティーに対してパートナーと感じ方の差がある場合でも、できるだけ相手を巻き込むようにしましょう。

例えばミルクを作るためのお湯を沸かしておいてもらう、子どものお風呂はどちらかが担当する、出来上がったご飯をよそって並べてもらうなど、小さな家事でもいいので分業すると取り組みやすく、自然と会話も生まれます。

【問題点】子どもに目が行き届かない場合がある


家事・育児を頑張っていても、1人では目の届く範囲に限界を感じることもあります。例えば家事で忙しくしている間に、子どもがポットを触りやけどしてしまったり、落ちているものを誤飲してしまったりなど、事故につながる危険性もあります。

【解決策】外注できるものや業者など、時間短縮になるものを利用する
外注できるものに頼ることも大切です。心の余裕のためにも、ネットスーパーや料理の宅配サービス、家事代行、一時保育などを利用しましょう。

多少お金はかかっても、長い目で見れば一時期な出費であり、満足度が高いのであれば、心身をゆっくり休められます。食器洗い機や洗濯乾燥機、掃除ロボットなど時間短縮できる家電を積極的に取り入れることで、育児に専念できる時間が生まれます。


仕事がワンオペになるケース・問題点と解決策



仕事がワンオペになるケース・問題点と解決策

続いて仕事でワンオペになることの問題点、また解決するためにできることを解説します。

【問題点】体調不良に陥る、ストレスがたまる


常にオーバーワーク気味だと、休息やリフレッシュの時間が限られ、疲労が蓄積して健康を害してしまう可能性があります。自分だけでやらなければならないという精神的な負担から、大きなストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。

【解決策】働き方を見直してもらう
心身の健康のために、適切な休息とリフレッシュは必要不可欠です。人事の担当者に掛け合い、残業を減らす、有給休暇をしっかり取得する、リモートワークを取り入れて通勤時間を削減するなど、会社を巻き込み、働き方を見直してもらいましょう。

【問題点】リスクの集中が起こり、モチベーションが低下する


業務の属人化により、組織全体としてのリスクマネジメントにも支障を来します。普段はうまく回っていても、トラブルやイレギュラーが起きると1人では対処しきれないケースもあるでしょう。

また、協力や相談ができる仲間がいない場合、孤独感が生まれてしまいます。注意したり褒めたりしてくれる人がいないために、モチベーションも低くなりがちです。

【解決策】人員を増やしてもらい、チームワークを強化する
ワンオペで仕事へのモチベーションを保つのはとても困難です。属人化によるミスを最小限に抑えるためにも、上司に相談し、可能であれば業務に当たるメンバーを増やしてもらいましょう。

また、質の良い仕事のために、チームメンバーで情報共有やダブルチェックするための仕組みを工夫し、コミュニケ−ションを強化しましょう。

【問題点】業務量が多すぎて、成長の機会が奪われる


効率化を図っても残業時間が減らない、人員が増えたのに業務量が変わらない場合などは、業務量が多すぎる可能性があります。

目先の仕事に追われていると、先の事まで考えられなくなりがちです。キャリアアップに必要なスキルを磨いたり、知識をアップデートする時間をつくったりするのが難しくなることもあるでしょう。

【解決策】人材の育成と他のスキルを身に付ける
業務を1人で抱え込まないようにするためには、力になってくれる人をつくるのが近道。

新しい人材を育成する中で、業務の改善点が見えてくることもあります。また一緒に成長できるだけでなく、気持ちの余裕が生まれます。働きやすい環境を整えつつ、スキルアップを図り業務の幅を広げましょう。


周囲の人と協力し合うことで、ワンオぺを回避しましょう!



周囲の人と協力し合うことで、ワンオぺを回避しましょう!

仕事でも、家事・育児においても、個人の負担量が多い場合には、同時並行で複数のタスクが要求されるため、1人だけで完璧に行うには限度があります。また、相談できる人や頼れる人がいないことによって心の余裕もなくなってしまいます。

できるだけパートナーの手を借りる、人に協力してもらいやすい仕組みをつくるなど、少しでもワンオペを軽減できる体制づくりが必要です。周りにSOSを出すことをためらわず、ワンオペ改善に向けて前向きに取り組んでいきましょう。



取材・文/ペパーミント



【監修】
江頭美鈴さん
NPO法人 日本サービスマナー協会認定講師/一般社団法人 エグゼクティブ・イメージコンサルタント代表理事/M.E.プロダクション代表
日本サービスマナー協会認定講師として、企業・団体から個人向けに、「ビジネスマナー研修」「傾聴スキル研修」など幅広く担当し、「和やかで明るく分かりやすい」と受講者から好評。マナー講師の仕事を中心に、自社事業の経営、企業などの人材育成に携わる。また、心理カウンセラーとして、モチベーションアップやメンタル強化のサポートをしている。
日本サービスマナー協会:https://www.japan-service.org/